第14話 決着
掲示板の前に、人が溢れていた。
「これ、今日か……」
「上位同士、ついに当たるぞ」
ざわめきは期待そのものだ。
レイン・クラウスはその喧騒の外側に立つ。
自分の名前。
最上位チームとの対戦。
逃げ場はない。
「来たな」
トールが笑う。
「一番上だ」
カナが剣を肩に担ぐ。
「いいじゃん、分かりやすい」
ミナは静かに言う。
「……全部出す」
レインは頷いた。
「出し切る」
***
試合前。
控えスペース。
四人が円になる。
「今回の相手」
レインが言う。
「全員が“穴なし”」
トールが肩を回す。
「バランス型の上位互換ってやつか」
「そう」
カナが笑う。
「一番嫌なやつ」
ミナが短く言う。
「……崩れない」
レインは一度、目を閉じる。
(だからこそ)
「やることは一つ」
三人を見る。
「全部使う」
トールがニヤッと笑う。
「いいね」
カナも笑う。
「派手にいこう」
ミナは頷く。
「……合わせる」
***
フィールド。
観客席は満員。
空気が張り詰めている。
相手チームが立っている。
無駄がない。
圧が違う。
「……強いな」
トールが呟く。
「分かる」
カナも同意する。
ミナは何も言わない。
ただ前を見る。
レインは視線を流す。
(崩れないなら)
「削る」
小さく呟く。
「行くぞ」
開始の合図。
***
初動。
ぶつかる。
トールが受ける。
「……っ!」
押される。
だが崩れない。
カナが横から入る。
ミナが詠唱する。
「繋ぐ」
戦術リンク。
三人接続。
滑らか。
だが――
「硬い!」
カナが言う。
「全然崩れない!」
「分かってる」
レインは冷静だ。
「削れ」
トールが押す。
カナが斬る。
ミナが撃つ。
小さく。
確実に。
削る。
「チッ……」
相手の一人が後退する。
「効いてる!」
トールが叫ぶ。
だが。
「まだだ」
レインが言う。
(焦るな)
***
中盤。
攻防が続く。
均衡。
崩れない。
「長いな……!」
トールが息を荒げる。
「でも」
カナが笑う。
「見えてきた」
ミナが言う。
「……ズレる」
ほんのわずか。
一瞬の遅れ。
「今」
レインの声。
三人が動く。
トールが突っ込む。
カナが横から。
ミナが撃つ。
一人、撃破。
観客席がどよめく。
「落とした!」
だが。
「まだ来るぞ!」
残り二人が詰める。
速い。
強い。
トールが弾かれる。
カナが押される。
ミナが狙われる。
「レイン!」
「下がれ」
だが――
間に合わない。
ミナが被弾。
「っ……!」
体勢が崩れる。
数の差が戻る。
「……ここからだ」
レインが言う。
***
終盤。
残りは三対二。
だが均衡は崩れていない。
「トール、前固定」
「おう!」
「カナ、遊撃」
「了解」
「ミナ、温存」
「……分かった」
役割を切り替える。
「削り切る」
トールが踏み込む。
受ける。
耐える。
カナが動く。
隙を突く。
ミナは撃たない。
待つ。
「……来る」
相手が仕掛ける。
その瞬間。
「今だ」
レインの声。
トールが止める。
カナが斬る。
ミナが撃つ。
一人、落ちる。
残り一人。
***
静寂。
一対三。
だが――
油断はない。
「……強いな」
トールが言う。
「最後まで来る」
カナが笑う。
「嫌いじゃない」
ミナが息を整える。
レインは言う。
「終わらせる」
戦術リンク。
三人接続。
今までで一番深い。
「行け」
***
三人が同時に動く。
トールが正面。
カナが横。
ミナが後ろ。
相手が迎え撃つ。
速い。
だが。
「読める」
トールが受ける。
カナが斬る。
ミナが撃つ。
連続。
途切れない。
「っ……!」
相手が崩れる。
一瞬。
本当に一瞬。
「そこ」
レインの声。
トールの一撃。
直撃。
静寂。
そして――
試合終了。
***
一拍遅れて。
歓声が爆発する。
「勝ったあああ!!」
「Eクラスが頂点だ!!」
トールが拳を突き上げる。
「やったぞおおお!」
カナが笑う。
「最高」
ミナは静かに息を吐く。
「……終わった」
レインは立っている。
ただそれだけ。
***
観客席。
評価が完全に変わる。
「本物だ……」
「最初から違ったんだな……」
手のひら返し。
完全な反転。
***
フィールドの端。
リリアが見ている。
その目は――
満足していた。
「来たわね」
小さく呟く。
レインが視線を向ける。
目が合う。
リリアが笑う。
「上で待ってるって言ったでしょ」
レインは短く返す。
「追いついた」
「ええ」
リリアが頷く。
「でも」
一歩だけ顎を上げる。
「まだ上はある」
その言葉に、嘘はない。
レインも分かっている。
「だな」
***
試合後。
トールが笑いながら言う。
「全部取ったな」
カナが肩を回す。
「完全勝利」
ミナが言う。
「……評価、固定」
レインは頷く。
(これで終わりじゃない)
だが。
(一区切りだ)
「次だ」
トールが呆れる。
「まだやるのかよ」
「当然」
カナが笑う。
「止まらないね」
ミナも小さく言う。
「……行く」
レインは前を見る。
対抗戦。
頂点到達。
そして――
次の舞台へ進む準備が、整った。




