098 王都最強冒険者
翌朝、目を覚ますなり、身支度を整える。
昨夜は早めに休んだこともあり、依頼続きの毎日で疲労困憊だった体も、しっかりと疲れがとれたようだ。
「久しぶりにゆっくり寝れたな……。さて、ギルドに向かうか」
ミナトはそう呟くと、足取りも軽くギルドに向かうのであった。
朝日が差し込み、石畳に反射する光はどこか幻想的で、行商人や、行き交う人々の活気が、今日の一日の始まりを告げているかのようだ。
取れ立ての野菜や果物を売り込む声、肉を焼く香ばしい匂い、甘味を片手にこぼれる笑顔。
どれも新鮮で、何度みてもここが異世界だと認識させてくれる。
(この、朝の忙しなくも、活気ある雰囲気は久しぶりだな)
王都に留まっている時間よりも、依頼で外に出ている方が多いので、ここで朝を向かえるというのは実はあまりない。
それだけにミナトの冒険者としての生活が充実し、なおかつ順調であることを告げている。
ミナトもまた、その喧騒の中に溶け込みながらも、ギルドへと到着した。
扉を開き、中にはいると、いつものカウンターにはリビアがいる。
「おはようございますミナトさん!今日も依頼受けていきますか?」
笑顔で挨拶をしてくれるリビアに、ミナトもまた笑顔で返す。
「おはようございますリビアさん。今日は依頼はお休みします。シスカとクレイグと城の方に行ってきますので」
「そうなんですね!では、また依頼を受ける時はお声がけ下さい!」
ミナトはリビアの言葉に頷くと、辺りを見渡す。
(二人は……まだ来てないか)
ミナトは近くのテーブルに腰をかけ、しばらく待つことにする。
すると、入り口の方がなにやらざわつき始めた。
ミナトは気になり振り向くと、ギルドの入り口から冒険者パーティーと思われる六人組が現れる。
そのうちのリーダーと思われる、先頭を歩く男性は、透き通るように綺麗な肌と、銀色の髪に、整った顔立ち、白を基調とした耽美な服装をし、その背中には豪華な装飾が込められた、大きな杖が携えられていた。
その姿をみた冒険者達は、息を飲んで道を空け、ギルド全体が一瞬で静まり返る。
喧騒が耳鳴りのような、絶対的な静寂へと変わった。
その緊張感は、まるで高ランクの魔物に遭遇したかのようだった。
ミナトは周りの反応が理解できず、咄嗟に隣にいた冒険者に尋ねた。
「なあ、これは何が起こっているんだ?」
すると、隣の男はミナトの声に反応し、恐る恐る口を開く。
「あんた知らないのか!?あれは王都最強の……」
男が名前を言おうとしたその瞬間、リーダーらしき人物の視線がこちらへと向けられた。
その視線に萎縮した冒険者は、言葉の続きを話すことなく、立ち去ってしまう。
そして、圧倒的な威圧感を放ちながらも、星屑のように煌めく、凛とした瞳を宿した男は、静かにこちらへと近づいてくる。
(……なぜこちらに来るんだ?)
ミナトは疑問に思いつつも、視線は逸らさずに警戒心を高める。
男がミナトの前で立ち止まると、世界から音と時間が完全に消え失せたかのような、一瞬の静寂が訪れる。
まるで世界がこの男のために、時を止めたかのようだった。
だがその静寂を破るかのように、ミナトは言葉を発する。
「俺に何か用でも?」
すると、男は不適な笑みを浮かべながらも、軽く会釈をし、静かに口を開く。
「すまない、私の妹が世話になっているようでね。少し挨拶を、と思って」
(妹……?まさか!)
髪や肌の色、凛とした佇まいや雰囲気、それとなくシスカに似ている。
ミナトはその人物がシスカの兄であり、王都最強の冒険者、ルナ=ノクトだと確信した。
「シスカの……お兄さん?」
その人物はミナトの言葉に反応し、穏やかに頷く。
「自己紹介がまだだったね。私はアストラ・エンブレムのリーダー、ルナ=ノクト。君の言うとおりシスカの兄にあたるね」
ルナの自己紹介に返すように、ミナトもまた口を開く。
「やっぱりシスカのお兄さんでしたか。どことなく雰囲気が似てますね。自分は零閃の狼煙リーダー、ミナト=イチノセと言います」
ミナトは軽く会釈をすると、ルナは前から知っていたような口ぶりをする。
「君は少しばかり有名人だからね。長期の遠征から帰ってきたばかりだけれど、君のこと、そしてシスカと共にパーティーを結成したことは、前々から噂できいていたよ。ところで今日シスカは?」
「今待ち合わせをしているところなので、もうすぐ来ると思いますよ」
「そうか。ありがとう。よければ、待っている間私と少し、話でもしないか?」
ミナトはシスカの兄が、想像していたよりも友好的で、口調が穏やかなことに少し驚いていた。
特に断る理由もなく、王都最強の冒険者と対話出きることに、微かな高揚感を覚えていた。
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