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人狼村開拓記  作者: やまぐ
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蛇の執念

 頭部を完全に破壊されどう見ても死んでいるハズのレッサードラゴン変異体。しかし突如その体をユラリと起し始める。

「!?俺の必殺技『動かなくなるまでぶん殴る!』を受けてまだ立ち上がるだと!なんて無駄に丈夫でしぶといヤツなんだ!」

 流石にこれにはローガも驚いたようだ。自分のしぶとさを棚に上げて驚きの声を上げる。あと現状にはあまり関係ないがその技の名前はもう少しどうにかならなかったのだろうか。

「……オ…オ…カミ……。コロ………ス。」

 ズタボロになった口でかろうじでそう声を漏らすとレッサードラゴン変異体の背中がバキバキと音を立てて変異し始めた。

 その変異は以前戦った百足蛇が最後に放った毒の翼に酷似していた。

 その事を覚えていたローガはいち早くレッサードラゴン変異体の意図に気づき声を上げる。

「全員少しでも遠くへ離れろ!猛毒が噴き出すぞ!」

 辺りはその一言でパニックに陥った。

 ギャラリー達が脱兎のごとく逃げ出し始める中ローガは状況のマズさに冷や汗を掻いていた。

(ヤバイな……。ここは街中だぞ。あの時と同じように背中から毒の翼が噴き出し始めたらどれだけの被害が出るか分かったもんじゃない。というかあの毒の翼が噴き出した状態で動き回られただけで下手した王都が壊滅するぞ。俺は多分あの毒を受けてもギリギリ死なない気がするからまだいいが他の連中が耐えられるとは思えない。となると動き回られる前にアイツを完全に消し飛ばすしかないがそんな事出来るのか?)

 必死で打開策を検討するが焦りもあっていい案が思い浮かぶことは無かった。

(ダメだ!何も思い浮かばん。そもそもアレコレ頭で考えるのは性に合わねぇ!)

 考えても何も思い浮かばない。そう判断したローガは瞬時に思考することをやめた。といってもそれは諦めた訳ではない。

 頭で考えて分からない事は体(本能)に聞け。これはローガの座右の銘である。

 実際にローガは今まで何度も危機的状況で考えても打開策が思い浮かばなかった時はこうしてきた。

(まずはアイツの毒の翼とか、そのせいで周りの人達が危ないとかその辺のことは一旦置いとく。単純にアイツを一瞬で消し飛ばすような攻撃が俺に可能か?それだけだ。)

 その事だけを意識して己に問い掛ける。

 やがてぼんやりとだかその答えが見えてくる。

(ん、なんとなくだけどやれそうな感じがする。そしてその方法は……そうか、今俺の体を駆け巡ってるこの力を一点に集中したらいいのか。)

 曖昧でなんの根拠もない事だが、ローガは体が返したその答えが間違いではないと確信している。故になんの迷いもなくあやふやなイメージを信じて実行に移す。

 体を駆け巡っる力を右の拳に集中させる。それに呼応するようにローガの全身を染めていた紅が右の拳に集まっていく。

 やがてローガの毛並みは右手以外が通常通りの灰色に戻った。

 そのかわりローガの右手は先程までローガの全身を染めていた紅い光が集中しており見ただけで誰もが『あれはヤバい』と感じるような力が宿っている事が見てとれた。

 一方のレッサードラゴン変異体の方も背中の変異は完了しており毒の粒子を撒き散らしながらゆっくりと上昇し始める。

 風に乗って運ばれてきた毒の粒子がローガを襲う。

 それを吸ってしまったローガは一瞬ふらついたものの歯を食い縛って大地を踏みしめ体勢を立て直す。

(吸い込んだ毒が少ないし、何よりこの毒は前にくらったのとほほ同じやつみたいだ。大量に吸わなければ多分問題無い。)

 ヤラれる前にヤル。その精神の元、ローガは右手に集中した力を先制して解き放つ。

「これでくたばれ!」

 気合いと共に振り上げられた拳から紅く輝く力の塊が打ち出される。

 轟!っと凄まじい衝撃と共に圧倒的な紅い力がレッサードラゴン変異体に直撃、その後紅い耀きが膨れ上がる。

 やがてその耀きはレッサードラゴン変異体の巨体をも呑み込み焼き尽す。

「ふぅ、流石に塵一つ残さないように消し飛ばしたから完全に死んだだろ。」

 拳を突き上げた姿勢のままローガは今度こそ殺り切ったと確信し呟く。

 ボロボロになった貴族街の一角でようやく蛇と狼の殺し相いに決着が着いた。




「いやー、流石はガチでバケモンなローガさんですねぇ。なり損ないとはいえ蛇神様の使徒に素手で勝っちゃいますか。」

 激闘直後の戦場に人を小馬鹿にしたようなその声が響く。

 ローガが声のした方を振り向くと暗がりからボロボロの姿のジェイドが姿を現した。

「お前…生きてたのか?」

 手応えは合ったのにな、と思いながらローガは驚きの声を上げる。

「ええ、お陰様でズタボロですがね。知ってますかぁ?私の一族の種族特性『メステスナの胃袋』は元々亜空間となっている胃袋に大量の食べ物を保存しておく究極の食い溜めの為の能力なんですよぉ。」

 どうやら致命傷を受けた状態からどうやって瓦礫の山から脱出してここまで来たのかを解説しようとしているようだか遠回しな言い方でローガには伝わらないようだ。

「それとお前が生きてた事に何の関係があるんだ?」

「話は最後まで聞いてくださいよぉ。つまり私が言いたかった事は亜空間の胃袋と実際の胃袋は一部が繋がっているって事ですよぉ。そして私の腹の中には『蛇神の四肢』の物資の一部が預けらてるんですよぉ。」

「イマイチなにが言いたいのか分からんな。ちゃんと説明する気有るのか?お前。」

「察しの悪い人ですねぇ。つまり預けられてたポーションのほぼ全てを胃に直接流して無理矢理回復してなんとか瓦礫から這い出して来たんですよぉ。」

「ふーん、そうか。」

 せっかくの種明かしだかローガにはまるで興味が無かったようだ。

「まあ、どうやって生き残ったのかなんてどうでもいいことですよねぇ。」

「ああ、重要なのはお前が何をしにそのズタボロの体を引きずってここまで来たのかだ。」

「それは勿論ローガさんに復讐……いえ、八つ当たりするために決まってるじゃないですかぁ。」

「復讐でも八つ当たりでもなんでも結構だがそんなズタボロの体で俺に勝てると思ってるのか?」

「あいにくこのありさまじゃ無理ですねぇ。でも……。」

 ジェイドはここで一度言葉を切ると口の中に手を突っ込み何かを引っ張り出そうとする。

「プファ、あったあった。これを使えばもう一回ぐらいはローガと遊べると思うんですよねぇ。」

 そう言ってジェイドが取り出したのはこの事件の引き金となった『蛇神の鱗』だった。

「それはっ!栄養満点の干物!」

 ローガは未だに『蛇神の鱗』が栄養満点の干物だと思っているらしい。

「実はコレ、預かってた分と密かにガメッてた分とで合わせて3枚あります。全部使えばきっと楽しい事になると思うんですよぉ。」

 ジェイドには『栄養満点の干物』が『蛇神の鱗』であることを訂正する気は無いようである。

 一度は取り出した『蛇神の鱗』を再び飲み込んでジェイドは嗤う。

「さあ、もう一度遊びましょうか。ローガさん。」

 その言葉と共に今回の祭りの最終戦の火蓋が切って落とされた。

何とか間に合った……。

次回も10日後を目指して頑張ります。


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