第15話 その先へ
静かだった。
対抗戦が終わった翌日。
教室の空気は、昨日までとは別物だった。
ざわつきはない。
ただ、視線だけがある。
レイン・クラウスは窓際に座っていた。
「……終わったな」
トールが机に突っ伏す。
「マジで全部取るとはな」
カナが椅子を傾ける。
「まあ、当然でしょ」
ミナは小さく言う。
「……想定通り」
レインは短く返す。
「ああ」
それだけ。
だが――
三人は自然と、レインの近くにいる。
それがもう“当たり前”だった。
***
昼休み。
中庭。
人の流れが変わる。
レインたちの前だけ、わずかに空間ができる。
トールが笑う。
「完全に扱い変わったな」
カナが肩をすくめる。
「やっと現実見たんでしょ」
ミナは周囲を見て言う。
「……評価、固定」
レインは気にしない。
その時。
「レイン」
振り向く。
リリアが立っている。
Aクラスの制服。
変わらない立ち姿。
だが距離は――近い。
「終わったわね」
「ああ」
リリアが一歩近づく。
トール、カナ、ミナを見る。
そしてレインを見る。
「いいチームね」
トールが笑う。
「だろ?」
カナも言う。
「文句ある?」
ミナは静かに頷く。
「……繋がってる」
リリアは小さく笑う。
「ええ」
一瞬、間。
そして――
レインの隣に立つ。
自然に。
迷いなく。
カナが目を細める。
「……近くない?」
トールがニヤつく。
「お、来たな」
ミナはレインを見る。
何も言わない。
だが、わずかに距離を詰める。
レインは視線だけ動かす。
(……増えたな)
それだけ思う。
***
リリアが口を開く。
「レイン」
「なんだ」
「私も入る」
即答だった。
トールが笑う。
「直球だな」
カナが腕を組む。
「枠、三人だけど?」
ミナは静かに言う。
「……制約」
レインも言う。
「同時は三人」
リリアは頷く。
「知ってる」
そのまま続ける。
「だから常時じゃなくていい」
トールが眉を上げる。
「ローテか?」
「そう」
カナが笑う。
「面白いこと言うね」
ミナはレインを見る。
「……判断」
視線が集まる。
レインは一度、全員を見る。
(今の最適は三人)
だが――
(選択肢は増える)
「いい」
短く言う。
トールが笑う。
「マジか」
カナが口元を上げる。
「へぇ」
ミナが小さく頷く。
「……拡張」
リリアが一歩だけ詰める。
完全に隣に立つ。
「決まりね」
その位置を、譲らない。
カナが軽く舌打ちする。
「ずいぶん当然みたいに来るじゃん」
リリアが横目で見る。
「当然よ」
一切ブレない。
ミナが静かに言う。
「……優先順位、高い」
リリアは否定しない。
「そうなるわね」
トールが笑いをこらえる。
「バチバチじゃねぇか」
レインはため息をつく。
「勝手にやれ」
だが。
誰も離れない。
***
夕方。
訓練場。
トール、カナ、ミナ。
そこにリリアが加わる。
「試すぞ」
レインが言う。
トールが前に出る。
「任せろ」
カナが動く。
「速さ上げる」
ミナが構える。
「……後方支援」
リリアが剣を抜く。
「前、私が行く」
役割が自然に組み替わる。
戦術リンク。
三人接続。
だが切り替える。
トール→リリア。
カナ→ミナ。
瞬間ごとに変わる。
「……っ!」
トールが笑う。
「これヤバいな!」
カナが斬り込む。
「自由度上がってる!」
ミナが言う。
「……精度、維持」
リリアが踏み込む。
「これが本来でしょ」
全員が噛み合う。
止まらない。
(使える)
レインは判断する。
(幅が広がった)
***
動きが止まる。
トールが息を吐く。
「はぁ……楽しいな」
カナが笑う。
「これ、上限ないでしょ」
ミナが言う。
「……まだ伸びる」
リリアがレインを見る。
「で?」
一歩近づく。
「どうするの」
レインは全員を見る。
トール。
カナ。
ミナ。
リリア。
(最初は三人だった)
(今は――)
少しだけ、間。
そして言う。
「全員使う」
トールが笑う。
「決まりだな!」
カナが肩をすくめる。
「結局そうなるよね」
ミナが小さく頷く。
「……当然」
リリアが満足そうに笑う。
「最初からそれでいいのよ」
***
帰り道。
横並び。
誰も離れない。
トールが言う。
「なあレイン」
「なんだ」
「最初さ」
笑う。
「無能って言われてたよな」
カナが吹き出す。
「懐かしいね」
ミナも言う。
「……過去」
レインは少しだけ考える。
「ああ」
トールが続ける。
「で、今どうだ?」
レインは前を見る。
そして――
少しだけ言葉を選ぶ。
「悪くない」
一瞬、全員が止まる。
カナが目を丸くする。
「……今の聞いた?」
ミナもわずかに反応する。
「……変化」
トールが笑い出す。
「お前がそれ言うか!」
リリアは静かに言う。
「十分ね」
レインはそれ以上何も言わない。
だが。
歩幅が、自然と揃う。
***
翌日。
掲示板。
新しい紙。
「外部対抗戦」
ざわめきが走る。
トールが笑う。
「次来たな」
カナが口元を上げる。
「退屈しないね」
ミナが言う。
「……上位更新」
リリアが静かに笑う。
「ちょうどいい」
レインは紙を見る。
(まだ足りない)
(だから行く)
振り返る。
全員がいる。
トールが拳を握る。
「行くぞ」
カナが笑う。
「全部取る」
ミナが言う。
「……勝つ」
リリアが一歩前に出る。
「先頭は譲らない」
そして全員が――
レインを見る。
レインは短く言う。
「行く」
***
無能と呼ばれた少年は。
一人では何もできなかった。
だが。
繋げた。
重ねた。
揃えた。
そして――
全員で勝つ形を作った。
仲間がいる。
当たり前のように、隣に。
レイン・クラウスは歩く。
その中心で。
そのまま。
次の戦場へ。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
レインたちの戦いはまだ続きます。
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次の展開も、ぜひ見届けてください。




