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 そしてある日は4人で一緒に出掛けると言われ、その田舎の坂を下っていく。はしゃぐ制服の女優達を1人追いかけて。


「きゃああ~~♥ 見ててねーーっ、戸北くぅんっ。これからCMの撮影だよーーーっ!やっっほーーい♥」

「あぁ~~~っッ♥  まるっと私ぃ、CM久しぶりかもぉ~っ。しかもチョイ役じゃないなんて初めてーーっ♥」

私も私もーーっ!

「良いです――。良いですよ……フフフ。ホントにCM出演と聞くとゾクゾクしちゃう。なんとしてでもローカル魂を見せてやりましょうねっ、おぉおお!」


 そして最後は3人、地元を代表する女優の卵としてCMをもらえていたんだ。思わぬ形で壮太は目にする事になる、その女優達の仕事。

 関係者枠でねじ込んでもらうが……。


「ふふっ、あははは♥ もうヤダよ~、トモちゃんそれ……言っちゃダメな奴ぅ」「まぁでも、ちょっと思いますよね……。この田畑って確か井形さんちの……」「あのねぇあのねぇっ……、あの人は地域の黒歴史担当だからぁ、マルっともうダメなのぉっ」


 そこは田舎の風、何度も受けた、何も無い場所。何も魅力がなかった無人の駅。

 だが綺麗だ……本当に本当に綺麗だ。

 どんな時も撮られている、見られててもソレを気にせず、むしろ対話するような顔と親しみ。


 カメラを人だと認識する力、笑顔や怒った顔に、親愛――。

「いいね――。この3人は強いよ……―強いんだ、コレは良いッ」

 カメラマンでも力が入る、3人一緒。


 その時暑い風が吹いた――。


 麦わらが飛ばされて、その美少女達は笑顔だ、だがそこで一番驚いたのは―――――――。



「……――」

 暑い暑い夏の夜、テレビ。

 ローカルCMで3人が笑顔で宣伝するのを見て、何かすっごい気持ちが止まらなかった。








 そして時が来る。


「それでね……戸北くん、この舞台で大事な大事なお願いがあるの――」

 神妙な面持ちの輪廻。それは。

「椿姫の相手となる男性役を頼みたいの、だからキミを首にしたいんだ」

 それは、突然の事だった――。

「それでね……、相手役になれる男の人、連れてきて欲しいのね……。私の相手が務まる男優さんがね……、それは……うん」それが早急になのね………―。


 その言葉に、胸がつまる。


「あぁあの……っ、男役が欲しいのかいっ。じゃ、じゃあ、俺が……っ。俺が演技するよっ、それなら良いだろう輪廻!」

「ううん、ごめんなさい……本当にごめん………―。でもあんまり私達が言ってもね、気分悪いだろうし、とにかくお願いしたいの……戸北くん」

「いや……………いやいや、、そんなの言われても困るよ、意味が分からないんだっ。むしろどうしたんだって突然……――っ!?」

 本当に意味が分からず、その輪廻を前に右往左往する壮太。だが……。


「あのですね……、このマネージャー、しかも専属ってのは最低でも演技に応えられる人間性が、もしくは演劇を楽しめる深い感情があるべきなんです。あとそれか……、突っ立ってるだけでも人目を引ける男か――」

どちらかですね。

「壮太君のソレは……、無理なんだよ。まるっと女優の魂が受け付けない。選べるのにキミじゃきっと……そう、古典でこの程度じゃ多分ね、別の人を要求するのね……?」

 結構意見を言うらしい女優の魂。

 足りない部分を要求するのだ、彼女らはそこに全く容赦などない。


「あぁ……、あの、どうしてもダメなのか。頑張るよ、俺なんとかするからっ、今からでも本気で俺はっ……――!」

「駄目ですね。全くアナタ向いて無いんだわ。メインを張る魅力なんてとんでもないし、演技にも部活ですら積極的じゃない。あと何より輪廻の扱いもイマイチなのよ――」

「だ、だけどこの劇にはキスが含まれてるんだぞっ、そんなの了承するわけがないだろうっ!? なぁ……俺は好きだから引き受けたんだぞ、記憶がなくなっても我慢して俺は……ッ!?」


 でもしかし、だが――、それは恐ろしい程の静寂。

 プロに囲まれた哀れな男は……。



「はぁ……はぁ……はぁ……、はぁ……――!?」「諦めて下さいよ、アナタはね、元から女優の為の栄養分――。そういう事だわ」

 だがさすがに、いたたまれなくなって出て行く。足早にその場から……っ!


 バタンッ!

「あぁ~……、マルっとやっぱり厳しいんだよねぇ……。色々リンちゃんの壁はあるけど、コレは本当に……」

 沈痛な顔でマイチ先輩が頭を抱える。


「いえ、気づかないのが馬鹿なのよ、むしろ私達をなんだと思っているのかと――。ほら……だから言ったじゃないですか、雑に死んでってワタシは」

 見送った女優達、輪廻は眼を閉じて――。


「クソ……っ、なんだよ、なんなんだよ……っ、クソクソクソっ!」

 涙以上に怒りでもう体が収まらない。こんな仕打ちを受けるとは思ってなかった。

 ここまで非道なのかと……ここまで何も考えてくれないのかと……っ。

 それは何時間経っても心は晴れない、何時間経ってもメール一通来ない。ドンッと改札を通り過ぎて電車では両手でひじ掛けを握って微動だにせず、もう……、力を抜くのも。でもご飯も食べずで、何度も布団を蹴って。


 そして闇になった世界でポケットで鳴ったのは……。



 アナタ抜きでするわよ。そしてもし終業式の時までに相手を見つけてなければ……――。


 その言葉だけだった。

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