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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第三章 Sランクへの道のり 中編

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094 Bランク試験 クレイグ

 準備を済ませたミナトとクレイグは王都の門を出立した。

 時短のために馬を借り、途中まで二人は往路を共にする。


 クレイグの試験の森林地帯は二日ほど、ミナトの向かう湿地地帯は、そこからさらに一日ほど移動した場所にある。


「まさか、二人で旅をする機会があるなんてな」


「はい、森林地帯までほとんど同じルートですね」


 二人は会話を交えながら、着々と進んでいく。


「この試験が終わったら、俺達はBランクか……なかなかのペースでこれてるな。この調子なら、魔王討伐の時期に間に合いそうだ」


「そうですね。Sランクに到達した暁には、魔王討伐の前に、グリムロックに眠る鉱石で、皆さんの装備を整えたいものです」


「確かに、魔王と対峙するなら、それなりに装備を整えないとか……。それに、クリスタルゴーレムを倒せるくらいに強くなってないと、魔王なんて到底倒せないな」


「はい、材料さえあれば、父さんがいくらでも作ってくれると思います!ただ、焦りは禁物です。少しずつ、確実にSランクを目指しましょう!」


 ミナトはクレイグの言葉に大きく頷き、目標を再認識した。

 それから二日ほどがたち、ミナトとクレイグの、分かれ道がやってくる。


「では、同行はここまでですね。要らぬ心配かもしれませんが、お気をつけて!」


「ああ、クレイグも気をつけてな!」


 二人は言葉を交わし、それぞれの試験場へと向かっていった。

 クレイグはそこから、数刻もたたないで、目的地である、森林地帯にたどり着く。


「ここにキラースパイダーが……」


 馬を近くの木にくくりつけ、地図を確認しながら、内部へと侵入していく。

 鬱蒼と生い茂る木々により、昼間だというのに、日差しはあまり入らず、どこか薄暗さを感じる。


 中を進むにつれ、キラースパイダーの痕跡とおぼしき、糸や糞のようなものが、見えてくる。


「たしか、キラースパイダーのほかに下位種もでてくると……。用心していきましょう」


 やがて、キラースパイダーのテリートリーとでも言える、クモの巣が張り巡らされた空間に出る。

 そこには無数の繭と、糸にからめとられた魔物の姿があった。


「どうやらここで間違いなさそうですね」


 クレイグは両手に魔力を集中させ、いつでも魔法を放てるよう、警戒する。

 すると、目の前から何かが飛んでくる。

 それがキラースパイダーの糸だと気付く頃には、回避は間に合わず、咄嗟に腕で防御してしまった。


 魔力を纏った腕に張り付くように、粘着性の糸は、クレイグの左腕に、絡まりついてしまった。

 それは、引っ張るくらいでは容易には切れない上、全身から力が徐々に抜けていく。


 おそらく、魔力をすいとる効果があるのだろう。

 さらに、獲物を逃さんとばかりに、追撃の糸を飛ばしてくる。


「ファイアウォール!」


 クレイグは、自身と糸を飛ばしてきた方向の境界に、炎の壁を作り出した。

 その炎により追撃の糸もろとも、腕に絡み付いた糸も焼ききることに成功する。

 そして、その炎により辺りが照らされ、自身の状況に気付かされる。


(囲まれてる!?)


 クレイグの周囲を囲むように、キラースパイダーと、数匹のジャイアントスパイダーが姿を表す。

 キラースパイダーは、威嚇するかのように、毒性の牙をカチカチとならしている。

 それに呼応するかのよう、ジャイアントスパイダーは糸を飛ばしてくる。


「見えていれば容易に防げます!メテオショット!」


 クレイグは無数の糸を器用に交わすと、続けざまに魔法を発動し、キラースパイダーにむかって放つ。

 だが、キラースパイダーは容易にそれを避けてしまう。


(やはりこの魔法はスピードが……)


 クレイグは思考を巡らせる。


(スピードをあげる……いやちがう、避ける隙を与えない!)


 クレイグは地面に手を伏せると、続けざまに魔法を放つ。


「フレイムランス!」


 すると地面から無数の火柱のような炎がキラースパイダー達の足元から沸き上がる。

 ジャイアントスパイダーは、その火柱の餌食となり、全身に炎が燃え移り、苦しみ悶え、やがて灰になる。


 どうやら糸は可燃性のようで、それを体内に蓄えているジャイアントスパイダーにとって、炎はかすっただけでも、致命傷となるようだ。


 一方キラースパイダーはかろうじて避けたみたいだが、クレイグは動じない。

 なぜなら既にもうひとつの魔法を発動していたからだ。


「アイアンメイデン!」


 地属性からの派生で、内部が刺だらけの、鉄の棺のようなものが、キラースパイダーの逃げた先で、まさに着地するであろう空間に、口を開いて待ち構えていた。


 キラースパイダーは空中で避ける術をもたずに、吸い込まれるようにその棺に取り込まれる。

 次の瞬間、棺が口を閉じる直前、キラースパイダーは、糸を木に巻き付け、ギリギリのところでその棺をかわす。


 だがクレイグは、最初の詠唱で発動させた、フレイムランスの魔力維持を止めてなかった。

 キラースパイダーを追うように、次々と立ち上がる火柱を避けきれずに直撃する。

 すると、途端に炎は全身に燃え広がり、ジャイアントスパイダー同様、灰となってしまう。


 クレイグの作戦勝ち、と言ったところか。

 キラースパイダーは度重なるクレイグの魔法により、防戦一方となるしかなかった。

 それだけに彼の魔法詠唱の速さ、及び正確さが、日に日に磨きがかかっているということだ。


「ふぅ……。念には念を、といったところですかね。二重にトラップをひかせてもらいました」


 クレイグは呼吸を整えると、魔石を回収し、森を後にした。

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