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第9話 初敗

歓声はまだ残っていた。


だが、それはもうレイン・クラウスたちのためだけのものではない。


「次の対戦、決まったぞ!」


トールが掲示板を指差す。


レインは視線を上げた。


そこに表示された名前を見て――


「……来たな」


短く呟く。


ミナが小さく息を飲む。


カナは一瞬だけ無言になり、すぐに笑った。


「面白くなってきたじゃん」


対戦相手。


Aクラス上位チーム。


さっきの相手とは格が違う。


「リリア、いるな」


トールが言う。


その一言で空気が変わる。


リリア。


Aクラスのエース。


そして――


最初にレインの価値に気づいた存在。


「……どうする」


ミナが問う。


レインは少しだけ考えた。


だが答えはすぐに出る。


「やることは同じだ」


「崩す?」


カナが笑う。


「いや」


レインは首を振った。


「通用するか確認する」




***




試合開始前。


フィールドの中央で、リリアが立っていた。


相変わらず隙のない姿勢。


視線が、まっすぐレインに向く。


「来たわね」


「そっちも」


短い会話。


だが温度が違う。


リリアは楽しそうだった。


「前より強くなってる」


「どうだろうな」


「試せば分かる」


その言葉に嘘はない。


純粋に戦う気だ。


トールが小声で言う。


「やばそうだな……」


「分かってる」


カナは笑っている。


「でも、負ける気はない」


ミナは静かに杖を握る。


レインは一度だけ目を閉じた。


(相手は完成している)


前衛、リリア。


もう一人の前衛。


そして後衛。


全てが高水準。


(さっきと同じやり方じゃ通らない)


だが――


(試す価値はある)


「行くぞ」


開始の合図。




***




速い。


最初の一歩から違う。


「っ……!」


トールが受ける。


だが――


「重っ……!」


押し切られる。


カナがカバーに入る。


「遅い」


リリアの一閃。


軌道が読めない。


カナが弾かれる。


「くそっ……!」


「ミナ、撃て」


レインの指示。


ミナが詠唱を短縮する。


「――撃つ」


だが。


リリアはもうそこにいない。


「消えた!?」


トールが叫ぶ。


「横だ」


レインが言う。


だが間に合わない。


衝撃。


トールが吹き飛ぶ。


「ぐっ……!」


「トール!」


カナが叫ぶ。


「まだいける!」


トールは立ち上がる。


だが体勢が崩れている。


「……繋ぐ」


戦術リンク発動。


三人接続。


だが――


「っ……!」


違う。


前の相手とは次元が違う。


「追いつかない……!」


ミナが言う。


判断速度。


反応。


全部が一段上。


「レイン!」


トールが叫ぶ。


「どうすんだよこれ!」


レインは冷静だった。


(ズレが作れない)


崩す前に押し切られる。


「カナ、フェイント」


「やってる!」


だが通じない。


「読まれてる!」


動きが完全に見切られている。


「ミナ、一点集中」


「無理」


即答。


「詠唱の間に潰される」


その通りだった。


リリアが間合いを詰める。


速い。


「トール、受けろ」


「おう!」


だが――


一撃で崩される。


「っ……!」


膝がつく。


「トール!」


カナが入る。


だがその瞬間。


後衛の魔法が飛ぶ。


「っ……!」


直撃。


カナが吹き飛ぶ。


「カナ!」


ミナが叫ぶ。


陣形が崩壊する。


「……詰みだな」


レインが呟く。


だがその声に絶望はない。


ただの事実確認。


「まだ終わってねぇ!」


トールが立ち上がる。


「やるぞ、レイン!」


「いい」


レインは短く言った。


「ここまでだ」


「は?」


「これ以上は意味がない」


トールが歯を食いしばる。


だが――


理解していた。


この差。


「……ちくしょう」


リリアが剣を下ろす。


「終わりね」


その言葉と同時に、判定が出る。


試合終了。




***




静まり返る観客席。


そして――


ざわめき。


「やっぱり無理か……」

「さっきのは偶然だったな」


評価が戻る。


いや、少しだけ上がって。


そして落ちる。


トールが地面を叩く。


「くそっ……!」


カナが舌打ちする。


「全然通じなかった」


ミナは無言だった。


ただ、レインを見る。


レインは息を吐く。


「……予想通りだ」


「どこがだよ!」


トールが叫ぶ。


「ボロ負けじゃねぇか!」


「だからいい」


レインは言った。


「全部見えた」


「は?」


カナが眉をひそめる。


「何が見えたの」


レインはゆっくり答える。


「勝ち方だ」


一瞬、空気が止まる。


「……マジで言ってる?」


「マジだ」


ミナが小さく頷く。


「なら、やる」


トールも顔を上げる。


「リベンジだな」


レインは視線を上げた。


観客席。


そこにリリアがいる。


目が合う。


リリアが、わずかに笑った。


「次は勝てる?」


その無言の問い。


レインは小さく口を動かす。


「勝つ」


声には出さない。


だが伝わる。


リリアの目が細くなる。


「楽しみ」


そう言っている顔だった。




***




フィールドを後にする。


敗北。


だが――


終わりではない。


「次だ」


レインが言う。


「対策を作る」


トールが拳を握る。


「今度は勝つ」


カナが笑う。


「負けっぱなしは嫌い」


ミナは静かに頷く。


「……調整する」


レインは一歩前に出る。


(リリア)


あの強さ。


あの完成度。


だが。


(崩せる)


確信がある。


負けたからこそ見えた。


「次は――」


レインは呟く。


「俺たちが勝つ」


対抗戦。


初めての敗北。


そして――


逆転のための、準備が始まる。


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