第1話 最弱のリンク
「お前、また何もしてないのか?」
教室に笑いが起きる。
レイン・クラウスは何も言わない。
「支援? は? 誰を?」
「Eクラスの荷物だろ」
視線が刺さる。
だが――慣れている。
(問題ない)
一人では戦えない。
それは事実だ。
だから切り替える。
(なら、勝たせればいい)
その時。
「レイン!」
トールが手を振る。
「模擬戦、組めよ!」
周囲がざわつく。
「マジかよ、あいつと?」
「終わったな」
レインは立ち上がる。
「いいぞ」
トールが笑う。
「じゃあ決まり!」
***
フィールド。
開始の合図。
トールが突っ込む。
だが――
動きが荒い。
(遅い)
レインは一歩下がる。
そして。
「繋ぐ」
トールの動きが変わる。
踏み込みが速くなる。
視線が合う。
「……なんだ今!?」
レインは短く言う。
「そのまま行け」
トールが笑う。
「任せろ!」
一撃。
決まる。
静寂。
「……は?」
周囲が固まる。
レインはただ言う。
「もう一回やるか」
***
「今の、見たか?」
ざわめきが広がる。
「偶然だろ……」
「いや、動き変わってたぞ」
トールが振り返る。
「レイン! 今の何だ!?」
「少し調整しただけだ」
「調整でああなるかよ!」
レインは肩をすくめる。
「もう一回やれば分かる」
「上等だ!」
トールが笑う。
その時。
「面白い」
静かな声。
空気が変わる。
振り向く。
リリアが立っていた。
Aクラスの制服。
周囲が一瞬で黙る。
「今の、あなた?」
視線が真っ直ぐレインに向く。
「ああ」
「何をしたの」
「繋いだだけだ」
リリアの目が細くなる。
「……リンク系?」
「たぶんな」
曖昧に答える。
リリアは一歩近づく。
「もう一回やりなさい」
命令に近い口調。
トールが笑う。
「やる気だな」
「付き合え」
レインが言う。
「もちろん!」
***
再戦。
開始。
今度は二対二。
相手も構えている。
「さっきみたいにはいかねぇぞ!」
トールが笑う。
「それでいい」
レインは一歩下がる。
視界に全てを入れる。
トールの癖。
相手の呼吸。
タイミング。
ズレ。
(全部、バラバラだ)
だから負ける。
「繋ぐ」
戦術リンク。
今度は深い。
トールの感覚が流れ込む。
「うおっ!?」
「前、二歩。次で踏み込め」
「おう!」
トールが動く。
無駄が消える。
「右から来る」
「見えてる!」
回避。
反撃。
一人、崩れる。
「……速い」
リリアが呟く。
レインが言う。
「合わせろ」
「言われなくても」
リリアが踏み込む。
その動きに、トールが自然に重なる。
連携。
未完成。
だが――噛み合う。
数秒。
決着。
***
沈黙。
そして、どよめき。
トールが拳を握る。
「やっぱすげぇな、お前!」
「お前が動いたからだ」
リリアが歩いてくる。
止まる。
レインの目の前。
「今の」
「あなたがやったのね」
「ああ」
「戦えないのに?」
「一人じゃ無理だ」
リリアの口元がわずかに上がる。
「でも」
「いれば勝てる」
レインは否定しない。
「そういうことだ」
リリアが言う。
「面白い」
「あなた、無能じゃない」
***
教室に戻る。
視線が変わっている。
嘲笑は消えた。
トールが言う。
「これ、始まったな」
レインは窓の外を見る。
(繋げばいい)
それだけでいい。
――Eクラス最弱。
だが。
戦い方は変えられる。
「繋ぐだけで勝てる」
その事実が――
初めて証明された。
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