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童話トリップ!  作者: 深月 涼
第1章 白鳥の湖
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エピローグ

 あれから、俺は改めて彼女―――『みにくいあひるの子』に謝った。

 魔女も言ってた通り、もう少しちゃんと周りの状況を見たり、それこそ掲示板をこまめに確認しておけばこんな事態にならずに済んだんだからな。

「本当にごめん。何なら、その怪我が治るまで俺が面倒みるよ」

 その言葉に、何故か周囲が騒ぎだした。

 え、なんでそこではやし立てるんだよロッド。妹姫もまたキーキーウルサイ事言ってるし。

 あひるの子に視線を戻せば、彼女も真っ赤になって俯いてた。

 ……そんなに変な事言ったか?責任取るって当たり前だろ?

「えっと」

 微妙な空気に耐えられず、意味の無い言葉を発してみる。

 ええと、ほんとにどうにかしてくれないかな。

 ここへ来るまでずっと何も言わなかったけど、君が何か言ってくれないと俺もどうしようもないぞ?

 そう思いながら顔を覗き込むと、視線を避ける様に顔をそむけられた。

 えっ?……あれ?あれ俺微妙に避けられてる?てか嫌がられてる?

 彼女は顔をそむけたままぼそぼそと、「別に、仕事だから」とだけ言ってまた口を引き結んでしまった。

 けど、俺はそれどころじゃなくて……。

「初めて喋った……」

「……」

「しかもアニメ声だ」

 直後どっかの剣豪の3段突きならぬ3段蹴りが俺を襲った訳だが。




「~~~~~~~~~~~~~~~~~♪♪♪」

 本格的に冬が到来して凍りついた湖の上を、上機嫌で鼻歌を歌いながら軽快に滑る。

 口ずさむのは、その昔某有名大手事務所に所属し、ステージを所狭しと滑るパフォーマンスで一世を風靡しながらも、その事務所で唯一と言っていい解散をしてしまったとある男性アイドルグループの歌だ。

 歌は結構ノれるし好きなんだけどな。


 冬が来る前に、何とか女性陣の白鳥になる呪い―――主に変身の制限時間については解く事が出来た。

 今後は王子連中と同じく、自分の意思で変身したり人間に戻ったりできる様になる。……“魔法”という形で。

 その分どっかの妹姫には色々と振り回されたりもしたけれど、結果何とかなったし。……うん。

 今はあの小さなログハウスもどきを改装して、でかい城を建てたとこ。人数もだいぶ増えたしな。

 男連中も駆り出されたりして、それもひと騒動になったっけ。


 すいすいと氷上を滑り、浮かれた気分のまま4回転半を「ジャッ」という音と共に勢い良く決めた所で、ロッドバルドに声を掛けられた。

「ずいぶん浮かれているな」

「まあね!」

 全開のいい笑顔で返事をする。

 ロッドの声は呆れた様な声色だった様な気もするけど、それは特に気にしなかった。

 いやだって楽しいもん。

「じゃーな!」

 浮かれたまんまの俺は、碌に挨拶もしないままロッドを置き去りにして、真っ直ぐに目標へと向かう。

 やがて俺の視界に飛びこんで来たのは――――――

「こんちは!あひるさん!」

 あの灰色の白鳥の姿をした“彼女”だった。


「やあ、元気?」

「……元気はたった今ログアウトしました」

 くあ、このつんつんっぷりも可愛い!

 相変わらず昼間は人間に戻りたがらない彼女だったけれど、最近はこうしてちゃんと会話してくれる事も増えた。

 怪我した時、甲斐甲斐しくお世話したのが良かったのかな?あれで少しは信頼して貰えたのかなー?なんて。

 その後も何故か白鳥の姿をとり続ける彼女に聞いてみたんだけど、

「……キレイな人がいっぱいいるから。わたし、かわいくないし」

 だって。いや、発言内容は十分可愛いから!


 彼女は何故か、自分の本来の素顔を見たら俺達ががっかりしてそっぽ向くと思ってるらしい。

 もうすでに1回見ちゃってるんだし、今さらだと思うけどなあ。

 確かに俺の勝手に持ってたイメージと違い、彼女の容姿は平凡と言えるかもしれない。

 細いかなと思う程度の印象の薄い目に、そばかすの散ったあっさり系の顔立ち。

 でも体つきの方はグラマーなタイプで、むしろそれがどうしてコンプレックスになるのか俺には分からない位だ。

あとカワイイ声してるし、何よりその素直になれない態度というか、受け答えの反応が可愛いと思ったんだ。

 1度「ツンデレだろ?」って聞いたら、ソッコー否定された(笑)

「ツンデレなんかじゃないよ!何言ってんの!?」

 って(笑)それからツンデレについて非常に熱心に語られた。甲高いあのアニメ声で(笑)

 だからその態度がツンデレ以外の何だっていうの。


 

 結局、容姿なんか関係無いんだよ。

 俺が彼女の事を考えるとウキウキソワソワして楽しくなるのは、間違いなく彼女に恋してるからだと思う。


 彼女が今でも気にしてる妹姫のあの発言だって、俺達だってどうかと思ったんだし、実際魔女からもお仕置き喰らったんだからそんなに気にする事無いと思うけどなー。


 それを彼女に分かって欲しくて、俺は今日も彼女を誘う。

「今度デート行こう!」

「……考えます」

 うん?舜殺にしては間があったぞ?

 ホントに考えておいてくれよ?俺は本気なんだからな?





「ジークフリード殿にも、遅い春が来た様だね」

「あら、遅くなどありませんわ。ふふ、むしろ春はこれからですわよ」

「やれやれ。冬将軍が勝つか、ジーク殿の恋の炎が勝つか見ものだね。ただ見る限りだと、しばらくこの辺りは暖かい陽気で包まれていそうだけど」

 よく晴れた冬の晴れ間の眩しい光の中、湖畔に佇む人の姿のオデットと十三兄が、時折ジークフリードとみにくいあひるの子の方を見ながら、ほのぼのと散歩を楽しんでいる。


 湖の悪い魔法使い―――俺の親友のロッドバルドも、愛する黒鳥オディールと共にいる。

「一件落着、か?」

「めでたしめでたし、でいいと思う」

 昼の明るい日差しが似合わないコンビは、主にロッドバルドの方が苦虫をかみつぶしたような表情をしていたが、黒鳥にたしなめられるとその表情も和らいだ。

 

 そうして、

 最後に残った王子ジークフリードは――――――

「あ、でもさ」

「?」

「その生足出すの、俺の前だけにしてくれよな」

 ――――――灰色がかった白鳥に、ドロップキックを食らっていたという。





おまけ


◆ジークフリード王子

 明るく楽天的な典型的爽やか王子

 ゲーム時にはそのシナリオ上敵対していたが、現在はロッドバルドと友人関係

 得意:魔法:光  武器:片手剣、両手剣 特殊:STR重視

 称号:白鳥の湖の王子 英雄


◆魔法使いロッドバルド

 掲示板では(真顔)がトレードマークの、英雄ジークフリード王子の悪友

 魔法使いらしく思慮深いが、ややぶっきらぼう

 得意:魔法 闇 武器:杖 特殊:INT重視 呪い

 称号:白鳥の湖の悪い魔法使い

 

◆オデット姫

 純真でおっとりやさんの白鳥の湖ヒロイン

 ジークとは苦境を共に乗り越えた仲間、というだけの間柄

 最近になって白鳥の王子十三兄に見染められた

 得意:魔法 水 武器:羽団扇 特殊:INT ややTEC重視 

 状態:白鳥になる呪い(昼限定)

 称号:白鳥の湖の白鳥姫


◆オディール

 ゲーム時代はオデットの色違いキャラだった。現在は友人同士

 寡黙なタイプで普段はあまりしゃべらないが、思考型のロッドについていける程度には才能もあり、彼とは相棒兼恋人と言った感じ

 意外にも口説いたのはオディールの方

 得意:魔法 闇 武器:羽団扇 特殊TEC ややINT重視 変身魔法:黒鳥

 称号:白鳥の湖の黒鳥姫


◆白鳥の王子 長兄

 物腰の穏やかな好青年 妹姫の実兄

 暴走しがちな妹を、甘やかしながらも絶妙にコントロールしている

 称号:白鳥の王子 長男   変身魔法:白鳥


◆白鳥の王子 十三兄

 兄達に比べるとやや砕けた話し方をするが、基本的にフェミニストなのは変わらない

 王子達の中でも一番末の弟にあたる

 最初は兄妹達と南の地方に住んでいたが、要請を受け北の湖へ赴いた際、オデット姫に一目惚れをする

 称号:白鳥の王子 十三男   変身魔法:白鳥


◆白鳥の王子 妹姫

 ゲーム時代から一人だけ違うゲームしてるだろ!とツッコミを受け続ける、名物シスタープリンセス

 よくある逆ハー狙いの乙女ゲーム転生ヒロイン的思考の持ち主で、自分がちやほやされてないと気がすまないタイプ

 頭ゆるいン

 こう見えて周囲に問題があると率先して解決しようと首を突っ込むタイプなので、根っから悪い子という訳でも無い

 長兄にいいように使われている辺りは、やはり真性の妹キャラである

 得意:魔法 光 武器:細剣 特殊STR ややINT重視 

 特殊アイテム作成:イラクサのかたびら

   (効果:白鳥の呪い、あるいは魔法の解除)

 

◆みにくいあひるの子

 コンプレックスの塊みたいな女性

 最初から白鳥モード

 顔は平凡だが美脚

 コンプレックスも手伝ってジークには素直になれない

 得意:蹴術 風魔法 武器:ブーツ 特殊AGI特化 

 自作魔法:キール○ワイヤル

 称号:みにくいあひるの子 変身魔法:白鳥



白鳥の王子のデータが少ないのは基本皆一緒だから(笑)

兄妹が13人なのは“本家”の影響w



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