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第6話 暴走の刃

「……次、あいつだ」


トールが顎で示した先。


訓練場の端。


一人で暴れている前衛がいた。


剣が振られるたびに、地面が抉れる。


だが――


「当たってねえな」


レインが呟く。


「全部空振り」


「相手いねえからな!」


トールが突っ込む。


「いや、いたとしても当たってない」


レインは視線を細める。


動きが速い。


だが直線的すぎる。


止まらない。


止まれない。


「制御できてない」


「つまり?」


「欠陥持ちだな」


その言葉に反応したのか、


「……誰が欠陥よ」


鋭い声が飛んできた。


振り向く。


赤い髪の少女。


額に汗、息は荒い。


目はギラついている。


カナ。


Eクラスの問題児。


「聞こえてたか」


レインが平然と返す。


「全部ね」


カナは剣を肩に担ぐ。


「で? 文句あるなら言えば?」


トールが慌てて割って入る。


「お、おい落ち着けって!」


「トール、どいて」


「いや無理だろこれ!」


レインは一歩前に出た。


「文句じゃない」


「は?」


「評価だ」


カナの目が細くなる。


「どういう意味」


「お前、強い」


「……当たり前でしょ」


即答だった。


自信しかない。


「でも勝てない」


レインが続ける。


空気が止まる。


「は?」


低い声。


明確な殺気。


「誰が?」


「お前が」


即答。


トールが頭を抱える。


「お前ほんと容赦ねえな!?」


カナの剣がわずかに持ち上がる。


「……理由、言ってみなさいよ」


「連携できないからだ」


レインは淡々と答える。


「一人で全部やろうとしてる」


「それで勝てるなら問題ない」


「勝ててない」


沈黙。


カナの歯が鳴る。


だが否定できない。


「……だったら何」


「直す」


レインが言う。


「俺が」


カナが笑った。


乾いた笑い。


「は? あんたが?」


「そうだ」


「Eクラス最下位が?」


「評価はそうだな」


「ふざけてる?」


「ふざけてない」


レインの目は変わらない。


カナは数秒、睨み続けてから。


「……いいわ」


と吐き捨てる。


「やってみなさいよ」


トールが驚く。


「お、いいのか!?」


「ただし」


カナの剣がレインに向く。


「使えなかったら、邪魔しないで」


「了解」


レインは即答した。




***




即席チーム。


レイン、トール、カナ。


ミナは外で観察。


「……大丈夫なのこれ」


ミナが小さく呟く。


「知らん!」


トールが叫ぶ。


「でもやるしかねえ!」


開始。


カナが突っ込む。


「遅い!」


初動が速い。


だが――


「単独だな」


レインが呟く。


トールが追いつけない。


連携ゼロ。


敵に囲まれる。


「チッ……!」


カナが強引に斬り払う。


一人は倒す。


だがバランスが崩れる。


「そのままだと負ける」


レインが言う。


「うるさい!」


カナが叫ぶ。


「分かってる!」


分かっている。


だが止まれない。


「……繋ぐ」


レインの意識が沈む。


戦術リンク、発動。


対象――トール、カナ。


「っ……!」


重い。


ミナよりも荒い。


思考がぶつかる。


「ノイズが多い……!」


カナの動きは感情任せ。


予測が乱れる。


だが――


「切り取る」


必要な部分だけを繋ぐ。


「カナ、止まれ」


「は!?」


反射で止まる。


その一瞬。


「トール、右から入れ!」


「おう!」


トールが割り込む。


敵の意識が分散する。


「今、斬れ」


カナの体が動く。


考える前に。


反射で。


「っ……!」


一撃。


敵一人、撃破。


「……は?」


カナが固まる。


「今の……」


「止まれたな」


レインが言う。


「それでいい」


「止まるとか意味分かんないんだけど!?」


「だから弱い」


即答。


「動き続けるだけじゃ当たらない」


カナの歯が鳴る。


だが――


「次来るぞ!」


トールの声。


二人同時に攻めてくる。


「カナ、今度は動くな」


「また!?」


「待て」


一拍。


ほんの一瞬。


敵が踏み込む。


「今、横」


カナが横にズレる。


最小限。


その瞬間、敵の剣が空を切る。


「そこ」


トールが叩き込む。


二人目、撃破。


残り一人。


「……何これ」


カナの声が変わる。


困惑。


「なんで当たるの」


「無駄が消えてるからだ」


レインが答える。


「必要な動きだけしてる」


「そんなの……」


カナが言葉を失う。


「できるわけ……」


「できてる」


即答。


最後の一人。


数秒で終了。




***




「……勝った」


カナが呟く。


剣を見つめる。


「ちゃんと当たってる……」


トールが笑う。


「やればできんじゃねえか!」


「違う」


カナは首を振る。


視線はレインへ。


「私じゃない」


「半分はお前だ」


レインはいつも通り言う。


「力は元からある」


カナは数秒黙る。


そして。


「……もう一回」


と呟いた。


「さっきの、もう一回やる」


トールがニヤッと笑う。


「来たな!」


レインは軽く息を吐く。


「いいぞ」


カナの目が、さっきよりも落ち着いている。


「止まる」


小さく呟く。


「ちゃんと見て、斬る」


レインはそれを見て、少しだけ目を細めた。


(変わるな)


ミナが外から見ている。


静かに。


「……あの子も、繋がった」


小さく呟く。


レインの戦術。


それはただの補助じゃない。


人を変える。


戦い方を変える。


思考を変える。


カナが剣を握り直す。


「レイン」


「なんだ」


「……悪くない」


それだけ言う。


だが、その声には明確な変化があった。


反発ではない。


認識。


そして――


わずかな信頼。


こうして。


暴走していた刃は、初めて“制御”を知る。


まだ不完全。


だが確実に。


この前衛は――


化ける。


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