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「アッアッ……、まるっと本当に来たっ、いらっしゃーーいっ! めずらしいねぇ~~♥」


 そこはなんの気なくて、思ったより普通の映像で困る。

 むしろ薄暗くてムードもない、ただの部室で。


じゃあ始めるよ~~っ♥

『こんにちは、せーのっ、映像部で~すっ♥』

 いえーいとばかりに、高校生らしいノリで乗り出してくるのだ、何か今までのテンションより遥かに庶民的。


 むしろこんなボロい感じでも詐欺を行う奴らいたよな、等とよぎるが。ただでも。


 だが今はそれよりも――、そんな事よりも――――――。


 あぁ………なんだ、この子どこかで……はぁ……はぁ……。頭がなんか、訳分かんないけど「すっごい可愛ぃ―――」

「さぁさぁ、ようこそですっ♥ では初めましてですねぇっ! 私がかの有名でぇ……、そしてっ、可憐で可愛くて演技派な。はいっ! 今をときめく大女優で~~すっ!!」ふっふーーっ!!


 元気に言ってはいるが、だがその恥じらいの顔がたまらない、本当に真っ赤でコッチが逃げ出したくなる程で。

 決められていたのだろうポーズをキメつつも、フルフルしながら長い髪を揺らす美少女。


 それは誰もが理想とするだろう、無垢で奇をてらう事なく真っ直ぐで、力強く朗らか(ほがらか)、女の子として王道無比。

 透き通る茶色の髪が揺れてて、その女の子らしいシルエットを極めた体が美しい。

 細くてもしっかりとしたオッパイ、ふんわりした空気感をまとったダントツの美少女。笑顔が眩しすぎた、柔らかいのにまぶし過ぎるんだ。


 ワンランク上じゃない、明らかにカンスト女子が待っていたんだ。



「ねぇねっ、まるっとここに来たって事はぁ、お仕事志願だねぇ~。ありがとーー!」「あー……、本当に嬉しい限りだわー。アナタのような方でも大女優とお近づきになれるとは……、ホント良かったですねぇ――」

不釣り合いでもなれますよ。ラッキーラッキー……。


 約一名、トゲのある言葉に眉根を上げるが、ただ「えと……、あぁあの、大女優って事は、本当にキミ……なの? あのまずこれって何かな?それかやっぱり何か勧誘目当てで……――」


「えっ? アッ、あぁ~~……、なる程~。まるっと違うよ~、フフフ♥ でもそっかぁ、君は確か帰って来た壮太君だったねぇ」

「そのようですね……。言っておいたはず、彼がそうよ輪廻、転校生のなんとか壮太。ですよね?」

あぁはいはい――、アナタはあまり触らないでよ―――。


 3人の少女。それが近づいたり遠ざかったり、なんだか追い払われながらも、その可愛らしい1人から目が離せない。

 じゃあマネージャーさん歓迎!のその紙をどうするか、やっぱり上げた、いや下げたな。イラついたのかさっと黒髪が撤収させる、あーん、なんて言って。


 すると大女優さんが仲間に急かされて、恥ずかし気に髪をいじり……何も分かってない俺に説明を始めるのだ。


「じゃあまた初めましてからしたいです、聞いて下さいね。私の本名は義臣よしおみ 輪廻りんね、そして女優名は義臣 年輪ねんり。今をトキメク可愛い女優さんなの、一応プロですからぁっ。それでねそれでね……、アナタはそのマネージャーになれます、これは、私専属で大変な仕事で、あとあと、い、異性の方が良いです、これはその……私の、理由で――」


 大汗を拭う、目も合わせられず、それでも精一杯で仲間に小突かれ震えて手を取り「学業を共にしましょう、楽しいがいっぱい欲しいです私っ。友達が欲しいんです、色々出かけたりしたいんですっ、それがこの募集なんですねっ!」

 顔真っ赤っ赤―――。


 いや、俺もなんだけど。その義臣 輪廻。彼女は鮮烈な笑顔を残す。


 大きな目と、そして健康的な四肢の躍動。

 見た瞬間忘れられない程の無邪気さと、浴びる程放たれるような良い匂い。ハニカむ姿が異様に可愛い抱きしめたくなる。

 彼女の隣に自動的にいれると言うのだ、その言葉に未だに信じられない。すると、その隣にいたギャルっぽい女の子も……。


「じゃ~あ~、丸っと丸っとぉ♥ 私も自己紹介しとこうかなぁ~っ? 私は2年の屋形田 マイチ(やかただ まいち)だよ、この映像部の一番年上の後輩やってま~すっ! マイちゃんさんとか~~… こーはいセンパイっていうと私なのぉ~っ♥」

……では、はいっ♥!


――。

―――――――。


「えっ、あぁ私です? 私は………―。ふぅ……。まぁ良いわよ。1年の高鷹こうだか 灯火ともしび。でも必要ないでしょう? とりあえずソッチの輪廻を、無料でそんな可愛い子と付き合えるんだわ、集中して下さい」

良かったですねぇ――。


 輪廻の左、髪は綺麗な金色でボブカット、ギャル感と無邪気さが混同するムッチリ美少女。

 彼女が屋形田 マイチ(やかただ まいち)。


「まぁですが……、約束とは言え、そういう感じだわね。コレも来るんだろうって感じですよマイちゃんさん、とりあえずはまぁ……―」良いのね?  本当に?

じゃあ一定期間だわアナタ――。


 そしてなんとも横柄で、上から目線で見つめてくるのが高鷹こうだが 灯火ともしび

 いや、この2人は学年逆じゃないか……? 眼鏡をかけてても分かるその眼ヂカラで黒髪。

 そうしてくだんの 義臣 輪廻。その3人で映像部だった。

 求めてるのはでも彼女だけの専属マネージャーだという。


「それで改めて壮太くんっ、なってくれるかなぁ、是非是非ぃっ♥ これは私の話相手だけでも良いんだよ、他の面倒は一切ないですっ。でもまぁ……確かに?私の専属さんだもん、この映像部はね~……やっぱり付き合って欲しいのはあるけどもだ」

でも任意だよ……、全然良いんだよ

あっ、でもまるっと私は仲良くしたいなぁ~、ね~~♥ ……――――。

「フフフ♥ でも本当に私はキミと友達になりたいよっ、それだけでっす♥!」


「いや、でも……、それだけって言われても……―」


 S級の笑顔がそそり立つ、かなり胡散臭いと思った。

 この頭3つは飛び抜けた可愛い女の子に、一切なんの告白もせず、また難しいトライアルもなく近づけるなんて現実――。


「分かります分かります、そんな感じですよ、普通は……。あんなちゃっちぃスクールカーストどころか、プロの女優になんて僕はあり得ない、もったいないなー……って」それはあまりにもよね。

 するとそこにこれ見よがしに、彼女の、義臣 年輪の公式プロフィールを見せて来るのだ。確かにでも書いてあるから。可愛らしくはにかむ笑顔で笑い、結構有名な3枚目俳優さんの横の少女は。


まぁまぁトモちゃん……っ「まるっとでも、ほんとにデメリットはないんだよ、業務もだってねぇ?リンちゃんの親友の方が近いかもだねぇ? そういう要素なの~」

「う、うん……。少しだけね、少しだよ。少しだけ……、また知りたいの人を」うん――。

「フフフ、そうそっ、コレで勧誘したりだとかは絶対、特定の――、あっあっ、でもでも、私も応援クラブあるのねぇっ、ねぇねぇ良ければどうかなぁ~って! 色々あるよぉ、きっと私の事も、あと事務しょ……」

あっっ、、あぁぁ―――――。

ごめんごめぇぇん♥「とにかく私達は求めているんだけだから、この義臣 輪廻、彼女の付き人さんをぉ!」


 それに輪廻が笑って困りながらも、仲良いらしい2人のやりとりに苦笑している。

 なんとなく騙す気配はなさそうだが……。


「あぁごめん……なさい、でも何か限定とかないんですか?募集ってその……、ホントの芸能人さんですよね、付き合うのに約束事とかは?」

「普通で良いよ、ワタシ普通が良い――。限定とかもホントはね……ないのね。それでもし続けてもらえるのなら続けて欲しいんだよっ、ホントにホントにずっとだよっ♥ ただ」

それは私と向き合う胆力があったら だね……。


 その言葉に眉根を上げるが、だがまぁなんとなく理解できる気がした。

 女優と銘打っているのだ、しかも大女優。


 世間一般でのイメージ通りの子なのだろう、全くそうは見えないが。

 そして、返答を待つ様子で。多分ここは自分が動かないと進まないんだろう。



「じゃ、じゃあ………」でもなんだか女の子達の前で恥ずかしくて偲びないが、だが、目の前の義臣 輪廻を見て……。

「はい……頑張ってみます。俺なんかで良いなら……、義臣 輪廻さん。君のマネージャーに俺がなりたいんだよ、はいっ……!」

「わぁぁっ、ありがとーーーッ♥」


 すぐに手を伸ばしてしっかりと握手してくる輪廻さんは「じゃあこんにちわだね、戸北 壮太くんっ! ワタシ義臣 輪廻だよ、輪廻って呼んでねぇっ。じゃあ私はなんて呼ぼうかな~~どうしよっかなぁ~」フフフ♥


 まずはメールと電話番号の交換から始まる2人、それはもう契約した校内マネージャーらしい事。

 楽し気な彼女が親友たちとはしゃいでるのを見ていると、ぶいっと指で作って、それで目を逸らしちゃうんだ。気恥ずかし気にしてくる。それはだけど本当に初めて恋をするようで、心が今も――。


「あ、アァうん、色々ありがとう、よ、義臣さん、あぁ……いや、輪廻で良いんだね。じゃあホントによろしくね輪廻っ。じゃあさ、メールとかもそうだけどね……、俺今このアプリ使ってて……」

 気恥ずかしくてたまらない、だってこんな美少女だし初めてだしって……。

 そしてひとしきり終わると、確かマイチという少女が笑うんだ。


「うんうん。それでねぇ、まずはマルっと期間だけどねぇ……、後たった1週間で講演だから、次の月曜日だねぇ。今回は15分で行うロミオとジュリエットだよ……っ、じゃあひとまずはそこまでだ壮太君っ♥」

「1週間の我慢ですね。それででも……、1度引き受けたらヤメるのは無しだわ、まぁ……――、ないでしょうけど。絶対にアナタならそっちは」

そう、そっちはね……。


 その眼鏡女子の言葉にうなずく、あとの2人よりかは親近感湧く感じの黒髪の。

 期限とされた。それでも今は何よりも恐ろしいほど簡単に手に入った彼女の番号、そしてその笑顔、その手のぬくもり……。俺の名前を呼ぶ目の前の大女優、義臣 輪廻。


「じゃあ、今日から本格的に友達、それでマネージャーだね、戸北 壮太くん! 義臣 輪廻っ、たくさん楽しもうねっ♥」

 だがその言葉を響かせる彼女達の顔は何か、とても深く、重い何かを含んでいた。

 とりあえずちょうど授業が始まるので壮太は部室を出るのだが……。



「まるっと一週間……、かぁ。そんなに短くて良いのかなぁ、無理しても良かったんじゃなぁい~? だって多分彼ってぇ………う~ん――」

「それはでも、傷は浅くて済むんじゃないですか。もしかしたら気づかないかもですし……」

 その言葉に一瞬、涙を浮かべる輪廻。

 だが彼女は決意するよううなずくと……。


「でも来ちゃったねぇ……、まさかマルっと本当に予告通りになるなんてね……」

「うん……。でもあの様子だと知らないんだよね……? それとも今回は……、知られるのかな。あと私は何回だろう、耐えれるのかなって……」

「もう限界なの? でも諦めたって駄目よ輪廻、せめてもですよ――。真相知ったって辛いだけだわ、どうせどうしようもないんだから」


「うん……。知っても知らなくても、輪廻ちゃんの運命は変えられないよねぇ……。もうマルっと同じなんだよ、支えるのは難しいよね」

少しだけ遅かった……、かな。


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