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 そして輝く土曜日となる。暑い。もうそろそろアスファルトが冷たさを主張しない、弱火で上がるあの臭いも消えて。照り返しと熱気が始まる6月中旬。

 何より警戒はしていたが、このオンモールは普通だ、普通なんだと確認。


 一安心しながら待っていれば……。


「は~い、来ったよ~っ♥ まるっと魅力的なお姉さんがねぇ、付き合ってあげるからぁっ」

「はぃ……ハイ、良いですね。とりあえず20点です――。良い感じにこれ、かなりかかりますよ……、えぇもう分かりましたよ……フぅ~……――」

 20点モブの目の前、まぁ恐ろしい程に可愛い、度肝抜いてしかるべき私服センスの2人が並ぶ。


 だが恐らくこれでも適当だろうか、輪廻も良かったがこの輝きはあなどれない力で――。


じゃあ今からモブ寄りの男の子、戸北 壮太君を大改造だぁ~っ♥

「はいはぁ~いっ、ではまるっと予算額をどうぞぉっ!」ぷよよんっとオッパイ揺れる、ツナギだけかと思う程の肌の威力でっ――!

「あぁえと……、7000円って言ったら灯火にぶっ飛ばされそうで、大空の王者モモンガさんの圧に負けて1万8千円になりました……」あぁその、無性に柔らかそうな……。

「よろしい――♥ まるっと夏だからって手を抜かないよ~っ、冬に比べれば買うもの無いけどまるっと買うんだよぉっ――」そして陽射しを避け、すぐにさっさと2人してモールに入って行く。追って。



 そこにはたくさんの店が、モール独特の静けさと安心感。白とクリーム色が安定する事で映える他の色味。変に呼び込みもなく、だがしかし……。


「あの、でもこれってさぁ………、バーゲン待った方が良いんじゃないか灯火。さすがに1着くらいの上下あれば……って、その程度なんだ、7000円くらいで。なんなら上だけでもって俺はさ……っ」

「でも何も持っていないのでしょう? アナタそれとも1年の夏を捨てるつもりですか? 私達は生涯通して買ってますし良いのだけれど、アナタはストックないはずだわ。ソレ……、その恰好で2か月――」

フフフ――。


 横目でコッチを見て冷笑しながらも、さっさと指差しながら決める灯火は。マイチもうなずき、入るという様子で後をついていくが……。


「まぁでも、普通に2回は買いたいですよね……、マイチ先輩。常に流行は追い続けるわよ、例え春と秋は最悪我慢できても、夏と冬は駄目です、入り口から臨まなきゃですよ」

あぁ、まぁ~あ? アナタが1年後には姿を消すというのは、分かりますけど~。


 正直言おう、ムカつく。ただ問題が店員がすぐに寄って来たのだ、しかも少しだけ雰囲気が違う。

 ターゲットであるはずのコッチを見向きもしない、男物売り場でだ。俺はその言葉に唇を噛みしめ、セール無しの服となけなしの小遣いを見て……。


「うん、よしっ……、回って行こう、やっぱり俺も頑張らないとだ……っ」


 そして1店目、とりあえず服を選ぶが、何気に女性陣が固まって動かない。

 色々コッチが考えて回ってる最中に、2人は適当にうなずき……。


「えぇ、良いでしょう。ソレになさいよ」

 2枚ほど出し、マイチもうなずいて終わり。

 そのなんとも気の無い言葉で勧めてくる服は、ソレはあまり考えられたようには見られない。正直女性思考過ぎる服だった。


 彼女らは女性店員としか話してないし服も試着せず、まま、とりあえず様子見という事で難を逃れる俺は。

 2店目も、だが、明らかに似合わない服を勧めてくる灯火。


「はい、じゃあコレで……、えぇ」素っ気なく幾つかを投げつけて来てて……。

「あぁ……―、いや、灯火? でもこれが良いなぁって……。ほら見て格好良いんだ、ワンポイントですっごくて黒に入った赤がさぁっ……」絶妙だよなぁ……。


「あのねぇ……戸北クぅン――? まず黒は論外だ」

 無表情でハンガーごと戻して言って来るから「黒っていうのはまるっと似合うんです、9割が敵だ、つまりは最恐の競合素材なのね――? ねぇこれってぇ、もお、A5ランクが既に手を出してるねって……、ソレ分かりますかぁ~?」

それなのにぃ、戸北ランクで横に並べる気ですかって話なのね。

もう実際にねぇ……黒を多用する男の子で、そのカオがBクラスはすぐにアウトだよ?


「そう……、女優と同じだわ、可愛い・手堅いなんて基礎の基礎。そこから差をつける為に買いに来てるの、それで……、、アナタ何を買うおつもりで? 自分のランクから出もせず、横のイケメンと同じのを買ってっ、それで輪廻程度でも少しは追いつけるとでもっ……?」

 その言葉に気が遠くなる――。


 彼女らは今から立ち向かうレベルを意識していたのだ、背伸びして当たり前、つま先でぶっ転んだって普通。戦闘服なのだ、この難しいのを着こなして合格ギリギリだと――。


「まぁでもねぇトモちゃん……――、う~ん、私もさすがに厳しいかなぁって。まるっと初心者さんだし~~、素材だけ渡しても絶対に迷うかなぁって、先輩さん思うよぉ?」

 そのマイチの言葉に熟考する灯火。初めてとも言えた。

 そして手早く何枚かを抜き出し、前の店にまで戻って……。



「えぇ、まぁ、そうですね。せめてもじゃあ……、ウエで黒は使わない事に。それで妥協しましょう、戸北ランクを考えます――良いですね? そうしてシタの黒っぽいのと合う物を選び続けましょう」

それで3流のアナタはこれから黒は永劫禁止ですからね、これからも守りなさいよ……。

 テキパキとし、熟考、そうして1枚だけを突き出してきて「あぁ……、アァ……うん。そうか……――。分かった……分かったよ」

 フキゲンに目を合わされ――。

 ―――――――――――――――。

「あぁ……ありがと――、ありがとね……灯火」



 目が切られる――。

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