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遮光くん
小さなアパートのとある一室。その部屋にはいつも遮光カーテンがかかっている。家主が極度の太陽嫌いだからだ。カーテンと壁のわずかな隙間さえガムテープできっちりと固定されており、玄関ののぞき穴には絆創膏がはられている。夏は日差しがつよいため、とくに厳重に固定される。そのため、基本的に窓を開けることはない。
エアコン嫌いの彼は、そんな部屋で一年を過ごしている。真冬はこたつで乗り切る彼だが、真夏の蒸し暑さは扇風機だけでは乗り切れない。そんなときは、仕方がないので窓を開ける。カーテンを閉めたまま手をさしこむ隙間をわずかに開けて、鍵をはずせば開けられることは既に学習済みである。
太陽嫌いの遮光系男子、そんな部屋の主の名は阪井海月という。