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人狼村開拓記  作者: やまぐ
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種族と先祖返り

今回は説明回です。

 

「えっ、もしかして先祖返りの自覚がなかったんですか?」

 ソーヤが呆然としながら聞いてくる。

「そもそも、先祖返りと言うのが何なのか自体知らない。」

 昨日ガッテムから先祖返りは珍しいと言う話は聞いていたが、初めての町に舞い上がっていたため「先祖返りとは何なのか」と言う疑問は根本的に頭に浮かんでこなかったのだ。

 ガッデムとしてもローガ自身の事であるため当然知っていると思っているので説明していない。

 

 ため息をつきながらグレンが説明する。

「ローガ殿。根本的にそれぞれの種族の成り立ちがどうなっているかは知っているか?」

「まったく知らない。」

「では、まずそこから説明しましょう。この世の全ての知性ある種族はみなそれぞれの神祖の子孫であると言われている。」

「神祖?」

「そうだ、例えば私に四分の一流れている人虎族の血は神祖〈人虎神コウガ〉様の子孫の血筋だ。この様に獣人族、亜人種、人族問わず先祖をたどればそれぞれの種族の神祖にたどり着く。先祖返りとは突然変異的にその神祖の力が色濃く出た者を指す総称のことだ。」

「なるほど、そうだったのか。で、それって凄いのか?」

 ローガのあまりの自覚のなさにグレンは再度ため息をつきながら答える。

「それぞれの祖にもよるが、少なくとも私が知っている先祖返りは凄いなんて言葉じゃ言い表せない程のお力を持っていた。」

「そう言えば確かに、俺の居た村じゃ力も速さも体力も獲物を探す能力も俺にかなう奴は居なかったな。」

「だろうな。同じ種族でも先祖返りと普通の者では隔絶した力の差があるからな。」

 ローガとグレンが話し込んでいるとドムが苛立ちながらわめき始める。

「おい、いつまでくっちゃべってるつもりだ。いい加減ランク1の雑魚なんざほっといて行くぞ。」

「そっちは依頼の途中だったな。邪魔して悪かったな。」

「いや、かまわない。私は幼き頃より祖父から、『例え他種族の先祖返りであろうと神祖様の力を色濃く受け継ぐ尊い方だから、もしも出会ったときは敬意を持って接するように』と教えられていてな、先祖返りの者と知り合いになれてうれしいぐらいだ。いずれまた会おう。」

  その後、グレン達と別れたローガは予定通り晩御飯用にアーマーラットを数匹狩って町へ帰るのであった。

「あっ、そういえば例の大型魔物から何か妙な気配がしたって伝えてなかった。でもまあ、何がおかしいのかは説明出来そうもなかったし別にいいか。」




 ローガは町に着くと真っ先に冒険者ギルドに向かう。

 幸いにも町の住人とトラブルにならずにギルドにたどり着く。(ギルドカードが見えるように首から下げて堂々としていたら案外大丈夫だった。)

 依頼の達成手続きをすべくカウンターに向かう。

「食用キノコの採取依頼の報告に来たんだけど。」

 ギルドの受付嬢に話しかけると、昨日のギルドカードを作った時に対応してくれた受付嬢が対応してくれた。

「ローガさん、依頼の達成手続きですね。それでは早速、依頼の品物を確認します。」

「おお、昨日の人か。」

「はい、そういえば自己紹介がまだでしたね。私はココナといいます。今後ともよろしくお願いしますね。ローガさん。」

 食用キノコをカウンターに並べながら森でのことを思い出し礼を言っておくこにした。

「そういえば、ガッデムさんの依頼を受けた冒険者達に会ってな、俺の事を話してくれたおかげでトラブルニならずにすんだよ。ありがとう。」

「彼らに会ったんですね。こちらとしましても冒険者同士の無用な争いは避けたいですからね。ところで…採取してきた物はこれで全部ですか?」

「そうだけど?あれ、もしかして足りなかった?」

「いえ…そうではなく、この手の採取依頼は報酬金額が安いので通常は周辺で採取出来る物の採取依頼をまとめて受けるんですよ。」

「え、そうなのか。」

「はい、そうでもしないとランク1の冒険者はまともに生活していけませんしランクも上げられません。非常に言いにくいのですが、他に依頼を受けていないのであれば今回の依頼の報酬だけでは正直宿に泊まることすらままならないのですが……。」

「そうだったのか。」

「というか依頼書に報酬金額や他の依頼との重複可能などの情報は記載しているのですが。」

「おお、この数字が報酬金額だったのか。」

 ローガのトンチンカンな反応にココナは呆れながら聞き返す。

「この数字が報酬金額だったのかって、もしかして分からずに依頼を受けてたんですか?」

「そういえば依頼の内容と場所しか見てなかったな……。」

「はぁ~、次からちゃんと確認してくださいね。それではこちらが報酬となります。」

「おお、これが金か!初めて見た。」

「あの…ローガさん、初めて見たって?」

「俺の村では何か欲しければ物々交換してたからな。ババ様から外ではそういうもので取引している話では聞いてけど実物は初めて見た。」

 今まで色々な冒険者達と接してきた受付嬢のココナもさすがにこの発言には絶句する。

「お金が存在しない村って……。」

「ところで、これっていくらぐらいあるんだ。」

 金というものが存在しない村で育ったローガにはもちろん物価や金に関する知識は無い。

「今回の依頼の報酬は大銅貨2枚と銅貨7枚になります。ちなみに、小銅貨10枚で銅貨1枚と同価値、銅貨10で大銅貨1枚と同価値です。それ以降は銀貨・大銀貨・金貨・大金貨の順番で各10枚毎に同価値です。それと、この町の一般的な宿屋の一泊は大銅貨3枚ほどです。」

「ナルホド、ソウナノカ。」

「ローガさん…理解出来てませんね。」

「まあ、何とかなるだろ。」

「わかってるんですか?この金額では宿に泊まることすらままならないんですよ。」

「飯は確保してるし野宿には慣れてるから問題ないだろう。」

 狩ってきたアーマーラットを見せながら大丈夫アピールをする。

「魔物を狩ってきていたんですね。そちらの素材を買い取りすれば宿代ぐらいにはなりますよ。」

 そう言って早速アーマーラットの状態を確認し始める。

「これは…素材の状態が酷いですね。特に一番価値がある硬化した外皮の部分がぐしゃぐしゃです。ハンマーか何かで攻撃したんですか?」

「いや、普通に素手で握り潰したけど。」

「素手で握り潰した!どんな握力してるんですか。」

「?そんなに硬くなかったぞ。」

「なんにしても、この損傷度合では買い取りはできないです。」

「そうか、それなら予定通りで食うか。」

「食べるんですか!アーマーラットの肉は硬くて煮ても焼いても食られたものではないんですが……。」

「昼にも食ったけど別にそんなに硬くなかったぞ。」

「どれだけ強靭な顎をしているんですか……。」

「まあ、宿には泊まってみたかったけど今日のところは野宿するよ。」

 

 こうしてローガは町の外で野宿することとなった。

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