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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第三章 Sランクへの道のり 中編

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099 ルナとの対話

 二人はテーブル席に、向かい合うように腰をかける。

 周囲の視線は針を刺すかのように、ミナトとルナに向けられ、少しばかり居心地の悪さを感じる。

 それはミナトが普段感じる、卑しい視線とは異なり、王都最強の冒険者と何を話すのか、という単純な興味のようなものだった。


 だが、ルナはそれを察したのか、大きく咳払いをする。

 すると皆が我を取り戻したかのように、日常へと戻り始める。


「すまない、私は少しばかり注目を集めてしまうようでね」


 ルナは悪びれもせず、静かに笑った。ミナトに気を利かせた、明確な配慮だった。


「いえ、俺も違う意味で注目を浴びることはあるので、大丈夫ですよ。それより他の仲間の方はいいんですか?」


 ミナトはカウンターで話し込んでいるルナの仲間に視線を送る。彼らは受付の人と、依頼の報告をしているのだろう。


「構わないよ。依頼の報告は基本仲間に任せているからね。それに、今回の依頼だと結構時間もかかるだろうし」


「そうなんですね。なんかルナさんはシスカから聞いている、ノクト家の雰囲気と合致しませんね。魔法の使えない俺に普通に接したりするところとか……」


 ミナトは正直にルナの印象について話し始めた。するとルナは苦笑を浮かべ、わずかに視線を落とす。


「うん、それは父上と母上のことかな。私は魔法の才能は、人それぞれだと思うから気にしたことはないよ。もちろんシスカについても、魔力の少ない彼女が、彼女なりの戦闘スタイルを確立しているのは素晴らしいことだとも思う。ただ……」


 ルナは喉の奥に言葉を詰まらせるように、少し難しい表情をする。


「ノクト家が代々魔法主義の家系なのは事実で、両親が魔法の才がないシスカをよく思ってないのは、本当に残念なことだ。彼女が負けず嫌いで、両親と揉めて家を出て行ったのも、その反骨心ゆえだろうね」


 ミナトはルナの言葉に妙に納得してしまった。


「確かに負けず嫌いですね。ルナさんを越えることが目標とも言ってましたし」


 その言葉にルナは少し嬉しそうな表情をする。口角が上がり、目元が緩む。


「私を越える……か。そうしたら魔法が絶対ではないと、両親に突き付けることができる、と言うことか。シスカらしいな」


 にやつきを抑えられていない表情に、どこか兄としての人間味感じられる。


(兄弟は仲が悪いって訳ではないんだな)


「そうだ。君は魔法を使わずに魔力纏いのみで戦うんだってね」


 ミナトは頷きながらも、少し訂正する。


「使わずに、というよりも使えないので、魔力纒いを極めるしかないんです」


「おっとこれは失礼。実は私のパーティーにも似たような戦いかたをする人が居てね。彼は君に興味持っていたよ。私たちはしばらく王都に留まる予定だから、もし機会ががあれば、話だけでもしてやってほしいんだ」


 ミナトはSランクパーティーに自身と同じように、魔力纏いによる戦闘を主とする人物が居ることに驚く。

 だが、同時にSランクの境地であっても、このスタイルが通用すると確信をもてたことで、自信にもつながった。


「それは俺も興味があります!」


 ミナトは少し食い気味に反応する。しかし、今日は予定があることを思い出す。


「ただ今日は都合が……」


「急いでいるという訳ではないから、都合がつくときで構わないよ」


 ルナの言葉にミナトは、安堵したかのように頷く。

 SSランクのルナには、正直聞きたいことがたくさんある。

 どのような魔法を使うのか、どれ程の依頼をこなしその境地に辿り着いたのか、それらを聞く機会を失わずに済んだのだ。


 ルナ達はしばらく王都に留まり、ミナトもまた、仲間の試験が終わるまでは、遠征もしないであろう。

 いくらでも都合はつけられる状況だ。


 ミナトは頭の中で、予定を再確認し、明日や明後日にでも……と思っていると、背後から、ギルドの喧騒を断ち切るような、鋭い、怒気を含んだ気配感じる。


「兄さん!なにうちのリーダーにちょっかい出してるのよ!」


 その声に、ミナトは振り向く。

 そこには腕を組み、睨み付けるように、ルナに視線を向けるシスカが立っていた。


「やあシスカ。久しぶり」


 ルナは笑顔でシスカに手を振る。


「やあ、じゃないわよ全く!」


「少し、ミナト君と話をね。ところで、シスカはAランクになったんだってね。凄いじゃないか。これなら母上も父上も見直してくれると思うよ。たまには一緒に、実家へ顔を出さないかい?」


 その言葉にシスカは大きく首を振る。


「私は別に見直してもらいたいわけじゃ無いわよ。それに兄さんを越えるまでは帰るつもりはないわ」


「そうか。私はノクト家の次期当主になる。出来れば家族の蟠りは、取り除いておきたいのだけどね……」


 シスカの言葉にルナは微笑みを消し去り、その瞳に深い悲しみの影を宿す。

 彼なりにシスカを気遣い、家族の仲を取り持とうとしている、次期当主としての重責が感じられる。


「余計なお世話よ!ほら、クレイグも外で待ってるから、もう行くわよ!」


 シスカは半ば強引にミナトの腕を引っ張る。


「じゃ、じゃあルナさん!またの機会で!」


 ミナトは引きずられながらも、ルナに別れをいい、ギルドを後にした。

 ルナは立ち上がり、扉から消えゆく二人の背中に向かい、先ほどとは違う、どこか物寂しそうな笑顔で手を振るのであった。

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