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そして土曜日。
「あぁ~~、遊園地ぃ~、遊園地の声、もう楽しそう~~っ♥ 早く来ないかなぁ壮太くんはっ、もう着くって連絡が……―」あぁ早く早くぅぅ……。
「あぁマズイ………。マズイぞ……マズイ―――」
絶賛、後悔した。後悔しかない。
当然デートだ、頑張って選んで来た服だが非常にやんごとなく戸惑った次第で。
それはカースト最強の輪廻が遊園地の前、かなり気合い入った服で出迎えようとしているのだ。
素体が抜群でソレではもう、駄目だ。何段落ちなんだとオレは。ねぇ……、どうしよ? 光ってるんだよ。
はぁ……、はぁ……、足の底が熱いんだ、同じ場所で立ち過ぎてて、もう。
あっ……あぁーー、ごめん、ごめんねぇ待ったぁ~っ? の一言さえも言い出せない程で。
でも待たせ続けるのもなぁ―――「デートは女の子を待つもんだろう、楽しみだったよ……楽しみ過ぎで44分前に来たんだよぉっ……。でもあれ見た瞬間に逃げちゃったんだ、恐ろしい1軍の匂いだけで俺は……――」
人生初デートでの、地獄の焦燥感、でも絶対に行かなきゃいけない戦い。
横に並ぶという地獄を前に、なんとか勇気を振り絞って、ソウタ200%感出しながら前に立ち……。
俺、オレの腰って、こんな硬かったっケっ。
「あっ、あぁーー。ごめんな輪廻ぇっ、その……オクレタネ、オクレタ――――――」
今日は楽しもうか、タノシモ……。
口が重い。
その目線が痛い。何も考えずに2個以上も上位と付き合うと、本質的にこういった弊害があると散々に、多分宝物庫の中から違うと――。
「あぁ~~…、うんっ。壮太クン遅い~っ! 遅いよっ、もう早く行こうよ、早くぅ! フフフ」
「えっ!? あぁ、うん」なんとかクリアぁっ!?
笑顔で腕を引かれて、少し驚きつつも、壮太はその遊園地へと入って行く……。
「あぁでも輪廻さ……っ、スゴイこの、結構な感じだねぇキミ、あり得ない位のおしゃれさだよ。なんていうか抜群過ぎる位、他の奴らがすぐ気づく位に……――」
「うんっ、頑張りましたぁっ。だってともちゃんが今回は目立つ位で良いって、ギャフンと言わせてけぇーって言うから~、ふふふっ♥」頑張っちゃったぁ~。
でも見られてるねぇ、ごめ~~ん♥ マネージャーさんも来ちゃったしぃ。
あぁうん、あの睨み眼鏡なるのが言った以上は恐らくは、間違いなく嫌味だろう。
オッパイ先輩さんならまぁ悪意はなかったろうが、アレは駄目だ。あのためらいの1時間は悪魔に食われたんだ。
それは白い羽を集めて積み上げたような姿で。少し見れば所々ささくれていて、ただの残骸を集めたセーターだが、彼女ならば天使の積み重ねに見えるから。
ふわりと……、どこか幻想的な少女。無邪気でいて、それでも何かを待つ天使さま。円形で隠す白の帽子をかぶり、天使と言ってしまっては逃げてしまいそうなのに。
禁断でも消されても良い、素顔が見たいと……。
とりあえず気遅れしながらも、それでも並んで来る美少女と遊園地、2人して乗り込むが……。
「へぇ~……。まぁでも、普通の遊園地だよね、ヒトは多いけどね……。一応サイトでチェックして来たんだけど、きっと輪廻の方が絶対詳しいよねぇって?」
「ううん、実はほとんど来た事ないなぁって。でもね、私もね……、もっといっぱい来たいと思ってたよ。こんなの一緒に来れる人いれば良いのにな~って、そう思ってましたっ……」
俺のウデをひしっと抱くから「ずっと思ってた、今日はやったねって……っ♥」
「あぁうん……――そっか……。そうなんだ、良かった……っ。ホント嬉しいよオレも、輪廻じゃあいっぱい楽しもう!」
あぁでも、ホントにすっごい可愛い顔で笑う子だなぁ……………。
なんというかその笑顔。輪廻は女優でカースト最上位だけど、実は本当は全てウブでした。それがぴったりと来る。
可愛い彼女と2人、色々目移りしながらも巡って行く。
田舎の遊園地だし定番の物ばかりだが、友達や家族と違っていて彼女とめぐるのはなんだか……。
「きゃああ!? ヤダ、なんか無理ぃっ。壮太くんこれ……これぇえっ」「うぉおおっ!? 空中ブランコ、すごいね……、スゴイ振り回されるっ」
「あぁ~……、空中のブランコすっごい良かった~っ、首がちょっと変になる位だったねっ♥ でねでねっ、次だよ壮太くん、どこ行く……壮太くんどこ~~っ」
2人して興奮しながら回って行く、春のお化け屋敷にティーカップ。
次は回転木馬かミラーハウスか。それかもう一度ブランコも良いだろうか。
だが輪廻は突然、ソレを見つけると何も考える様子はなく……。
あ、導かれたね。「次はアレ乗りたいよ壮太くんっ。もう空けてくれたんだ、私は乗ろうと思いますよ、乗りましょうっ。じゃあ行こうーーっ!」
おぉおおー!
ひゃっはーとばかりに乗り込む輪廻が大はしゃぎっ!
確かにココだけは人が絶えない、それは最大の花形だ、ジェットコースター。
でもそこそこ待って、階段を進んでいって、それは目の前に迫って……。
「あぁまあでも俺、実は結構ヤバいのある県に住んでたんだよ、有名なさ……、日本で最恐のに選ばれる位のヤツだ」
階段先の受付にカップルかと聞かれ、初めての言葉を照れながら……「し、しかもコッチの地元のアレも乗ってるから結構オレ、制覇してるんだよねっ」笑いながらよっせと安全装置を落とす。
「えぇーーっ、そうなのぉっ!? じゃあ……」舐めないでね……―フフ。
その言葉と共に、発車するのだ。
眉根を上げる、まぁでも、正直少女がなんと言おうとこんな田舎だ。東京からの立地は良いが、いやでも確かに……―。
「あぁいや、でもそうか、普通に考えて田舎の方が土地はあるのか。確かにこの遊園地は妙に横に広かったけど……いや、それはまさか……―」
なんとなくだけど、初手の軽い洞窟のはずが妙に続くのだ、だがとりあえずすぐに下りを迎えそう。もう考えがまとまらない。
それに大体所詮は遊園地だ、それはエンタメなのだと。
そう思ってました――。