表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/14

第2話 価値の証明

「……偶然だろ」


ざわめきは、すぐに疑念へと変わった。


模擬戦終了後のフィールド。観客席からの視線は、さっきまでの嘲笑とは別の意味で刺さってくる。


「たまたま噛み合っただけだ」

「Aクラスがいたから勝てただけだろ」


評価は簡単には変わらない。


レインはそれを理解していた。


「ま、そんなもんか」


肩を回しながら、軽く息を吐く。


隣ではトールが不満そうに唸っていた。


「なんでだよ! あれ絶対レインのおかげだろ!」


「証明できないからだろ」


「いや、見てたら分かるだろ普通!」


「“普通”は見てない」


レインは淡々と答える。


「結果しか見てない。過程はどうでもいい」


トールは一瞬言葉に詰まり、そして舌打ちした。


「ムカつくな……」


「同感だ」


そのとき。


「ねえ」


声がかかる。


振り向くと、リリアが立っていた。


周囲の空気がまた一段、緊張する。


「さっきの」


「ああ」


レインは短く応じる。


「確認したい」


「何を?」


「あなたの価値」


ストレートだった。


「……面接か?」


「テスト」


リリアは一歩近づく。


「もう一度、やって」


「断る理由は?」


「ない」


レインは少し考えてから、肩をすくめた。


「いいけど」


トールが身を乗り出す。


「お、またやるのか!?」


「ただし」


レインはリリアを見る。


「条件がある」


「言って」


「俺の指示に従うこと」


一瞬の沈黙。


周囲がざわつく。


「おい、何言ってんだあいつ」

「Aクラスに命令とか……」


だがリリアは迷わなかった。


「いい」


即答だった。


「価値があるなら、従う」


「話が早いな」


レインは小さく笑う。


トールがニヤニヤしながら肘で突く。


「お前、すげーこと言ってるぞ」

「今さらだろ」


再びフィールド。


簡易の模擬戦形式。


相手は同じくBクラスの別チーム。


さっきよりも連携がしっかりしている。


「今回は普通に負けるぞ」


トールが小声で言う。


「さっきは奇跡みたいなもんだったしな」


「奇跡は再現できないと意味がない」


レインは視線を前に向ける。


「だからやる」


開始の合図。


敵が動く。


今度は最初からリリアを警戒していた。


包囲の形。


「……読まれてるな」


レインが呟く。


「どうする!?」


トールが叫ぶ。


その瞬間。


レインの思考が静かに沈む。


さっきと同じ感覚。


いや、少しだけ鮮明だ。


「繋ぐ」


戦術リンク、発動。


だが――


「っ……!」


頭に鈍い痛みが走る。


「レイン?」


トールが振り返る。


「問題ない」


短く答える。


負荷。


これが制約か。


長くは持たない。


「トール、左に踏み込め。リリアの斜め後ろに入れ」


「お、おう!」


トールが動く。


「リリア、今は突っ込むな。一拍待て」


「……分かった」


ほんの一瞬の“溜め”。


そのズレで、敵の包囲が歪む。


「今」


リリアが踏み込む。


今度は読まれていない。


敵前衛が対応しきれず、体勢を崩す。


「トール、押し込め!」


「おおおお!」


トールの一撃が直撃。


一人、撃破。


だが――


「来るぞ!」


敵後衛の魔法。


リリアに集中。


「避けろ!」


トールの叫び。


しかし。


「そのまま行け」


レインの声は冷静だった。


「え?」


「当たる」


リリアの目が細くなる。


普通なら回避。


だが――


「……分かった」


回避しない。


魔法が直撃。


爆煙。


「何やってんだ!?」


トールが叫ぶ。


だが次の瞬間。


煙の中からリリアが飛び出す。


最短距離。


最速の一撃。


敵後衛、撃破。


「なっ……!」


観客席がざわめく。


「どういう判断だ今の……」


レインは小さく息を吐く。


「今の一瞬、敵後衛は“当てること”に集中した」


「……?」


「次の動きが消える」


だから突っ込めた。


単純な話だ。


残り一人。


すでに連携は崩壊している。


数秒後、決着。


再び勝利。


今度は、さっきよりも明確だった。


「……もう一回言う」


リリアがゆっくり歩いてくる。


「今の、あなた?」


「そうなるな」


「何をしたの」


「タイミングを合わせただけだ」


「それだけで、こうなる?」


「なる」


レインはあっさり言う。


「元が強いからな」


その言葉に、リリアの視線がわずかに揺れる。


「……私が強いから?」


「事実だろ」


レインは淡々としている。


お世辞ではない。


評価だ。


リリアは少しだけ黙り込んだあと、


「あなたがいれば、もっと強くなる?」


と聞いた。


「なる」


即答だった。


トールが横で吹き出す。


「お前、遠慮ねえな!」


「事実しか言ってない」


レインは肩をすくめる。


リリアは、しばらくレインを見つめていた。


そして。


「決めた」


短く言う。


「しばらく組む」


「は?」


周囲がざわつく。


「AクラスがEクラスと?」

「ありえないだろ……」


だがリリアは気にしない。


「あなた、使える」


「光栄だな」


「私が証明する」


その宣言は、静かだが強かった。


レインは少しだけ目を細める。


「……面倒なことになりそうだ」


「嫌?」


「いや」


少し考えてから答える。


「悪くない」


トールが笑う。


「決まりだな!」


こうして。


Aクラスのエース。


Eクラスの最弱。


そして、その間を繋ぐ存在。


歪なチームが、形になり始めた。


まだ誰も理解していない。


この連携が、どこまで通用するのか。


だが少なくとも――


“偶然”ではないことだけは、証明され始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ