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第8話 格上

「対抗戦、ね」


レイン・クラウスは掲示板を見上げながら呟いた。


校内ランキング戦。


クラス単位ではなく、チーム単位での実戦評価。


そして――


「相手、Aクラスかよ……」


トールが顔を引きつらせる。


表示された対戦カード。


レイン、トール、ミナ。


対するは――Aクラス三人編成。


「ついに来たな」


ミナが静かに言う。


その声に緊張はあるが、逃げはない。


カナは腕を組んで鼻を鳴らした。


「ちょうどいいじゃない」


「何がだよ!?」


トールが突っ込む。


「今まで雑魚ばっかだったし」


「雑魚言うな!」


「事実でしょ」


カナは平然としている。


そして視線をレインに向けた。


「で? どうするの」


いつもの問い。


指示待ち。


レインは少しだけ考える。


(Aクラス三人……リリアはいない)


それは一つの情報だった。


だが――


(格は同じだ)


油断はできない。


「普通にやれば負ける」


レインははっきり言った。


トールがうなだれる。


「だよなぁ……」


だがカナは笑った。


「で?」


「だから、崩す」


レインは続ける。


「連携を壊す」


ミナが頷く。


「Aクラスは完成度が高い」


「だから一つ崩せば全部ズレる」


トールが拳を握る。


「いつも通りだな!」


「規模が違うけどな」




***




試合当日。


観客席は満員だった。


「EクラスがAクラスに挑むらしいぞ」

「無理だろ……」


ざわめきの質が違う。


期待ではない。


“どう負けるか”を見る目。


フィールドに出る。


相手チームがすでに待っていた。


前衛二人、後衛一人。


無駄がない立ち方。


「……強いな」


トールが小声で言う。


「分かる」


ミナも短く返す。


カナは剣を肩に担ぐ。


「楽しそう」


レインは視線を流す。


呼吸。


重心。


間合い。


(隙が少ない)


完成されている。


「来るぞ」


開始の合図。


一瞬で距離が詰まる。


速い。


今までの相手とは別次元。


「チッ……!」


トールが受ける。


押される。


「重い!」


カナが横から入る。


だが。


「読まれてる!」


動きが噛み合わない。


すぐに対応される。


ミナの魔法も、ギリギリで回避される。


「当たらない……!」


「当然だ」


レインが呟く。


「見えてる」


Aクラスの精度。


“ズレ”が少ない。


「……繋ぐ」


戦術リンク、発動。


三人接続。


だが――


「っ……!」


違和感。


(噛み合わない)


いつもならすぐに同期できる。


だが今回は、ズレが残る。


「レイン!?」


トールが叫ぶ。


「少し待て」


レインは視線を細める。


(原因……)


相手が早い。


こちらの調整が、追いついていない。


「……なるほど」


小さく呟く。


「一歩遅い」


「は!?」


カナが叫ぶ。


「全部一拍遅れてる」


だから当たらない。


「じゃあどうすんだよ!」


トールが叫ぶ。


レインは短く答えた。


「先に動く」


「は?」


「合わせるんじゃない」


レインの声が低くなる。


「読ませる」


一瞬の静寂。


「カナ、次はフェイント」


「了解」


即答。


「トール、あえて遅れろ」


「え?」


「いいからやれ」


「……分かった!」


次の瞬間。


カナが突っ込む。


だが途中で止まる。


フェイント。


敵が反応する。


「今だ、遅れて入れ」


トールが一拍遅れて踏み込む。


敵の対応がズレる。


「そこ」


ミナの魔法。


今度は当たる。


一人、撃破。


「っ……!」


観客席がざわめく。


「当てた……!?」


だが。


「まだ来る!」


残り二人。


連携は崩れない。


すぐに立て直す。


「甘い」


敵前衛が踏み込む。


速い。


「カナ、受けるな」


「分かってる!」


流す。


だが完全にはいなせない。


押される。


「トール!」


「任せろ!」


割り込む。


だが――


「読まれてる!」


カウンター。


体勢が崩れる。


「くそっ……!」


「焦るな」


レインの声。


「まだ崩れてない」


「どこがだよ!」


「一箇所だけズレてる」


レインは見ている。


後衛。


ほんのわずかに、判断が遅い。


「そこを潰す」


「ミナ、次は一点」


「……了解」


魔力が集まる。


だが時間がかかる。


「守れ!」


トールが前に出る。


カナも並ぶ。


二人で押さえる。


「今」


ミナが撃つ。


直線。


だが――


「避けられる!」


カナが叫ぶ。


「いや」


レインが言う。


「避ける場所も読んでる」


着弾位置。


回避先。


その先に撃っている。


「っ……!」


命中。


後衛、撃破。


完全に崩れる。


「今だ、押せ!」


トールが吠える。


カナが踏み込む。


今度は迷いがない。


連携が噛み合う。


数秒後。


最後の一人が倒れる。


試合終了。




***




静寂。


そして――


爆発的な歓声。


「勝った……!?」

「EクラスがAクラスに!?」


トールが拳を突き上げる。


「やったぞおおおお!」


カナが息を吐く。


「……マジで勝った」


ミナは静かにレインを見る。


「読んでた」


「少しな」


レインは肩をすくめる。


だが呼吸は荒い。


負荷が大きい。


「レイン、大丈夫か?」


トールが支える。


「問題ない」


リリアが観客席から見ていた。


その目が細くなる。


「……やっぱり面白い」


小さく呟く。


フィールドの中央。


レインたちは勝っている。


だが――


レインは分かっていた。


(まだ足りない)


今回は通用した。


だが次も通用する保証はない。


「……次が本番だな」


小さく呟く。


トールが笑う。


「まだやる気かよ!」


「当然」


ミナが頷く。


「まだ上がある」


カナも剣を担ぐ。


「負ける気しないし」


レインは小さく息を吐く。


(一回は負ける)


それがこの先の流れだと、感覚で分かる。


だがそれでいい。


負けて、修正して、勝つ。


それが一番強くなる。


こうして。


対抗戦が始まった。


そして同時に――


“格上との戦い”も、本格的に幕を開ける。


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