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「なんです? もう知った事ではないんですよ。アナタ以外でもこちらは構わなかったんです、泣きつかれてもどうも思わないわ――」


 五月蠅いセミ。校舎裏、呼び出された突出の飛びぬけた美少女達は予想通りといったカオ、非常に難色を示して「私もちょっとなぁって……、うん。やっぱり~、笑顔が違うよねぇ~って、思っちゃった。まるっと一度くらいはね、もうね……だって全部遅いんだもん……――」

でも壮太君これも勉強になるよぉ~、うん~~。


「いや、見ててもう分かったんだ、道井戸には敵わないと。確かにこのままじゃ全てが脇役レベルで終わるだろうさ、でもお願いがあるんだ……、ただ、俺だけには演技を教えてくれないか。

だってそれはさ

演技は別なんだろう、アレは本当に主役になれるんだろう……!

「勝てると思ったんだ、この台本を俺で完成させたいんだよ。ナァこれで逆転すれば全てが勝ちだろう……あの女優だって黙らせられるんだよっ。だったらどうしても勝つんだ……っ、はぁ……はぁ……、これまで誰も耐えられない位に頑張る夏じゃないとってっ、そう覚悟もしましたからッッ!」


――。

―――――――。


「あぁ~……、まるっとやっぱりそうなんだ~、まだ諦めてなかったんだぁ……」

「なるほどです、嫌ですね、私達もヒマじゃないありません、、が―――。大いに賛成しますよ」

言ってはならない事を言ったわ、アナタ。

「夏、、やっぱり仕事ないもんねぇ……、私達。まるっと差を付けられてる季節だよ。だって本当はこんな遊びの劇なんてパスしたいよぉ……っ、女優の人生は常に戦わなきゃならない。もう社会が始まってるの、ホントは敵が多いのに――」


 色々な話が業界でも出回って来ている。


 自分の事務所もソワソワだし、芸能仲間だって機敏になる。何せこの時期は新人が怖いし何より恐ろしい。軽い気持ちで渋谷に来た少女に伸びる手、意気込んでオーディションをたたく姿、ツイッターで踊っただけで爆発した美少女に。

 他にもそこにも続々と……。


「日本各地、ドンドンどんどん湧いて来るんですよ、悔しいですが同レベルなんていっぱいいるわ……っ。言いましたよね……、実力ではねじ伏せれない世界、事務所も中堅、どうあがいても甲子園みたいになるのよ――」

さぁ……、テレビを見て、ほら。

 若手の登竜門、そのポカリガールには大手プロの15才新人が使われた――。

 この先30になった、可愛かっただけの女優なんて誰が必要とする? 目の前には16、17、ましてや14からの光輝く娘達がいる。日本から選りすぐりがいるというのに――。


「老いてるよ、私達ってドンドン老いてるの……、まるっと寿命に近づいてってる……っ。この時期はホントに怖いよ、私もまだ16歳でいられるけど……っ、でもあと3か月後は17だもんっ。もう何年もないよぉ――」

「そうよ、そうだわ、あんなに練習して一度の舞台しかないのよ、笑わせるわよ――ふっ……フフフ。女優が何日使うと思ってるの、最低でも5000円よっ、15公演の代物ですからねぇっ……」


 主役になれる力が、演技の可能性がドンドンと削られていく女優達。うなずく。

 例え禁断でも良い、闇雲にでももう走り出すしか――。



「ハァ……ハァ……ハァ……まずはホントに体作りっ……。基礎訓練、走る事っ、キツイな……キツイっ!」

しかも朝5時だってぇぇ……――っ。


 朝っぱらから必死に走っている壮太と、あと女優2人。正直めちゃダサ女性陣は日焼けはミリも見逃さない姿で、養蜂にでも行くのかと。それで薄青い中で5キロは走っているが、だが、あと少しで……。


「アナタは駄目です、ほら5週っ……、あと5週ですよ!」

「えぇぇ……っ、なんでだぁっ。多すぎないかい、2倍以上じゃないかぁ!?」

「ハァ……ハァ……私達はあんまりできないんですよぉ……、何せ筋肉質な女優なんて需要はほぼないんで。でもアナタだけはやればヤル程良いんです、本当にっ――」


「そうだねぇ~……、はぁ……ふぅ~~~♥ まるっと男の人はそこも一つの指標だからねぇ……。もう顔は変えられないんだから、魅力を上げたければそれしかないよ~♥」んぐ……んぐっ、ぷはぁ~♥


 登る太陽よりも早く、その女優は一息だ。そしてその言葉に本当に本当に重い気持ちになる、男には筋肉、まるで呪いのような馬鹿の一つ覚えがここでも……。

「何言ってるんです……? 女は顔と体と、あとムネが変えられませんからねぇ……っ。アンタのせいで輪廻もやってたわよ、さぁ走りなさいよ走ってぇぇっ!」


 その言葉に速度を上げる壮太、何せ彼女らはその間にももう、演技の練習に入っているのだ「ハァ……ハァ……、一番下手なのが演技置いてかれたら、どうしろって言うんだ……っクソぉぉっ」


 朝からクソ暑い中、ひたすら駆ける、陸上部ですらないし、そんなの望んでない、だがそれでも輪廻が見えた――。



 速度を上げるが、だが上げれば上げるだけ筋肉がきしみ。そうして演技を始めるが体がもう既に痛くて動かない。


「ダメ……っ、上がってないっ! すぐ筋肉痛になってますか、全然よ!」「まるっと駄目だよぉ壮太君っ! 立ち位置からズレてるの、どんな時も意識してよ……空間を理解して――、皆がケガするからねぇっ!」

 簡単な舞台あいさつですらシンドイ。


 そしてまずは舞台を知る事を教え込まれるが、だが、それは何より人間の怖さを――。


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