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 その後、彼女とまた一から始まる恋のストーリー。



 部室も今は、輪廻が持ち帰って来た撮影話と、あと業界の話とかで盛り上がるだけ。一応女優は今も緊急の呼び出し、リテイク待機ではあるが……。


「少しお休みしないとだね~~♥ 身が持たないもん。あぁ……でも買ってよかった、ホント美味しいよねコレってぇ」

 色々とお土産やお菓子を食べて、話し合う。

 かなり疲れてたらしく輪廻はダラダラとし、よく喋りよく笑い……。


「ねぇねぇともちゃんにマイチ先輩っ、さすがにそろそろだよね、衣替えしよっかぁ~」「そうだわね、もう7月よ、暑いわ……暑過ぎぃ」

「でも昨日は楽しかったねぇ~……お泊り会ぃっ♥ それでそれでぇ、まるっとどこで買ったのぉ、あの香水はぁ……っ、ねぇ~~」

 女優達は大いに遊びに行った、本当にスケジュールがぱんっぱんなのだ。


 でも俺の方は、朝の2人での登校もお昼ゴハン一緒も、そして学校ですらもすれ違わなくなるのだ、ずっと部室で入り浸るから。全部全部がおあずけ。

 ただある時……。


「ね、ねぇ……っ、映画を見に行こうか輪廻……、あぁいや輪廻さんっ。夕方からはモモンガりゅーちゃんさんの格闘ショーを観に行くんだったよねぇ……、もしかしたら暇かなって、丁度いいだろうって」ねぇどうっ?

「えぇ……? 私できれば水族館が良いなぁ……。こんなにも暑いとねぇ私泳ぎたいよ、もう暑いのでお魚に泳いでもらおうって思いますっ!」


「あぁ良いな良いなぁっ、泳ぎたいよ俺もっ、じゃあ水族館行くかっ……」


 ふと2人きりになった帰り道、アイスクリームを眺めながら笑う俺は。

 当分は何もなかった、何せテスト期間があるからだ。その間は芸能会も事務所も、あと何より本人が自重する。

「じゃあ楽しもうね輪廻さん、水族館!」「もっちろんです、よろしくねっ、戸北君!」

「うん!」

 最高にうれしい、こんな簡単に……「ねぇでも、やっぱりさ、記憶に残る部分って頑張ろうって思うのかな? 今はもうめいっぱい遊びたいって感じで、眼がキラキラしてるけど輪廻さんは、ふふふ♥」


「うん、そうだよぉ、今はいーーぱい夏を感じたいですっ。面白いのが良いね♥ あとね……うん、実は少し……どんな人かも気になってたから私……」

 その言葉に顔を赤らめる2人。輪廻で良いよって。

「そう……なんだ。良かった――。良かったよ、うん――。でも輪廻……、その消える部分ってどういう形になってるの? やっぱりそこを知りたいんだ俺、多分今だからこそ……ね」


「あぁ……うん――、そうだよね。でもあんまり感覚ないのね、記憶が無いっていう感覚自体が。ただ何事もなかったみたいな、全ての喜怒哀楽が薄いっていうか、うーーん……」

SNS会議モードって、言うのかなぁ……

何を言われても、何してても絵文字もないの、良いねもないよ、それはただただ流れて消えてくだけ

「舞台から遠くなるとほとんど聞こえない位になってね……。女優さんが満足しないとって思えてくる、イイネはそこだけなの、そんな感じになっちゃう」分からないよねぇ?


 その言葉になんとなく、違和感と、あと思っていたのと少し違った。


 だが確かに一瞬で戻って放り出されるならばもっと混乱があって良いハズ。そして能力のその間はほぼほぼヒトの詳細が気にならないのだ、まるでネット会議で。現実の表情を見るのでは大違いで。


「そっか……あの、でもそれってどんな」「あぁ~~っ♥ ねぇねぇ、まるっとさっきねぇ、こんなの貰ったよぉ~。お祭りの割引券だってぇっ」「あっ、それすごーいっ、マイちゃんさん私も見せて見せて~~♥」

 マイチ先輩達に紛れて、彼女はすぐに埋もれてしまう。そのまま別れる事になった。ただ小さな小さなチャンスは残せた、コブシを握り……。



「アナタ……、あいつとまだ付き合うのかしら? 明らかに分かってないじゃない、3回目ですよ――」

「でも良いんじゃないかな~って、まるっとリンちゃんの意見を尊重するよぉっ。ただ……うん、確かに3回目だよねぇ? しっかりとしたチャンスはもうね、そう何度もないとは思うの私」

 その厳しい顔と言葉に、輪廻は迷うが……。


「うん――。でも希望だけは持っときたいかなって……。あの言葉、本気だったら良いなって私……」

 輪廻は空を見る、ぐずついた雲。


大体裏切られるよね――。








 そこは水族館の前。まだ暑い場所、日光がキツイ、でも我慢!

 その青い海をイメージした建物の前、小さな魚を探してて。だってココすごい良さげな待ち合わせ場所だから、写メ撮りたいよ、二人の写メぇ……。

「あぁ……ふぅ、よしよし……。それで今度は堂々と待っていような、大丈夫だダイジョブ、、フゥ……フゥ……」鏡で何度も姿をチェックする壮太くん。


 それはしつこく写メしてかなり嫌な顔されたが、しっかりとした灯火公認の着こなし。ノレンに5分で北斎から10分にパンプアップしたものだ!

 でも陽射しが暑いなと……、せっかくのTシャツがへばる。なるべく陰で待ってるが。するとやはり結構な美少女が走ってきてて……。


「アッ、戸北くーーんっ! はぁ……はぁ……、待たせたねぇごめんっ。うんっ、じゃあ行こっか行こっ♥」

 分かっていたが、そのまま水族館へと入る、あまり反応はされなかった。

 ただ一番最初の時は実際は輪廻が引いていたと分かったのが収穫かもしれない。灯火の嫌がらせが止まった事もその証左なのか。



「とりあえず~、私はイルカが見たいで~すっ、イルカですイルカイルカ――! あうあぅぅっ♥」

イルカイルカイルカぁぁ……っ!

 ラッコとオットセイの混合種のような、元気だ。暗くほのかに青いトンネルをひたすら邁進し、輪廻はそのヌルっとした水中の豚を眺めて大はしゃぎ。

 イルカショーは当然見るし、まるで推しのライブのように人形を振っちゃう美少女。でも触るのは泣いて嫌がる無垢な姿。


 ただ俺が触ったら手をニギニギされた――。ひたすらに。ひたすらに。


 その後はゆっくりと魚を見るが、思った以上に水族館が楽しい。


「わぁぁ~~っ、やっぱりペンギンさんはおもしろ可愛いよねぇ~……。なんかこれってね……、なんか、そう。走るの子どもみたいな真剣さあるんだよねぇってっ」「分かる分かるっ、それ分かるよ輪廻ぇ。あと何気に飛ぼうと画策してる時とかも可愛いよねぇ、キミら進化って、その翼……って、フフフ」


 2人で見て回るが、涼しい感覚、綺麗な水の中を2人して歩いて行くんだ。確かに女優だ……、夏なのに7分袖で白が浮き立っていて、闇の中だと妖精のようで、ジュゴンに好かれ。幅広の帽子は少し子供っぽく見えて、でも何気ない服なのにこの可愛さは……。


「あぁ……、最後はラッコだね……。あぁ~~楽しかったぁ! いっぱいいーっぱい見れたねっ、戸北君っ!」

 大体を見回った2人、そうしてオマケのような小さな水槽の熱帯魚を見ながら一息つく。


 クーラーも効いてて心地良い興奮だけが残る場所で、するとココしかないから……。


「あぁあのさ……、輪廻。まだ俺が……、次もまた彼氏で良いかな。義臣 輪廻さん。俺はやっぱり彼氏がしてたいよ……、またこういうのしたいんだっ!」


――。

――――――――。


「そうだよね。頑張ってくれてるって聞いてるよ。だって私、あれ……、ねぇ部室ってこんなだっけ……?って、こんな綺麗なのあの2人な訳がないな~って、ンフフ♥」未知の姿にびっくりしてたんだ~~♥

 その笑顔は気さくで飾らない、確かにあの時見た輪廻のままだ。

 でも2人っきりだと照れ方が妙に大人っぽかった。


 ふと、彼女は真面目な顔で……。


「でも3回目だよ、それは……大丈夫ですか? 多分もうきっと、負担がスゴイと思うんだ、私知ってるんだよ……私自身の重さは。いっぱいいっぱいなんだって……」

きっともう潰れちゃうんだ――。


 その言葉にチラリと見やる財布、本当にもう限界まで来ていた、たった2ヶ月でじり貧にまで到達した。

 正直何度か同じ言葉が並ぶ事にも嫌気もさした交際。

 だが……それでも前に進む。うなずくんだ。


「そっかぁ……、、、うーーん……――」


 その後、しっかりと付き合う事に。それは専属マネージャーとして。

 そして隙間を縫うように彼は輪廻との時間を探した。家に帰ってもひとしきり写真の見せあいで時間が過ぎる初夏。

 次はどこに行こうかと問えば、やっぱり遊園地か、それか映画か演劇か……。


「確かに無尽蔵に近いな……、本当にアニメの中みたいにバンバン楽しいだけを追求できるんだ。記憶が飛ぶからかな、開放された感覚なのか、でも……」

なんとしてでも行きたい――。


 その増える写真、彩る世界。笑顔の輪廻に彼は思う。



 ただ……親には蹴散らされたが――。


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