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迷宮娼婦と町泥棒  作者: 桜ジンタ
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恋している訳でも無い、女性達を相手に

 交際を断わり続けていた大学生と、凛々が付き合い始めたらしいという情報は、凛々に振られはしたが、まだ諦めていなかった女性達の間に、すぐに広まった。


 当然、納得がいかなかった女性達は、何故……大学生と交際を始めたのか、凛々を問い詰めたのだ。


 凛々は正直に、恋愛感情がある訳ではなく、人助けとして付き合い始めた事を話した。


 大学生が自殺とかしない程度まで精神的に安定するか、自分を必要としなくなれば、すぐに別れるつもりで。


 そして、話を聞いた……凛々を諦めていなかった女性達は、気付いてしまったのだ。


 本当に死にかねない自殺的行為を見せ付けた上で、付き合ってくれなければ死ぬと脅せば、凛々が交際を求めた相手を、受け入れざるを得なくなる事に。


 結果、自殺の方法こそは違えど、大学生同様の手段を用いて、凛々に交際を迫る女性達が、次々と現れる羽目になってしまった。


 それこそ中学の後輩から、社会人に至るまで、多数の女性達が。


 最初の大学生の時と同様、凛々は人助けとして、彼女達の求めを受け入れてしまった。


 そして、凛々本人が望まぬままに、智子が言う所の、「何股かけてたんだか、分からない様な付き合い方」をする羽目になってしまったのだ、恋している訳でも無い、女性達を相手に。


 凛々の彼女となった女性達は、当初は反目し牽制し合っていたのだが、そういった状態は長くは続かなかった。


 皆……凛々との関係を持った経緯に、同じ様な後ろめたさと罪悪感を覚えていたので、一種の共犯関係の様な仲間意識が、芽生える状態になったのだ。


 仲間意識を持った彼女達は、皆が納得できるルールを決めた上で、凛々を共同所有する形の、一夫多妻制の様な関係を続ける状態になった。


 中学二年生の五月頃から始った、そんな凛々の乱れ過ぎた異性関係は、両親などの大人達には気付かれる事なく、密かに続いた。


 関係が終わったのは、中学三年生の十月。


 原因となったのは、中学三年の夏休み頃に、彼女として加わった三人組だ。


 疲れて病んだ心を癒す為に、同病相哀れむ形で沖縄に移り住み、共同生活をしていた二十代中頃の三人組は、困っていた所を助けられる形で、凛々と知り合った。


 そして、かなり歳下である凛々に惚れた挙句、他の彼女達と大して変わらない流れで、彼女に加わったのである。


 だが、そこから先は、他の彼女達とは、かなり違う流れとなった。


 他の彼女達より歳上であった三人組は、自分達より歳下だった、他の彼女達を軽んじた上、かなり独善的な性格をしていたのだ。


 その結果、三人組はルールを頻繁に破り、他の彼女達と反目し合う状態に陥ってしまった。


 そして、三人組は他の彼女達を排除し、凛々を自分達だけの相手とすべく、行動を起こした。


 三人組は凛々に睡眠薬入りの飲み物を飲ませ、意識を失わせた上で拉致。


 かっては米兵で賑わっていたが、今は廃れて廃屋だらけとなっている、歓楽街の廃ビルの一室に、凛々を監禁、身体の自由を奪った凛々を、自分達だけで「楽しんだ」のだ。


 スマートフォンを使った三人組の偽装工作により、凛々が友人の家を泊まり歩いてると思い込まされた凛々の家族は、警察に捜索願を出さなかった。


 実際、凛々が友人の家に泊まる事は、珍しくはなかったので、一日二日いちにちふつか家に帰らない程度だと、家族はろくに気にもしなかったのである。


 だが、メールやメッセージではやり取り出来ても、凛々と電話で話せず会えもしない状態が、二日も続いた事に、彼女達は不信感を抱いた。


 結果、彼女達は凛々が何らかのトラブルに見舞われた可能性を察し、凛々を探し始めたのだ。


 彼女達は、凛々に会えなくなった日から、連絡がとれなくなった三人組に疑いを持ち、その行方を調べ始めた。


 結果、廃れた歓楽街に、三人組が出入りしているという情報をつかんだ彼女達は、歓楽街に駆け付けて捜索を開始。


 そして、彼女達は歓楽街で、食料の買出しから戻って来た、三人組の一人を発見して尾行。


 廃ビルの一室に監禁されている凛々を、見つけ出すのに成功した。


 彼女達は部屋に踏み込み、身体の自由を奪われていた、凛々の身柄を確保。


 だが、その際……暴走してナイフを取り出した、三人組の一人に、彼女の一人が刺されそうになってしまった。


 凛々が万全な状態であれば、三人組の一人の動きを空手技で封じ、事無きを得ていただろう。


 でも、その時の凛々は、身体の拘束が中途半端に解かれた状態で、身体をまともには動かせなかった。


 故に、ナイフで襲い掛かった三人組の一人と、彼女の一人の間に割って入り、自らの身体を盾として彼女を守り、腹部を刺されながらも、ナイフを奪いとる事しか、凛々には出来なかった。


 これが、「メンヘラ女達に拉致監禁された挙句、仕舞いには刺し殺されかけた」と、智子が表現した、凛々の過去なのである。


 その後、凛々は彼女達が呼んだ救急車により、救急病院へと運ばれ、治療を受けて事無きを得た。


 武器であるナイフを失った女を含め、三人組は凛々の彼女達に、数の力で圧倒され、全員が身柄を拘束された。


 彼女達は警察沙汰を避けたかったので、警察は呼ばなかったのだが、「ナイフで刺された」という通報を受けた救急センターから、警察の方に連絡が行き、結局はパトカーが救急車と共に来てしまった。


 それ故、三人組は逮捕され、事件は警察沙汰となったのだ。


 警察沙汰になった結果、凛々を巡る女性達の関係は、表沙汰になりかけたが、ならなかった。


 拉致監禁及び傷害事件に関しては、凛々は被害者側であり、彼女達は凛々を助けた側である為、警察側が情報を極力伏せた所為せいである。


 ただし、凛々や彼女達の家族にまでも、情報を伏せるのは不可能。


 結果、まだ中学生である凛々を中心とした、常軌を逸した一夫多妻風のポリアモリー的な関係を、凛々や彼女達の家族が知る羽目になった(ポリアモリーとは、合意の上で複数の相手と付き合う事)。


 事件とは違い、この一夫多妻風のポリアモリー的な関係においては、凛々は多くの女性達を弄んだ、加害者的な扱いを受けて、彼女となった女性達の方は、被害者的な扱いを受けた。


 自分達は弄ばれた訳でもないし、被害を受けた訳でもないと、彼女達は凛々を擁護したのだが、彼女達の家族は聞く耳を持たなかった。


 彼女達の家族……主に両親は、娘を弄んだ極悪非道な少年と、凛々を糾弾した。


 その上で、凛々と彼女達を引き離し、かなり強引な手段を用いて、関係を解体したのだ。


 手段の一つが、凛々の沖縄からの追放だった。


 彼女達の親は、娘を沖縄で自分達の監視下に置いた上で、凛々が沖縄からいなくなれば、娘と凛々の関係を断ち切れると考えたのである。


 その結果、凛々は中学の卒業を待たずして沖縄を離れ、風目市に戻る事になった。


 元々は智子と凛々だけが戻る筈だったのだが、凛々が戻るなら私も戻ると言い出した、ブラコンの気がある勇気も、共に風目市に戻る事になったので、仕事の都合で風目市に戻れない泰山だけが、沖縄で単身赴任状態となった。


 中学三年生の一月に、風目市に戻った凛々と勇気は、地元の公立中学校に編入。


 そして二人は、小学生時代に初等部に通っていた、風目学園の高等部を受験し合格、春から通い始めたのだ。




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