094 Bランク試験 クレイグ
準備を済ませたミナトとクレイグは王都の門を出立した。
時短のために馬を借り、途中まで二人は往路を共にする。
クレイグの試験の森林地帯は二日ほど、ミナトの向かう湿地地帯は、そこからさらに一日ほど移動した場所にある。
「まさか、二人で旅をする機会があるなんてな」
「はい、森林地帯までほとんど同じルートですね」
二人は会話を交えながら、着々と進んでいく。
「この試験が終わったら、俺達はBランクか……なかなかのペースでこれてるな。この調子なら、魔王討伐の時期に間に合いそうだ」
「そうですね。Sランクに到達した暁には、魔王討伐の前に、グリムロックに眠る鉱石で、皆さんの装備を整えたいものです」
「確かに、魔王と対峙するなら、それなりに装備を整えないとか……。それに、クリスタルゴーレムを倒せるくらいに強くなってないと、魔王なんて到底倒せないな」
「はい、材料さえあれば、父さんがいくらでも作ってくれると思います!ただ、焦りは禁物です。少しずつ、確実にSランクを目指しましょう!」
ミナトはクレイグの言葉に大きく頷き、目標を再認識した。
それから二日ほどがたち、ミナトとクレイグの、分かれ道がやってくる。
「では、同行はここまでですね。要らぬ心配かもしれませんが、お気をつけて!」
「ああ、クレイグも気をつけてな!」
二人は言葉を交わし、それぞれの試験場へと向かっていった。
クレイグはそこから、数刻もたたないで、目的地である、森林地帯にたどり着く。
「ここにキラースパイダーが……」
馬を近くの木にくくりつけ、地図を確認しながら、内部へと侵入していく。
鬱蒼と生い茂る木々により、昼間だというのに、日差しはあまり入らず、どこか薄暗さを感じる。
中を進むにつれ、キラースパイダーの痕跡とおぼしき、糸や糞のようなものが、見えてくる。
「たしか、キラースパイダーのほかに下位種もでてくると……。用心していきましょう」
やがて、キラースパイダーのテリートリーとでも言える、クモの巣が張り巡らされた空間に出る。
そこには無数の繭と、糸にからめとられた魔物の姿があった。
「どうやらここで間違いなさそうですね」
クレイグは両手に魔力を集中させ、いつでも魔法を放てるよう、警戒する。
すると、目の前から何かが飛んでくる。
それがキラースパイダーの糸だと気付く頃には、回避は間に合わず、咄嗟に腕で防御してしまった。
魔力を纏った腕に張り付くように、粘着性の糸は、クレイグの左腕に、絡まりついてしまった。
それは、引っ張るくらいでは容易には切れない上、全身から力が徐々に抜けていく。
おそらく、魔力をすいとる効果があるのだろう。
さらに、獲物を逃さんとばかりに、追撃の糸を飛ばしてくる。
「ファイアウォール!」
クレイグは、自身と糸を飛ばしてきた方向の境界に、炎の壁を作り出した。
その炎により追撃の糸もろとも、腕に絡み付いた糸も焼ききることに成功する。
そして、その炎により辺りが照らされ、自身の状況に気付かされる。
(囲まれてる!?)
クレイグの周囲を囲むように、キラースパイダーと、数匹のジャイアントスパイダーが姿を表す。
キラースパイダーは、威嚇するかのように、毒性の牙をカチカチとならしている。
それに呼応するかのよう、ジャイアントスパイダーは糸を飛ばしてくる。
「見えていれば容易に防げます!メテオショット!」
クレイグは無数の糸を器用に交わすと、続けざまに魔法を発動し、キラースパイダーにむかって放つ。
だが、キラースパイダーは容易にそれを避けてしまう。
(やはりこの魔法はスピードが……)
クレイグは思考を巡らせる。
(スピードをあげる……いやちがう、避ける隙を与えない!)
クレイグは地面に手を伏せると、続けざまに魔法を放つ。
「フレイムランス!」
すると地面から無数の火柱のような炎がキラースパイダー達の足元から沸き上がる。
ジャイアントスパイダーは、その火柱の餌食となり、全身に炎が燃え移り、苦しみ悶え、やがて灰になる。
どうやら糸は可燃性のようで、それを体内に蓄えているジャイアントスパイダーにとって、炎はかすっただけでも、致命傷となるようだ。
一方キラースパイダーはかろうじて避けたみたいだが、クレイグは動じない。
なぜなら既にもうひとつの魔法を発動していたからだ。
「アイアンメイデン!」
地属性からの派生で、内部が刺だらけの、鉄の棺のようなものが、キラースパイダーの逃げた先で、まさに着地するであろう空間に、口を開いて待ち構えていた。
キラースパイダーは空中で避ける術をもたずに、吸い込まれるようにその棺に取り込まれる。
次の瞬間、棺が口を閉じる直前、キラースパイダーは、糸を木に巻き付け、ギリギリのところでその棺をかわす。
だがクレイグは、最初の詠唱で発動させた、フレイムランスの魔力維持を止めてなかった。
キラースパイダーを追うように、次々と立ち上がる火柱を避けきれずに直撃する。
すると、途端に炎は全身に燃え広がり、ジャイアントスパイダー同様、灰となってしまう。
クレイグの作戦勝ち、と言ったところか。
キラースパイダーは度重なるクレイグの魔法により、防戦一方となるしかなかった。
それだけに彼の魔法詠唱の速さ、及び正確さが、日に日に磨きがかかっているということだ。
「ふぅ……。念には念を、といったところですかね。二重にトラップをひかせてもらいました」
クレイグは呼吸を整えると、魔石を回収し、森を後にした。
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