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「夏の冒険」new!

作者: 涼城づいむ

これは、夏休みの課題でコンクールに出そうと思っている作文です。

読みづらいところが何箇所かあるとは思いますが、読んでくださると嬉しいです。

アドバイス&感想をいただけたら喜びます。

最悪の夏休みになりそうだ。

「飛鳥っ!どこの高校行くつもりなの?この点数は何なの」

「まだ中二じゃん。そんなのどうでもいいし」

「毎日ちゃんと勉強しなくちゃ駄目じゃない」

「一応してるよ!部活で疲れちゃうんだもん」

「じゃあ、部活やめなさい。出来ないなら百点でもとってみなさい!」

「意味わかんないし」

 今日の私とお母さんの口喧嘩。

「ねぇ、この服ほしいんだけど」

「お母さんのあげるから、我慢しなさい」

「えーいらないよ」

「しょうがないでしょ」

「じゃあ、ケータイ買って」

「駄目」

「なんでもかんでも駄目言うの」

「まず、勉強頑張りなさい!」

 ああ、もう何なの?私は二階の自室のベッドに力なく倒れこむ。

 今日から夏休みだ。新しい自転車にまたがって、海へ行ったり、真新しい服を着て、友達とショッピング。スイカも食べたいな。後、浴衣を着て、夏祭りにも出かけて、花火も見たいな。

 夏休み一週間前くらいはこのことばかり考えていた。成績表が来るまでは。

 成績表が帰ってくるなり、うちの鬼は怒りっぱなしだ。何かほしいとねだればすぐ成績のことを持ち出してくる。話しとは全然関係ないのに。

 お父さんは夏休み中出張で家にはいない。お父さんは私の味方で、あまり成績には無頓着だ。その代わり「あの人」が怒っているわけだ。

「お父さんがいればなあ」

 ふいに、電話の子機が鳴り出す。友達の夏希からだ。

「夏希、どうしたの」

「分かってるでしょ。夏祭りとか、プールとか、お母さんに許可もらえたの」

「ごめん。無理かも」

「なんでよ。あんなに楽しみだったのに」

「ちょっとね、夏期講習行かされることになっちゃって。だから無理」

「そっかあ。大変だね」

「うん。じゃあね」

 これ以上話していたら、勉強勉強言われている私が馬鹿らしくなって、せつなくなる。どうしたら遊ばせてくれるんだろう。夏休みくらい自由にさせてほしい。溜め息だけこぼれる。

「いただきます」

 二人きりの食卓。ご飯と味噌汁だけの夕飯。お笑いのテレビ番組が流れている。たくさんの笑い声。はやく1人になりたかった。

「ねぇ、さっきの電話、誰?勉強せずに何話していたの。今度の成績悪かったらどうなると思っているの。答えなさいよ、飛鳥っ。聞いてるの!」

 答えたって、どうせ否定・批判・怒声の3拍子に決まっている。何も言わない方が被害が少ない

「電話の話し相手くらい言えるでしょ?あんたはいつもそうやって、馬鹿な事ばかりして!」

「飛鳥!何とか言いなさい」

鬼の叫ぶ声。飛鳥飛鳥飛鳥飛鳥飛鳥勉強勉強勉強勉強勉強勉強飛鳥飛鳥飛鳥飛鳥あすかあすあすあああ

 頭に響く雑音。

 自分の中で何かがはじけた。

「うるさぁい!うるさい!私の話はいつも受け流して、勉強勉強言ってばかりのくせに!自分のことしか考えてないくせに!私の気持ちなんか知らないくせに!ずっと怒ってばかりのくせに!電話の話し相手なんかどうでもいいでしょっ!」

 こんなわからずやなんか嫌い。勉強なんかするもんか。

 大急ぎで家を飛び出した。

 お母さんは追いかけてこなかった。やっぱり私はそれほどの存在なんだと、落胆した。

 三十分かけて、遠くの公園に逃げた。誰もいないベンチへ腰を下ろす。もう、疲れた。

 薄暗い夜だったが、八時半ごろには真っ暗だ。公園で花火をする人が増えた。

 家族や友達同士。はじっこで、恋人同士。ひとりでベンチに座っている私だけが一人だった。ああ、最悪な夏休み決定だ。

 九時を過ぎていくと、もう誰もいなくなった。電灯の明かりと、近くの家の明かりだけが救いで、逆に惨めな思いにもなる。かみ締めていた唇が痛む。汗臭いシャツが鼻を突く。

 適当なことを考えていると、遠くから足音が聞こえてくる。

「ザッ ザッ ザッ」

 ふと、悪い予感が胸を過ぎる。誰だろう。不審者?酔っ払い?変態?どうしよう!

「あなたも家出なの」

 女の子だった。ワンピースに少し大きめのバッグ。そして麦藁帽子。いかにも夏って感じの格好だ。

「あれ、でも手ぶらね。計画的犯行じゃないわね。勢いあまって出てきたってとこかな。そうよね。余所行きの服って感じじゃないもの」

 この子妙に鋭い。誰だろう。

「ふふっ。私は美羽。中3だよ」

「え。受験生じゃないの?」

「まあね。あなたは見たところ中1、2くらいに見えるけど。名前は?」

「くっ。中2だけど。名前は、教えない」

 ま、いいけどね、隣いい?と、美羽は私の隣に腰掛ける。

「私ね、友達の家に泊まるって嘘ついて、出かけてきたの。だから親は今安心して、テレビ見てると思うんだ。娘の嘘に気づかないなんて、親子ってそんなもんなんだね」

 あきらめているのだろうか。私と同じだ。

「…私も、口げんかして、そのまんま家を出てきたよ。「あの人」心配しないと思うけど」

「そうかしら。心配で泣いているかもしれないわ」

 私はありえないと、鼻で笑った。

「だって「あの人」は家で勉強勉強しか言わないし、なにかと順位とか点数ばかりがみがみ言うの。人の話は聞かないのに、自分の話は聞かないと怒るし。家にいても息が詰まるだけだから」

 そして美羽は、ふと前を見て言った。

「私もそうだった。学校は友達をお話しできるのは楽しかったし、授業を受けて、新しいことを学ぶのも苦痛じゃなかった。楽しかったの。でも、家や塾で自分のやりたいことを削ってまで、やるものなのかなって。親は将来のためなんていうけど、よく分からなかった」

 美羽は私と同じ。夏希は勉強は全然しなくても怒られないし、そこそこしてれば大丈夫なんていっていた。私も一年生の頃はただなんとなくやっていただけだった。二年生でも、「勉強のやる意味」を自分で見出せなかった。自分の中で何かが消化しきれてなかった。やらなければいけないことは分かっている。

「分かってはいるけど、体が動かなかった」

 美羽が言う。はっとした。まさにその通りだった。

「やればお母さんやお父さんを喜ばせてあげられるって。でもね、つい手がペンを置いちゃうの」

「そうだよ。勉強のやる意味が分からないのに、言いなりになるのはイヤだ。私は私のやりたいことをしたい。今年の夏は今しかないから、今の私に出来ることを精一杯やりたかった。なのにいつも「あの人」は!私に命令ばっかり!高校のためだとか、将来のためだとか、全然分からないのに、勉強しろだなんて、怒られたって」

 一気に自分の中のどろどろした、言葉たちが吐き出された。これが本当の私の気持ちだったのか。

 興奮する私を抑えるかのように、家の明かりも徐々に減ってゆく。もうすぐ十時になる。すると、美羽が微笑んだ。

「あなた、去年の私みたいね」

 去年の美羽…。私はふと顔を上げる。

「だから私は、自分で納得のする意味を見つけ出そうって思った。家族にも友達にも私にも笑顔でいられる方法をよ」

 なんだろう。気になる。その答えが、今の私にもつながると確信した。

「えっへん。それは、〝自分の存在価値を高めるためと優越感に浸るため〟よ」

「……」

「どう。これが私の勉強する意味よっ。大して難しくないの。私、欲張りだから」

 美羽は胸をそらした。拍子抜けした。

「はっ。おかしい。意味が分からない。理解できない」

「理解されようと思って言ったんじゃないもん。私を動かす原動力となるのなら、なんだっていいと思うわっ。でもね、勉強をやっているとね、やっぱり自分って出来るじゃんって、思えてくるの。そしてね、テストでいい点数が取れると、友達に褒められるでしょ。それもたまんないのっ。家族も、順位が言いと機嫌がいいしね」

 顔を真っ赤にしてまくし立てる美羽の考えは、やっぱりおかしいと思う。でも、「自分の価値を見い出す」「他人よりいいという優越感に浸ること」。誰だってこれらの安心と満足を手に入れたいものだ。

「あなたは、自分の納得する理由は見つけられそう?」

「…どうだろうね」

 そう…と、悲しそうにうつむかれても困る。けれど、

「今夜は一緒に居てくれてありがとうね。1人でいたら、多分爆発してたと思うから」

 本当にそうだ。美羽は心の掃除をしてくれた。汚いもの全部を吐き出すことが出来た。

 もう、十時半を過ぎた。

 ここで、美羽と共にこのまま朝を迎えてもいい気がしてきた。その時。

「かぁー。あすー…かー」

 小さいけれど、芯のある強い声が聞こえる。まさか。

「あすかー。飛鳥ー」

 まさかっ!気がついたら足が向かっていた。

「ママぁ!!」

 ママは、ビックリした目でこちらを見つめた。顔は汗まみれだし、疲れ果てていた。

「よく分かったね。へへっ」

「あなたは、バカ!本当にバカね!」

「バカですよーだ。謝ったりしないよ。だから許さなくていいよ。でも、怒ったら駄目だよ。ママだって悪いんだからね」

「そうね。ママも悪かったわ。もちろん、謝るつもりはないけど」

「ご勝手に!」

 ふと、笑いがこみ上げてきた。もちろん、仲直りなんかしてやんない。絶対にママを見返してやる。

 帰ろうかと、ママが手を引く。急いでベンチへ引き返した。ベンチには笑顔の美羽がいた。

「良かったね」

「うん、ありがと美羽。私、ママ…ううん、みんなを見返すために頑張る。美羽にも負けない」

「お互い頑張りましょう。これでバイバイね、〝ママが大好きな飛鳥ちゃん〟」

「くっ。聞いてたの。それよりほら、行くよっ」

 恥ずかしくて顔をまともに見ることは出来なかったけど、手をしっかりと握って、引っ張った。

「え?飛鳥ちゃん?」

「もう、友達の家に泊まるんでしょ?私の家、大丈夫だと思うから」

 美羽が笑う。

 今年の夏は最高の夏休みになりそうだ。 

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

評価だけでもしていってください。

よろしくお願いします。

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