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「あぁ~~……、うん――。悲恋だけど、なるほど、結構確かに似ているのかも……。少しなんか、男の人が主導になってて、大人ってだけでさ」僕はコッチの方が好きかな……。

「そうだねぇ、このアイーダもオペラでね~、まるっとグランドオペラっていうスっゴイお金がかかる物なのぉ~♥ 歌もセットも超豪華でぇ、魅力的でぇっ……。でもストーリーだけでも十分なんだよねぇ~」

結構そういうの珍しいよ~、うん~~♥


「そして人物像としても文句ないのよ、だってアナタ……モサいでしょ? でも軍人ならありよ、誠実で大人ですよ。良い対比になれるわ――」「じゃあ~ぁ、分かったかなぁっ? まるっとこれでなんとか切り込むしかないよね、そうだよねぇっ、壮太君っ♥!」

 非常に嬉し気なマイチと最下級を見やる灯火、台本を寄こされる。これを受け取ったらもう、戻れない。いつになく真剣で。



「良いですか――。これオペラだから演技とか2の次なのよ、全ての参照資料が歌唱だけに近いから。アナタまだ演技始めたてです、戸惑いますよ、自分で考えるしかないわ」「ねぇ、高校演劇でね、古典とかがほぼ禁止なのは、年齢的に難しいからなのね……? まずはしっかりとキミは、まるっとその演技に受け答えできるようになって」

ソレってでもすごくすごく大事だよ―――っ。


 それは正直、素人が短時間でやるべきではない話。


 承諾した壮太。そこからは本当にキツイ、演技のレッスンが始まる。

 だが更に……。


「うんうんっ♥ それでこれ~、まるっと高校生演劇だからねぇ~。ある程度優しく見てもらえるけど……、でもアナタが響かせるのはあの大女優だから」「そうですよ、だからね……、しっかり全力の全力で臨んでよ―――」

 そう言うと笑顔でズンズン歩いて行くのだ。しゅーっと髪に吹きかけ。

 どこに行くかと思えば……。


「あぁ~~~、ふんふん、なるほど、そういう事か――。だから僕を選んだと。かなりモテてて女の子にも優しくて余裕があって、そして気配りと配慮があるけど、演技力のないらしい僕に――」

「ふ……ふふ……、そう、そういう事だよ。言う事なくなったわ」

 道井戸 辰斗の目の前。体育館の裏、バレーボールの弾む音。

 3人ががん首そろえて暑い中……。



「まぁ僕は良いけどねぇ。でもあの子は忘れるとは言え、女の子だから。僕が受けたのは気まぐれじゃない、別にむしろ記憶なんてなくても目じゃないさ。彼女のきも」「もう良いのよ、先輩……、大体わかってますよ。じゃあコッチももう、 それは輪廻の唇もそうだけど、なんなら抱かれても良い……。例えそこに関しても緩めます、交換です」お好きにどうぞ――。

「エ!? えェっ――、そんな、、、灯火ィイ!?」だがその言葉に最も驚いたのは先輩だった、一番狙っていた、最大の障害、障壁が……待ってましたという顔で……。

 そこに押し付け――ッ「ただし―――、ただしよ? もしこれで負けたら土下座だわ……。アナタは所詮顔だけだったと、そう言って土下座してもらいますから。コスパよりも勝負です、良いですねっ……」

ねぇ良いハズだわ、おモテになる先輩っ……?


 その殴り込みの台本と言葉に、即座に笑みがこぼれるんだ。



「ふっ……ふふふっ、恋人を前に、しかもあんな可愛い子を差し出しておいて手を出すな、だなんて話は信じられなかったが。だがまぁ少しはましになったと思うよ、しかし賭けにはちょっとぉ………」

 イケメンのその言葉にも苦笑の顔にも、全く取り合わない灯火とマイチには「そうかい、それで……、この台本だけを覚える、絶対に口外しない匂わせない、それだけで良いのか、そっか~……」

りょ~~かい、じゃあ良い勝負をしようっ♥

ネ?


 すると不意に灯火が眼鏡を取った、本気で驚く道井戸 辰斗っ―――――!


 ―――言い切ったとばかりに無言でうなずき、歩いて風を切る。後ろで不満を漏らす壮太に……。



「アナタの現状がこれです、受け止めて――受け止めなさい――ッ」






 顔面蒼白、一気に崖っぷちにされて2日目、それでも全く腕が上がらず足も動かない。セリフを全部入れて想定して来てたが、それでも全く全く……。


「フゥ……フゥ……フゥ……!?ヤバいよ……、疲れるとセリフが飛ぶんだ、本当にしゃべりながらの夏は――」う゛ぅぅ……。

「はぁ……はぁ……、それでは1つの舞台も持ちませんね、間違いないです。ラダメスを演じるべきですが……いや、本当に脇役でも危ないわ。挙動不審、声量不足っ、しかもアナタ小太りなのよ……っ!」

「いや………、平均より少しだけ大きいだけだって、それは……言いすぎ、言いすぎなんだって、ハァ……ハァ……ハァ……!?」「そんなの言い訳にならないでしょう、誰に言ってるんです、それ――」


 そう抜群のスタイルの少女に言われ、立つ瀬がない。


 だが実際、本当にその戦いは厳しい、たった2日練習しただけで分かる。危機感を募らせた。

 やる事がありすぎる いや足らない物が多すぎるのだ。しかも演劇の監督まで実行しなければならない苦痛で……。


「あと……、あと何日だっけぇ……。確か全部のライトチェックがまだなんだ。もう限界までやってるけど……、もう間に合わない気が――」

 不貞腐れてた時間が惜しい、本当にそう思える。もう1日2日で良いからかき集め直したい。部室から抜け駆けしての練習も限界だ、灯火も帰るから。


「私達で昼間は処理しますから……、もう何も言わずに作業しながら演技を見てて下さい、しっかり勉強してよっ……」いや――それでも無理でしょうね――

じゃあさ……、 夜も2人でどこかで練習しますか?

「私女ですしここ以外は無理だし、塾……、あるんですよね……」


「あぁ……そうなのか。そうだね灯火、あの人とじゃ肉戦士に代えられちゃいそうだし……、うん、分かったっ」

あぁあと……、ありがとうね……うん―――。

「えぇ―――。良いでしょう。それでアナタ……、これから休むの禁止だわ。風邪でもなんでも休んだらこの協力は終わりです、相当の覚悟なさいね――」

アイスもかき氷もやめた方が良いわよ~……。


 その言葉に驚き、その背に声を上げるが聞いてもらえる気配がない。

 朝は5時から基礎練をやって発声をして、昼は全力の作業と演技の見学勉強、そして夜は見識を深めて……。



「暴言を吐いたアナタの罰ですよ、全く……面倒ね――。やっぱり素人なのよ、アイツは全然―――――」


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