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第12話 反転

勝利の余韻は、一日も持たなかった。


朝の掲示板。


そこに並ぶ数字が、すべてを変えていた。


「……おい、見ろよ」


トールが指差す。


レインは視線を上げる。


チーム評価。


順位が跳ね上がっている。


Eクラス最下位付近だったはずの名前が――


中位に食い込んでいた。


「一気に来たな」


カナが笑う。


ミナは小さく息を吐く。


「……認められた」


周囲の視線が違う。


昨日までの嘲笑が、消えている。


代わりにあるのは――


警戒と、興味。


「レイン」


呼ばれる。


振り向くと、上級生が立っていた。


「少し話いいか?」


昨日までならありえない光景。


トールがニヤニヤする。


「モテてんじゃん」


「違う」


レインは即答した。


「情報取りに来てるだけだ」


実際、その通りだった。


「どうやってAクラス崩した?」

「リンクってどんな感じなんだ?」


質問が飛ぶ。


レインは適当に流す。


「大したことはしてない」


「嘘つけ」


笑いが起きる。


だが、もう“無能扱い”はない。




***




教室。


Eクラスの空気も変わっていた。


「なあ、今度組まないか?」

「俺たちもあの戦術やりたいんだけど」


声がかかる。


トールが驚く。


「すげぇな……」


カナは肩をすくめる。


「分かりやすいよね」


ミナは静かにレインを見る。


「……どうする」


レインは少し考える。


(広げすぎるのは危険だ)


戦術リンクは負荷がある。


誰とでも組めるわけじゃない。


「選ぶ」


短く答える。


「全員は無理」


「だよな」


トールが頷く。


カナが笑う。


「贅沢な悩み」




***




昼休み。


中庭。


レインが一人でいると――


「探したわ」


聞き慣れた声。


振り向く。


リリアが立っていた。


Aクラスの制服。


相変わらず目立つ。


「何か用か」


「あるに決まってるでしょ」


リリアが近づく。


距離が近い。


「昨日の続き」


「もう終わっただろ」


「終わってない」


即答。


その目は真剣だ。


「もう一回やる」


レインは少し考える。


「今は無理だ」


「どうして?」


「こっちの調整が先」


リリアは一瞬だけ黙る。


そして、ふっと笑った。


「いいわ」


あっさり引く。


「でも、忘れないで」


一歩近づく。


「次は負けない」


「そっちもな」


短いやり取り。


だが。


リリアの視線は、明らかに前よりも強い。


興味が深くなっている。




***




午後の訓練。


レイン、トール、ミナ、カナ。


いつもの四人。


「次、どうする」


トールが聞く。


「対抗戦、まだ続くんだろ?」


レインは頷く。


「次の相手は――」


掲示板の情報を思い出す。


「バランス型」


「一番厄介じゃん」


カナが言う。


「穴がないやつ」


「だからいい」


レインは答える。


「今回の勝ち方が通じるか試す」


ミナが静かに言う。


「……通じなかったら」


「また作る」


即答。


トールが笑う。


「それな」




***




実戦形式。


新しい相手。


動きが違う。


リリアのような突出はない。


だが――


「固い」


トールが言う。


「崩れねぇ」


カナも舌打ちする。


「穴がない」


ミナの魔法も通りにくい。


「レイン」


「見てる」


レインは観察する。


(均等型)


突出がない代わりに、弱点も薄い。


「……なら」


小さく呟く。


「一点突破じゃない」


「は?」


トールが聞く。


「全部削る」


カナが笑う。


「地味だね」


「確実だ」


レインの声は変わらない。


「リンク維持」


「了解」


戦術リンク発動。


三人接続。


今度は無理に崩さない。


削る。


削る。


削る。


時間をかけて。


「……じわじわ来るな」


トールが言う。


「嫌な感じ」


カナも頷く。


ミナが言う。


「でも――」


「崩れる」


レインが続ける。


一箇所。


ほんのわずか。


ズレが生まれる。


「今」


トールが突っ込む。


カナが続く。


ミナが撃つ。


撃破。


「よし!」




***




訓練終了。


トールが笑う。


「これもいけるな」


カナが肩を回す。


「引き出し増えた」


ミナは静かに言う。


「……次もいける」


レインは頷く。


(対応力)


それが必要だ。


一つの勝ち方に頼らない。


相手ごとに変える。


「これで――」


小さく呟く。


「上に行ける」




***




夕方。


掲示板。


新しい対戦カードが貼られる。


周囲がざわつく。


「おい、見ろ……」

「またEクラスだ」


レインたちの名前。


そして――


相手は、上位チーム。


「来たな」


トールが笑う。


カナが口元を歪める。


「いいじゃん」


ミナが小さく頷く。


「……行ける」


レインは視線を上げる。


(ここからが本番)


評価は変わった。


だが。


(まだ足りない)


完全にひっくり返すには。


もう一段。


「行くぞ」


レインが言う。


トールが拳を握る。


「おう!」


カナが笑う。


「全部取る」


ミナも言う。


「……勝つ」


対抗戦。


評価の反転。


そして――


“上位への侵食”が、始まる。


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