表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

私と魔女と滑稽なる乙女の祈り

作者: やよい

キャスト

千沙:16歳女子高生、魔女家系の一人娘。しかし魔法が使えない

老婆:76歳、千沙の祖母で魔女

朋美:千沙の学校のクラスメイトで親友でもある

佑斗:朋美の幼馴染みの男の子。千沙の学校に通うがクラスは違う



【プロローグ】


SE 街の音(車や人のざわめき)※シーンの終わりまで継続する


SE 横断歩道の信号が変わった時の誘導音


老婆「すまないね。荷物重かったろ?」


佑斗「ここで降ろして大丈夫?よかったら家まで送るけど」


老婆「オマエさんは学校遅刻しない様に急ぎな。高校生だろ?」


佑斗「(呟く)何か逆に気を遣わせちゃったかな・・・」


SE 荷物を地面に置く音


老婆「いんや助かったよ実際に。今度デートしてやるよ」


佑斗「大丈夫そうだから行くけど、無理そうだったら誰かを頼るんだよ。じゃあね婆ちゃん」


SE その場を去る足音(徐々にフェードアウト)


老婆「さてと、再び運ぶとするかね。よっこらせっと」


SE 荷物を持ち上げる音


老婆「久しぶりに街に出てみたけど、この辺りも随分変わったもんさね。やたら低燃費を謳ってる車に、軒並み建っている高層マンション。でもまぁ変わらないところもあったかね。今の子みたいなね・・・」


少し間


老婆「何時の時代も、いい男がいるってことか。ヒヒヒヒ」


SE 街の音 フェードアウト



【タイトルコール】


「私と魔女と滑稽なる乙女の祈り」



【シーン1】


SE チャイムの音


SE 学校のガヤ(教室内)※シーンの終わりまで継続する


朋美「それで昨日丁度やってたところを弟に見られてさー。もー最悪」


千沙「朋ちゃんがやってたのって、確か消しゴムで・・・」


朋美「ノートに書き綴ってある好きな人の名前を消して、その消しカスを丸めて小瓶に入れるってヤツ」


千沙「見られたのって名前の方?」


朋美「ううん、丸めた消しカスの方」


千沙「じゃあ問題ないんじゃないかな?名前見られてないんだし」


朋美「その後が問題だったんだよ。その消しカスを見てアイツなんて言ったと思う?『鼻クソの収集でもしてんのかー?』だって。もう凄くムカついてさー」


千沙「それは萎えちゃうね」


朋美「でしょ?だから新しいのでもって思ったけど、中々いいのが思いつかなくてね。ちぃ、何かいいのない?」


千沙「んーそうだねー、リップを使ったのなんかはどう?」


朋美「何それ?」


千沙「スティックタイプのリップを利用するんだけど、それを全部出して最後のほうに針とか使って好きな人のイニシャルとハートマークを描くの。それを全て使い切ると好きな男の子と両思いになれるんだって」


朋美「そのリップは新品じゃないと駄目なの?」


千沙「うん、新しいのじゃないと効果がないみたいだよ」


朋美「陰謀ね、製薬会社の」


千沙「そこは『ロマンスへの対価』って考えなきゃ駄目だよ」


朋美「随分前向き思考ね。誰の言葉?」


千沙「私の言葉なのです。えっへん」


朋美「だと思った。でもその短絡的な考え悪くないかも(少し考え込んで)よし決めた!ちぃ私先に帰るね」


千沙「か、帰るって・・・」


朋美「早速マツキヨ行ってくる」


千沙「佑ちゃんは?もうすぐ来ると思うよ」


朋美「佑斗には『先に帰った』って言っといて。じゃ、また明日!」


千沙「ちょ・・・朋ちゃん!」


SE 急ぐように走り去る音


少しの間


千沙「(呆然と眺め)・・・行っちゃった」


佑斗「わりわり、お待たせー・・・ってアレ、高槻一人?朋美は?」


千沙「(乾いた笑い)あははは」


SE 学校のガヤ(教室内)フェードアウト



【シーン2】


SE 学校以外の屋外の音※シーンの終わりまで継続する


佑斗「マツキヨに行くから先に帰るって?」


千沙「(ごまかすように)う、うん。取り急ぎ必要なお買い物があったんじゃないかな?」


佑斗「生理用品?」


千沙「セクハラだよ、佑ちゃん」


佑斗「冗談だ」


千沙「もー」


少しの間


佑斗「あのさ高槻」


千沙「何、佑ちゃん?」


佑斗「オマエさ今度の日曜ヒマか?」


千沙「何かあるの?」


佑斗「実は懸賞サイトで試写会のチケット当たって、高槻が前に話してた映画の。試写会の日、丁度その日なんだ。よかったら一緒に行かね?」


千沙「私と佑ちゃんで?」


佑斗「おう、ペアチケットだからな。どうだ?」


千沙「(何かに悩む様に)うーん」


佑斗「都合つかないか?」


千沙「う、うん。じ、実はね、その日予定が入ってて・・・」


佑斗「そっかぁー」


千沙「ごめんね折角誘ってくれたのに・・・」


佑斗「気にすんなって。用事が入ってるなら仕方ないことだし」


千沙「・・・」


佑斗「(独り言を言う様に)それにしても、高槻が駄目となると誰に声かければいっかなー?」


千沙「朋ちゃん誘ってみたらどうかな?」


佑斗「朋美?アイツ確かああいうの興味なかったと思うけど・・・」


千沙「そんなことないよ。きっと喜ぶと思うよ朋ちゃん」


佑斗「そっか?じゃあ朋美に声かけてみっか」


千沙「そうした方がいいよ」


少しの間


千沙「私の家、こっちだから・・・」


佑斗「あ、そうだったな。送ってくぞ」


千沙「大丈夫だよ、すぐそこだもん」


佑斗「(少し釈然としない感じで)む、そうか?じゃあまた明日な高槻」


千沙「うん、バイバイ佑ちゃん」


SE 学校以外の屋外の音フェードアウト



【シーン3】


SE カラスが数羽鳴き声を響かせる中、人の足音が徐々に近づいていく


SE ドアを重い開閉音ガチャリ・ギギギギ・バターンその後固い廊下を歩く足音が鳴り響き、その音は次第にフェードアウトしていく


SE (廊下の足音とクロスフェードするように)鍋の煮えたぎる音をフェードイン※シーンの終わりまで継続する


SE 『にゃぁー』と猫が不気味に鳴く音


老婆「おや、お腹がすいたのかい?ビアトリクス」


千沙「(遠くから)ただいまー」


SE 再び『にゃぁー』と猫が不気味に鳴く音


老婆「違うか。オマエさんのその鳴き声は孫が帰ってきたことを知らせる為のものだったね。ヒヒヒヒ」


千沙「(声が近づいてきて)ただいま、お婆ちゃん。ってうわ臭っ」


老婆「おかえり千沙」


千沙「この臭い・・・また作ってたんだね」


老婆「まぁね」


千沙「好きな男の子でもできたの?」


老婆「そういうところだね。次はこのトカゲの尻尾を使って・・・ヒヒヒヒ」


千沙「(呆れたように)お婆ちゃん、何も今やらなくてもいいんじゃないかな?もうすぐ夕飯の支度しなきゃならないのに。お婆ちゃんが使った後の台所って臭いがとにかく凄くてさ・・・」


老婆「もう少し使わせてもらえないかね。夕飯の支度なら私がするからさ」


千沙「(しぶしぶと)まぁそれなら・・・」


老婆「すまないね」


少しの間


SE 鍋が煮えたぎる音を強調させながら、老婆は呪文のように言葉を繰り返す 


老婆「(繰り返す言葉)ネールネールネールネー」


千沙「(いくつか繰り返す途中で打ち切るように)お婆ちゃん、ちょっとだけ訊いていいかな?」


老婆「恋の相談かい?」


千沙「違うよ」


老婆「(からかうように)いやいや隠さずとも私にはわかるよ。春が来たんだねー、千沙にも」


千沙「だから違うって(少しためらってから)その、魔法のことだよ」


老婆「(珍しいそうに)ほう、何が知りたいんだい?」


千沙「私の家って先祖代々魔女の家系だったんだよね?」


老婆「一目瞭然じゃないかね。私を見ればさ」


千沙「そうだよね。じゃあさ、何で私の代から急に魔法使えなくなったのかな?」


老婆「別に急に始まったことではないよ。時代の流れと共に魔女の血が薄くなっていって、千沙が生まれる代で魔法が使えなくなってしまっただけの事さ。実際私の使える魔法だって、先祖と比べると微々たるものだしね」


千沙「そうなんだ」


老婆「おや?千沙は魔法が使えるようになりたかったのかい?」


千沙「小さい頃は少しだけね。女の子だもん魔法とかには憧れるよ」


老婆「ほーそうかい。(ニッと笑って)じゃあ私が特別に千沙でも使える魔法を教えてしんぜよう」


千沙「え、そんなのあるの?」


老婆「ああ、今から私の言う通りにすればね


千沙「う、うん。何かな?」


老婆「先ず右手を胸に当ててごらん」


千沙「こ、こう?」


老婆「そうそうOKだよ。次に左手を夕日に向かってかざすのさ、ここは室内だけどね」


千沙「・・・」


老婆「そしてそのポーズをした状態でこう呪文を唱えるのさ、『シュリンク・シュクラー・リトゥン』ってね」


千沙「・・・お婆ちゃん、それって魔法じゃないよね?」


老婆「プラシーボ効果って言葉を知らんのか?こういうのは気の持ちようで魔法にも・・・ってコレ、どこへ行く千沙。まだ途中だぞい」


千沙「もういいよ、部屋に戻って宿題してるから(呟く)もう、魔法が使えるって言うから期待してたのに・・・」


老婆「そうかいそうかい、じゃあ私は続きをやらせてもらうとするよ。あと少しで薬が完成するからね」


千沙「この薬使って街に出るなら、ウィッグとか使って少し変装してくれるかな?最近友達からいくつか覚えのない目撃情報を聴かされてるから」


老婆「ほー、それは気をつけんとイカンな(気づいたように)ん?友達?・・・そういえば先程千沙と下校してた男の子とはどんな関係なんだい?」


千沙「佑ちゃんのこと?」


老婆「ゆうちゃん?」


千沙「沢渡佑斗君、学校の友達だよ。朋ちゃん知ってるでしょ?クラスメートの」


老婆「ああ、こないだ家に遊びに来てた子だね?」


千沙「朋ちゃんの幼馴染みだよ。っていうか、佑ちゃんと別れた場所って家から100メートル以上離れてたと思うけどな?」


老婆「愚問だね、私は魔女だよ」


千沙「(呆れたように)それ犯罪とかに使わないでね。じゃあ、私は部屋に戻ってるから片付けお願いね」


老婆「はいよー」


SE 千沙立ち去る(足音必要か?)


SE 鍋の煮えたぎる音を強調


老婆「さてと、後はコレを調合すれば完成さ。ヒヒヒヒ楽しみだねー、佑ちゃん」


SE 鍋の煮えたぎる音フェードアウト



【シーン4】


SE 小鳥のさえずる音、フェードイン


SE 体温計の音(ピピピピ、ピピピピ、ピピピピ)


老婆「38度0分か・・・具合はどうだい千沙?」


千沙「(まどろむ)うん、頭痛が少し・・・あと眠気が・・・」


老婆「きっと疲れかなんかだね。今日は学校お休みしな千沙、学校へは私が連絡しとくから」


千沙「(まどろむ)うん、お願い」


SE 老婆部屋から立ち去る。(部屋のドアの開閉音・階段を下りる音)


千沙「(まどろむ)なんだろ?昨日の夕飯から急激に・・・とりあえず今日は休もう」


少しの間


SE ベッドの上で動いている音(布団の音)


SE 携帯を開く


千沙「朋ちゃんと佑ちゃんにメールで知らせて・・・」



【シーン5】


SE チャイムの音


SE 学校のガヤ(校庭)※シーンの終わりまで継続する


千沙?「ここが孫の通っている学校か・・・(呟くように)それにしても最近の制服は少しスカートが短すぎやしないかね?この歳になって捨て去ったはずの羞恥心が沸いてくるよ」


朋美「(遠くから)アレ、ちぃ?」


千沙?「あ!えっと・・・お、おはよう朋ちゃん」


朋美「ちぃ、アンタ今日学校休むんじゃ・・・」


千沙?「はい?」


佑斗「え、高槻?(千沙に気づく)あ、本当だ!」


千沙?「あ、佑ちゃん・・・」 


佑斗「学校に来て平気なのかよ?」


千沙?「えっと・・・何のこと?」


朋美「いやだから、ちぃ今朝私と佑斗にメールくれたじゃない『体調崩したから休む』って」


千沙?「あ、そ、そうだったね・・・う、うん・・・と、とりあえず大丈夫だったみたいし、登校しちゃったー。ア、アハハハ」


朋美「本当に?でもちぃ、いつもと感じ違うわよ?」


千沙?「あははは、き、気のせいだよ朋ちゃん・・・(老婆の声で呟く)ちっ、まさかメールを打つ余力があったとはね」


佑斗「ん?今なんか変な声してなかったか高槻?」


千沙?「(慌ててごまかすように)ゴホンゴホン。あー、そ、そうだね・・・少し咳き込んでて、喉が本調子じゃないかもー。アーハハー」


佑斗「そ、そうか?・・・(少し考えて)ちょっとごめんな。おでこ借りるぜ」


千沙?「わ、わ!ゆ、佑ちゃん?」


朋美「ちょ!佑斗・・・」


佑斗「熱は・・・ねーな」


千沙?「あ・・・」


SE 心臓の鼓動ドクンドクン


千沙?「(老婆の声で)ウホ、いい男」


佑斗「ん?何か言ったか?」


千沙?「(更に慌ててごまかすように)ううん、ううん!なんでも、なんでもないヨ。熱なかったでしょ?」


佑斗「あ、ああ・・・(呟く)アレ?いつもならここで『近いよ』とか言って距離とってくるんだけどな・・・」


千沙?「どうしたの佑ちゃん?」


佑斗「あ、いや何でもねえよ。まぁ治りかけみたいだからさ、あまり無理すんなよ高槻」


千沙?「うん、心配してくれてありがとう佑ちゃん」


佑斗「お、おう」


朋美「佑斗、ちぃ。そろそろ急いだほうがいいんじゃない?ホームルーム始まるよ」


佑斗「ああ、そうだな」


朋美「私、先に行ってるから」


佑斗「え?高槻と教室一緒なんだし、一緒に行けば・・・」


SE 朋美立ち去る(スタスタと歩き去る音)


佑斗「お、おい!ちょっと待てって・・・」


SE 朋美の足音が完全に消える


佑斗「ったく何怒ってんだ朋美のヤツ?訳わかんねーぞ?(気を取り直して)そんじゃ俺らも行くか高槻」


千沙?「うん」


SE 学校のガヤ(校庭)フェードアウト


千沙?「(老婆の声で)なーるほど、そういうことかい。ヒヒヒヒ」



【シーン6】


SE 時計の針の音


千沙「(まどろむ)う、うん・・・あれ?私・・・」


少しの間


千沙「そうか、私今日学校休んだんだ。(気づいたように)今何時だろう?」


SE 電気のスイッチを入れる音


SE 時計の針の音ここで途切れる


千沙「(時計を確認する)もうこんな時間。私一日中寝てたんだ」


SE 携帯メールの着信音:千沙バージョン


千沙「メール?誰からだろ?」


SE ベッドの上で動いている音(布団の音)


SE 携帯を開く


千沙「朋ちゃんからだ、何だろ?(メールを確認する)え、何コレ?」



【シーン7】


SE 『にゃぁー』と猫が不気味に鳴く音


老婆「おや?」


SE 遠くから固い廊下を走る音が聴こえる。その音はしだいに近づいていく


SE 再び『にゃぁー』と猫が不気味に鳴く音


老婆「もう少し眠っている筈だったんだがね・・・」


SE 扉の開閉音


SE 固い床を歩く音(少し遠くから近づいていく)


老婆「おやおや、お目覚めかい。気分の方はどうだい千沙?」


SE 歩く音止まる


千沙「お婆ちゃん、訊きたいことあるんだけど・・・」


老婆「(何かを察したように)穏やかじゃないね、一体何を訊きたいと言うんだい?ヒヒヒヒ」


千沙「このメールの事」


老婆「(千沙の携帯画面を覗き込みながら)ほー、これはこれは・・・あの娘も単刀直入に切り出してきたもんさね」


千沙「心当たりあるんだ。どういうこと?」


老婆「どうもこうもないさ、ご推察の通りだよ」


千沙「・・・お婆ちゃんが好きになった男の子って佑ちゃんだったの?」


老婆「そうだよー。重い荷物を前に溜息をついていた私に声をかけてくれてね、代わりに荷物を担いで手まで引いてくれたんだ。今時珍しくらい心根の優しい子で思わずときめいてしまったよ」


千沙「それで私を眠らせて、佑ちゃんに接近したってこと?」


老婆「オマエの友達ってわかってしまったからね、オマエさんには学校をお休みしてもらう必要があったのさ。そのおかげで思わぬ役得があったがね。ヒヒヒヒ」


千沙「・・・役得って?」


老婆「あの少年、すっかり私を千沙だと思ってね。お熱を計る為にこうしてオデコとオデコをくっつけてきたのさ」


老婆、自身の額を千沙の額にくっつける


老婆「(耳元に囁くように)半世紀ぶりの甘酸っぱさを感じたね」


千沙「そんなことが・・・」


老婆「あの少年、完全にオマエさんの事好きだよ。千沙はどう思ってるんだい?」


千沙「佑ちゃんとは朋ちゃんを通して知り合った友達というだけで、私は別に・・・」


老婆「ごまかしたって無駄だよ。昨日あの少年を家まで送らせなかった理由を、私が気づいてなかったと思ってるのかい?」


千沙「あれは・・・」


老婆「(千沙の台詞と少しかぶる)本当に何とも思ってなかったら、あそこまで過剰に距離をとる必要がなかっただろ?」


千沙「・・・」


老婆「あの娘に気を使っているつもりかい?」


千沙「親友なんだよ私達?」


老婆「(呆れたように)随分一方通行な友情だね・・・届いたメール、もう一度読み返してみたらどうだい?あの娘が千沙のしている事を望んでいるとは到底思えないがね」


千沙「わかってたよ・・・でも私はそのままでいたかったの“学校に行ったら朋ちゃんと佑ちゃんがいて、一緒に他愛のない会話をして過ごす”そんな関係を何時までも続けたかったから、私は親友の恋を応援する方を選んだの。それこそ魔法使いになったつもりになって」


老婆「オマエが納得してるならいいんだけどね。私から言わせてもらうと、それは自己満足にしかならないよ。今大切にしている時間だって、いつかは終わりを告げる日がやってくるんだ」


千沙「お婆ちゃんなら、どうしてた?」


老婆「なんでそんなこと訊くんだい?」


千沙「だってお婆ちゃんは・・・」


老婆「(千沙の台詞と少しかぶる)関係ないね。こういう事に小細工なんて一切通用しない、結局は自分の言葉で伝えることが大切なんだ。まぁ普段から私利私欲で魔法を使ってる私が言っても説得力ないんだけどね」


千沙「自分の言葉・・・」


老婆「千沙、オマエはそれで納得してるんだね?」


千沙「私は・・・ううん、私やっぱり・・・」


SE 柱時計の鐘の音(ボーン、ボーン)※千沙の『ううん、私』から後ろの台詞を完全に消す形で


SE 鐘の音が鳴る中で、屋敷の周りにいたカラスが数羽鳴き声を響かせながら羽ばたく



【シーン8】


※千沙と朋美それぞれのメールのやり取り


SE 携帯メールの着信音:千沙バージョン


朋美「件名、朝の件について:ちぃ、今朝は態度悪くしてごめん。どうしてもあの時の佑斗とちぃを見るのが耐えられなかったから・・・ちぃは別に悪くないのにね本当にゴメン。それともう一つ訊きたいことあるんだけど、ちぃは本当は佑斗の事どう思ってる?ちぃの本当の気持ちを聴かせてくれる?返事待ってるね ――朋美」


SE 携帯メールの着信音:朋美バージョン


千沙「件名、佑ちゃんの事について:今晩は。朋ちゃんからメールもらってから自分の気持ちと向き合ってみたの。『私は佑ちゃんのことどう思ってるんだろう?』って。そしたら私は朋ちゃんに一つ謝らなきゃならないことができました。ごめんなさい、私もう朋ちゃんの恋を応援することが出来ません。私ね、佑ちゃんの事・・・」


SE 携帯を閉じる音


BGM流れながら、エンドロールへ(BGM使うなら)



【エンドロール】


前のシーンからBGMを継続(BGM使うなら)


※キャストとスタッフを読みあげる


BGMフェードアウト、エピローグへ



【エピローグ】


SE 通学のガヤの音フェードイン※シーンの終わりまで継続する


千沙「え、断られた?」


佑斗「ああ、昨日朋美に映画の話したんだけどさ、『興味ない』って一蹴されちまったよ」


千沙「そうだったんだ・・・」


佑斗「ま、確かにアイツには興味のないジャンルだったからな」


千沙「違うよ、朋ちゃんは多分・・・」


佑斗「なんか知ってんのか?」


千沙「(慌てて)う、ううん。な、何でもないよ」


佑斗「ん?そうか?・・・(呟く)それにしてどうすっかなー、このチケット。姉ちゃんのID借りてヤフオクで転売してみっかなー」


千沙「あ、あのね佑ちゃん・・・私、その日行けるようになったよ」


佑斗「マジか?でも予定あったんじゃ・・・」


千沙「ううん、その予定なくなったから大丈夫だよ」


佑斗「そっか。じゃあ今度の日曜、一緒に行くか?」


千沙「(嬉しいけど少し遠慮がちに)うん」


佑斗「(千沙の表情など気に留めず)よかったー、これでチケット無駄にならずにすむ。(何かに気づいたように呟く)あ、そういえば高槻と二人って初めてじゃないかな・・・?」


千沙「ねぇ、佑ちゃん」


佑斗「何?」


千沙「私のこと、名前で呼んでくれるかな?」


佑斗「え・・・」


千沙「『千沙』って。・・・ダメ?」


佑斗「(少し戸惑いながら)別に、いいけど・・・」


千沙「じゃあ、呼んで?」


佑斗「(少し戸惑いながら)い、今?」


千沙「うん、今」


佑斗「(少し戸惑いながら)お、おう・・・(少し躊躇いながら)えーっと・・・千沙?」


千沙「うん、何?佑ちゃん」


佑斗「(照れくさそうに)何か、変な感じ・・・」


千沙「(少し照れくさそうに)ふふふ、そうだね」


SE チャイムの音


千沙「あ、チャイムの音・・・そろそろ急ごっか?こんな時間だし」


佑斗「え?・・・あ、本当だ!のんびりしてたらやばいな。よし、走るぞ高・・・ち、千沙!」


千沙「うん!」


SE 足音、遠くへと駆けていく音


SE 通学のガヤの音フェードアウト



ここのサイトでは主に二次創作を書かせていただいてるのですが、サークル活動ではオリジナルで音響劇用の脚本を書かせていただいてますので、今回良い機会として今度秋M3で発表予定の作品を紹介させていただきました。


「脚本はあまり興味ない」って方もいらっしゃいますし、本来の書き方とは異なる点も多いので、好まれない方もいらっしゃると思いますが、よろしければ感想なんかいただけると幸いです。


あと、脚本形式で読みにくいって方には下記のURLから


<台本PDFファイル>

http://841hime.moo.jp/majo_kyakuhon.pdf


脚本用に編集したPDFファイルをアップしておきますので、よろしければそちらからご覧なってください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ごぶさたしております。 自分がラジオドラマ(……呼び方古い?)好きなせいかもしれませんが、かなり見事に脳内再生できました。 形式上容姿描写はありませんが、僕のなかでは 千沙……肩口くら…
2011/09/15 19:05 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ