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「ふぅ……、ふぅ……、通したところ、これくらいで良いかしらね、先輩がこうなら絶対に……えぇ」「もう良いんじゃないかなぁ、まるっと少しだけ時間ずらそっか~、うん♥ ちょっと削られるけどしょうがないよね~」
彼専用に物語を書き換える。しっかりと自分達で調整していく女優達、時間を惜しまない。なんと彼をアルフレードに抜擢したんだ。
そしてその女優達が自ら書き換えた膨大なアルフレードの為の優しさを、必死に書かされる事に。1日目からまた地を這うような……。
「監督……っ、ほら監督さん……! 大体こんな感じだわ、また変更すると思いますが、これを判断基準でお願い。じゃあ早く仕事をなさってね」
「いや……、あの。でもこれはいきなりは――」
「うぅん、まるっと今からほとんど変えるかもだよ壮太君っ、だってこれならもしかして……」うん、頑張ろっ――。
その受け取る顔に揺らぎが明らかで、1日目にしてこんな分からされるとは。顔つきが変わる女優達。そして合間に彼は部室で話をしたんだ。
輪廻と一緒はもちろんだが、どうやら彼はネックはすぐに……。
「あぁ、うんうん。やはり2人共演技は最高に上手いよなぁって、そう思ったよ、息が合ってる、フフフっ♥ 君達って長い幼馴染みたいだねぇ……、しかも中学とかでも結構すごかったって聞いたけど。例えばだけど僕が知るあの伝説はねぇ……」
知らない昔話の端っこを突つき、大いに盛り上がる。長い脚で掃除でもするのかと思うほどに足を組み替え。
話は尽きない、彼は交友関係が広くて情報の中心にいる。それは陽キャで且つピラミッドの上辺だからか、いや……むしろ――。
えぇえぇっ、じゃあ一度案内をしましょうか、だって近いですものねぇっ、フフフ♥「あぁでもです、私……、道井戸先輩、一番不安だった演技なんですがが。でも人前が案外慣れてらっしゃいます、何かやっておられましたかぁ……?」
「あぁうん、実は僕はねぇ、中学2年間は生徒会の会長さんやったんだよ。親友の悪ふざけさ……、あれよあれよと会長になっちゃったんだ、あの時は大変だったなぁって……」
あぁでも勘違いしないで?僕は会長になりたかったんだよ
「なりたいと思って迷ってて、その親友の悪ふざけに乗ったんだ。一度試してみたかったっていうその軽さは否めない、でも……全力だったよ。だって失礼な事できないだろう、大変だったけど、でもなんか必死で色々叫んでたなぁ……フフフ」
「あぁ……なるほど、そういう事を……。なかなかできませんね、そういうのは素直にスゴイと思います、えぇえぇっ、それなら安心だわ……っ」
「うん。それから良いチャンスに恵まれたんだよ灯火、色々変わった……。それであと何よりねぇ、実は本物の女優さんとは2度程ボク……――。あぁ言って良いかな」いやでも未成年だったし。
その後し~~っとして笑うのだ、女子受けがスゴイ。
必然に心を開かせるのだ、よく話を振るが輪廻達の言う事の方をよく聞いた。その姿に輪廻までうなずき映画を見ようと早々に約束するんだ。
すると小声で……。
ねぇ、灯火も。じゃあその案内さ、楽しみにしてるよ。忘れてない。だってもう僕らトモダチだから。
「…………――」
きっと順調すぎる程に進んでいる、それは火を見るよりも、すぐに大火事になるがごとくで。それでもあの話ではと必死に俺は――。
「あぁ~~辰斗先輩ぃ♥ 昨日の遊園地良かったですね、楽しかったです~っ。でもだけどビックリしましたよ、だっていきなり食事からデートにするんですもんっ、でもでも……」
とってもとっても楽しかったんだ、私――。
そのはにかみ方は初めてだった、あの天真爛漫な少女が見せるいじらしさ。
しかも壮太が聞いていた話と違っていて、そんなハズが……。
「あぁ僕もだ輪廻。驚かせたろうけど、だってさぁ……、君の私服すっごい可愛かったって。こんな可愛いならもっと遊びたいって振り回しちゃったよ♥ それで実は結構隠し撮りしてて……フフフ」ほらほらほらぁ♥「きゃっ、きゃあぁっ……!?ヤメて下さい、そんなのいつ撮ってたんですかっ、もぉぉぉ……っ!」「いやぁ~~、これは宝だねぇ……はっは♥ でもでもやっぱり女優さんだしぃ、認めてもらわないとだ。ほらほらほら……」
全部見てよ全部、どれ残そっかぁ――♥
楽しかった姿を凝視させる、自分の変顔の写真やらも見せつけながら、ふと腕を引いて――。
「あぁ……―そうそうあと僕ね大事な事、それで輪廻さ……――?」「……――? え――? あの――!?」
――――――――――――!?
見つめるだけの時間をわざと作るんだ、見つめる事で伝えれる強さが彼にはある。その顔が近づく2人にドキリした、昨日より明らかに長い、たった数日でタイムリミットを感じる、まるでカウントダウン――。
「まるっと一応レールがあるけどねぇ……、1ヵ月のリンちゃんでは早すぎだよねぇ、アレ。あの人まさか分かってて……」
だがどうしようもない、汗がにじむ。その紙はずっと100点だけが続いているし。
しかももう既に女優達はそんなのよりも……。
「あぁヴィオレッタっ! 僕は君の事でいっぱいだよっ、これは必然だったんだ、本当の恋だったんだっ!」
「美の炎だよっ……、アナタの美の熱気にあてられ、燃え上がるんだよっ。さぁ乾杯しようかっ……、束の間の時、官能に酔いしれよう。愛がかきたてられる甘い恋の震えの中で、俺の心臓に突き刺さるようなそのまなざしに乾杯っ――!」
「うわぁ~~、まるっと当たり役だよねぇ~っ♥ すっごい似合うの……、これ本格的に演技学んで才能さえあれば~、俳優さんとも競えるようっ!」
「えぇ、納得です。雰囲気から何からもう明らかにアルフレードにあっています。ただもう少し、いやかなりですが……――えぇ、アナタ」
こうやって欲しいのですね、しっかりと手足をダイナミックに……えぇえぇっ♥
その演技を教える動きに、だがあまり上達はしない感じだ、ヤル気もあまりないしある程度で良いという感じ。
それで灯火達も追って来ない。何せ雰囲気はぴったりだろう、ピカイチ。これで演技も乗ればもう完璧だと毎日のように――。
「ふ~~、結構難しいねぇ。はァ……はァ……やっぱり君達を見とくのが一番楽しいや、ねぇ輪廻……」
5日で女優だってその膝の合間にすっぽり収めてしまう驚き。
「あぁ、はは……、辰斗先輩、やだぁ~……。もうホントに見るだけは禁止ですよ~、なんか辰斗先輩すごいんですも~ん、フフフ♥」
「あんまりイチャイチャなのは困りますよ道井戸先輩、2人っきりでして下さいな、何せ輪廻が可愛そうだわ」顔真っ赤じゃない……フフ――。
「2人っきりぃ? いやぁ~、まぁ、でも?楽しいじゃない。輪廻も友達がいた方が絶対良いと思うんだ、それにさ」
輪廻だけを見つめ―――――――――。「まぁ、、大丈夫だよねぇ~。何せ後でゆっくりじゃないかな~って、フフフ」
その見つめただけで、輪廻が真っ赤になっている、後で何されるの私~~――っ、って感じ。
でも応えない、明らかに楽しんでいるだけ。そして何より誰の前でも堂々とイチャイチャできる才能――。
「……――」
帰り道、あの前を歩く4人はずっとずっと、仲良く談笑している。
ただもうほとんど話しすらしてなくて、さすがに……。
「あぁあの……っ、輪廻。あの輪廻………」「あっ……。なにかな なにかなっ、戸北くん。あの……っ、でも仕事ありがとうね、台本いっぱいいっぱい……。助かってますっ♥」
輪廻の笑顔。
ただその時、言う事は特になくて、その事に気づいて。考え付くのはただただ……。
「あぁ、うん。それでどうかな……。僕が選んだ恋人、これで良かったか……」
――。
――――――――――。
「あ……――。えと、あの……っ。うん―――」
悲しい顔をするだけだ。
「じゃあ輪廻~~、行こうか。じゃあ約束の2人っきり、帰りには何しようかなぁ~フフ♥」
あぁえと……先輩…… 「あんまり恥ずかしいのは……。でもどこ寄るんですか、先輩は物知りなんで……っだから歩くだけでも嬉しいです私、ふふふ♥」
あぁ~……、アレわざとだねぇ~、マルっとあぁいうのまでやるんだ~
マイチが降りて来る、俺の隣にそっと「あぁいう2人っきりの世界って感じのね……。アレで色々問題起こしたんだろうなぁって、フフフ。普通のコミュニティじゃあ断トツなんだろうな~~、って……」
2人は灯火とマイチを残し、別の駅で降りる約束。わざわざ友達の前で消える姿にマイチでさえもうなる。
「あのね……、壮太君? さすがにキツイよねぇ――。丸っとなんであの人呼んだのかなぁ……。あの、色々あるけど、先輩さんホントに分からないよ壮太くん……っ」
「いや………、分からなかったんだ。でも良いよ、うん――」
そのまま駅のホームで遮られるから。
ただ残ったのは、赤い世界で楽しそうに手を握りあう、世界一可愛いと思った笑顔の少女の姿。電車の殺人的な風圧で遮られる、見る事すらもマブタの中だけで。一人。
「良いですよ、ほっときなさい。もうせいぜい使わせてくれればよ……。輪廻にも言ってあります、その点の礼儀だけは認めますから、戸北 壮太……」
良かったわよ、むしろ……、フフ――。
「うー…ん、まぁそうだよねぇ……。まるっと確かに私達、何度か見て来たよねぇ~……。でも今回は恋愛の初心者さんだって……、それを私達が審査するんだもん、ちょっと厳しかったって思ってるの」ただね……――?
ただ……? マイチが首をかしげる姿に灯火は……。
「ううん。でも丸っと私の思い過ごしだと思う。ただただ走らなきゃだったね……、まだヤレル子だったら良いなぁって私は」




