異形頭と勇者
どうも、私です。
今、目の前には勇者さんとそのお仲間がいらっしゃいます。ギアさんは睨んでいますが多分わからないでしょう。あなた目、ないでしょうに。
「で、あなた方は私たちを殺しにきた、と。」
「…はい。」
「理由はありますか?」
「…国王が君たちが悪さをすると言い張っていて…」
気まずそうに視線をそらす青年、勇者さん。そんなことはわかっているのですよ。私が聞きたいのはそんなことではありません。
「私たちはここから動いていません。あなた方に不利益なこともしてません。人殺しなんて人間か魔物くらいしかしませんよ。さぁ、私たちを殺す正当な理由をください。そうでなければあなた方を魔物の危険度Sの森に転送して差し上げましよう。」
ビクッと体を跳ねさせる勇者ご一行。そのなかでも気の強そうな女の子がキッとこちらを睨みながら声を張り上げる。
「化け物のくせに!!私たちに歯向かうなんて生意気よ!!」
化け物、ですか。
「そのお言葉、そっくりそのままお返ししますよ、お姫様。同じ生き物を罪悪感なしに殺せる非道な生き物、人間。私もそんな生き物だったなんて吐き気がしますね。」
「え…まさか…」
「ええ、私、人間でした。とある町娘でした。でも、人間である私は死にました。残ったのは菓子頭と呼ばれる…あなた方がいう化け物ですよ。」
なにをそんな顔をして私を見るのですか勇者さん。まさか可哀想なんて思っているのではないでしょうか?笑えますね。
「ひとついいことを教えて差し上げます。私たちをここで皆殺しすると魔王が復活します。そして人間は殺されたあと絶対に異形頭になり、永久の時間を苦しみながら生きることになります。」
「なんだって!?」
「嘘よ!!はったりよ!!」
何故私達が魔法を使えるのかを考えればわかるはずなのですが、信じたくないことは嘘だと喚くのは人間ゆえ、ですね。
「信じるも八卦、信じないのも八卦。私はそろそろ疲れました。まだ仕事も残っていますから転送しますね。生き残れるといいですね。」
「ちょ、ま…」
ブゥンッと鈍い音と共に勇者さんご一行は光となって飛んでいきました。
「…菓子頭、奴等生き残れると思うか?」
「難しいと思います。まぁ、私には関係無いことですし。さ、ギアさんはそちらの資料を複写してください。」
「へいへい。」
空を眺めながらゆっくり、ゆっくり荒廃に向かう世界を思いながら私は仕事をするのです。