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人狼村開拓記  作者: やまぐ
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緊急依頼

 

 次の日、ローガが冒険者ギルドに向かうとまだ早朝といってもいい時間帯にも拘らず、ギルド内にはそれなりの数の冒険者がおり口々に何かを話あっていた。

 ただならぬ雰囲気に戸惑っていると受付カウンターから出てきたココナは話しかけてくる。

「ローガさん、朝早くに申し訳ないですけどちょっと奥に来ていただいてよろしいですか。」

 確認を取る口調でありながらも有無を言わせない態度で奥の別室まで引っ張っていく。

 

 ココナに手を引かれるままに着いていくと会議室に連れて来られる。

「ギルドマスター、ローガさんをお連れしました。」

「うむ、入ってくれ。」

 会議室の中に入ると数人の男女が席に着いていた。

 全員武装していることから冒険者であることがうかがえる。

 いずれの人物も鋭い気配を発しており侮れない雰囲気を醸し出している。

 その中に見知った顔を見つける。ガッテムだ。

(なんでガッデムさんがギルドに?それに、ここに集まってる連中はたぶん全員それなりに強い奴らばかりだな。特に奥に座ってる魔導士っぽい恰好をした爺さん、ローブで隠しているがえらく鍛えられた体をしている。)

 状況に全く着いていけないローガが事態の把握に努めていると、ちょうど観察していた魔導士っぽい爺さんが口を開いた。

「そういえば、おぬしはわしの事を知らんのだったな。わしはモンド。このギルドのギルドマスターをやっておる。おぬしを呼んだのは昨晩ちと困った事態が発生しての…その解決に力を貸して欲しいのじゃ。」

「困った事態?」

「うむ、おぬしはここにいるガッデム殿が南の調査依頼だしたのは知っておるな。」

「ああ、その場にいたし昨日はその依頼を受けた奴らともあった。」

「実は昨晩遅くに、その冒険者の一人が瀕死の重体の怪我人を抱えて帰還し救助を求めてきたのじゃ。」

「瀕死の重体!だれが?そいつは大丈夫なのか?」

「ひとまず落ち着いて話をききなさい。」


 その後、モンドの話を聞きまとめると次のようになる。

 ・ローガと別れた後のグレン達はローガの情報を信じ移動を開始した。

 ・しばらく進むと情報通り大型魔物を発見。

 ・蛇型の魔物で見たこともな種類であった。

 ・新種の魔物の可能性があるので生態を観察する事になった。

 ・しかし、観察中に発見され戦闘になった。

 ・勝目がなさそうだったので2手に別れて逃亡を試みた。(グレン、レン、ソーヤ組とダン、ドム組に別れた)

 ・魔物はグレン達の方を追跡し始めた。

 ・逃走中レンが魔物が吐き出した毒液を浴び瀕死の重体となった。

 ・グレンが囮となりソーヤはなんとかレンを連れて町へ帰還した。

 ・ダン、ドムの二名はまだ町へ帰還していない。

 ・特殊な毒なのか毒消しや解毒魔法が一切効かずレンはいまだに重体である。

 ・ソーヤは報告を終えた後気絶しまだ目を覚ましていない。(どうやらレンを運んだ際に少し毒液に触れてしまい疲労と毒で倒れたようだ。)


「なるほど、状況は飲み込めた。それで俺がここに呼ばれた理由は?」

「お前にはこれから行われる討伐作戦に参加してもらいたいのだ。」

 ローガの疑問にガッデムが答える。

「討伐作戦?俺ってまだランク1なんだけどいいのか?」

「お前はの索敵能力を借りたいのだ。ランクに関しても指名依頼として出すから問題ない。」

「指名依頼?普通の依頼と何が違うんだ?」

 ローガの新人丸出しのこの質問に今まで黙っていた冒険者の一人が声をあげた。

「ギルドマスター、領主様やはりこの様な新人は今回の依頼では足手まといにしかならと考えます。そもそも彼が必ず討伐対象の居場所を特定出来るとは限りませんし、索敵以外で数日前に冒険者になった彼が役に立つとは思えません。」

 声をあげたのは軽装にレイピアで武装した女の冒険者だった。

「シアン。その話はローガが来る前にさんざんしたではないか。ローガは一度ヤツの気配を察知している。広大な森の中を何のあても無しに歩き回って探すのはあまりに非効率的だ。それにヤツの死体から解毒薬が作れるかもしれないし囮となったグレンやまだ帰還していないダンとドムも心配だ。ヤツを迅速に仕留める事が出来ればそれだけ彼らの生存率も上がる。索敵ができず足手まといになるようなら町へ帰せばいい。」

 シアンと呼ばれた冒険者の意見をガッデムが否定した。

「しかし、その索敵が間違いであった場合大幅なタイムロスに繋がります。索敵能力なら私もそれなりに高いと自負しております。私が居るのにわざわざこの様な新人を連れて行く事にメリットがあるとは思えません。」

 なおも食い下がるシアン。どうやらローガが自分を差し置いて索敵役になるのが気に入らないようだ。

「くどい。もう結論は出ている。」

 ガッデムに一刀両断で否定されシアンはしぶしぶ引き下がる。

 問答が終わる頃に会議室のドアがノックされ、ギルドの職員が入ってきた。

「失礼します。ロイド様にようやく連絡が取れました。『準備して行くから先に森へ向かっててくれ』だそうです。」

 報告を受けガッデムが号令を出す。

「ロイドのヤツめ……仕方ない。これより南の森の蛇型魔物の討伐依頼を正式に諸君らに依頼する。諸君の働きに期待する。


 こうしてローガは蛇型魔物の討伐依頼に参加する事となった。


「ところで結局指名依頼ってなんなんだ?」

 ローガのマイペース極まる質問にせっかく締めたその場の空気が一気に緩んだ。




 今回の討伐依頼を受けたのはローガを除いて4人と意外に少ない。

 町を出て森へ向かう最中情報交換と自己紹介を済ませる。

「俺はローガ。最近村から出てきて冒険者になった。よろしく。」

 基本的に物怖じしない性格のローガが先陣をきって自己紹介する。


「私はベルルカ。エルフで冒険者ランクは6巷では『香薬のベルルカ』などと言われている。最初にことわっておくが私は男だ。間違えるなよ。」

 ベルルカは金色の髪を背中の中頃まで伸ばしており女顔であるため見た目だけでは完全に女性にしか見えない。そのせいで、何度か男に言い寄られた事があるため自己紹介の時には必ず性別を明かすようにしたらしい。二つ名の『香薬』はそのまんまの意味で様々な効果を持つ香薬を調合する事を得意としているため着いたものらしい。

 

「吾輩の名はゴルド。『犀角のゴルド』だ。種族は犀人族だ。ランクは6。よろしく頼む。」

 ゴルドは犀の獣人でずんぐりむっくりな体型に鎧とハンマーで武装している。無口なようで本当に最低限の事しか喋らないようだ。


「チェイスだ。人族でランク7、彼女募集中だ。二つ名は『風雷双刃』でとおってる。よろしく。」

 チェイスはいわゆるチャラ男だ。双剣を得意とし腕は確かだがその性格が災いしモテない。

 風の属性と雷の属性をそれぞれに付加した双剣で戦うことからこの二つ名が付いたらしい。

 

「……私は『軍隊蜂』のシアン。人族でランク6よ。」

 シアンは先ほどローガの参戦に異を唱えた冒険者だ。この中で唯一の女性であり軍隊蜂の異名を持つ。テイムした蜂の魔物を操り指揮しながら戦うことから付いた異名である。まだ、ローガの参戦に納得できていないようで不満げにしている。


「さて、全員の自己紹介も済んだところで何か質問はあるかな?新人のローガくん?せっかくの機会だから先輩冒険者として色々と教えてあげるよ。」

 チェイスが先輩風を吹かしながらウザイ感じに絡んできた。どうやらシアンの前で頼れる先輩として恰好付けたいようだった。

 そんな下心にもちろん気づく事無くローガは吞気に気になっていた事を質問する。

 

「おお、ありがとう。じゃあ早速だけどなんか緊急事態って割に依頼受けた人が少ないと思ったんだけどこの町って冒険者が少ないのか?」

「ああ、その事か。普段ならもっと中堅からベテランの冒険者が居るんだが今は時期が悪くてな。ランク6から上の冒険者はほとんど外に出て行ってる。」

「なんで?」

「東の方にある『東国連合』っていう地域のとある国が武道大会を開催しててな、みんなそっちに行っちまってるんだ。町に残ってた中堅からベテランの冒険者は俺達ぐらいしかいなかったのさ。高位の冒険者で町に残ってるのは後はロイドのだんなぐらいなもんだ。」

「ロイド?ああ、後で合流するって言ってた冒険者の事だったな。」

「そうそう。ロイドのだんなは今町に残ってる冒険者の中で唯一のランク8だからな。気まぐれな人だがあの人が来てくれるなら今回の依頼もなんとかなるだろう。だからあんまり緊張するなよ。」


 そうやって雑談しながら進んでいると森の入り口が見えてきた。

「さて、おしゃべりはここまでだな。そんじゃ皆さん死なない程度に頑張りましょうかね。」

 この中で一番ランクが高いチェイスの号令で一同は南の森へと足を踏み入れた。

前回の話で会話の中に全ての設定を盛り込むのが難しいと悟りました。


そのため、今後あとがきで少しずつ説明しきれていない設定を解説していくことにします。


今回は冒険者のランクについての補足説明。

冒険者ランクの目安は大まかに分けると次のようになっています

ランク1~3 新人、下級冒険者

ランク4~6 中堅冒険者、中級冒険者

ランク7~9 ベテラン、上級冒険者

ランク10~12 バケモノ


たいたいこんな感じです。


次回も読んでいただければ幸いです。

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