088 圧倒の武術
ミナトはヴァンダルブローの七人と訓練場で向かい合っていた。
「俺のこと無能力だのなんだ言うくせに七人がかりなんだな」
「俺様はやる時は徹底的にやるって決めてるんだ。文句があるならお得意のお仲間さんでも呼んだらどうだ?がはははは」
相変わらずミナトの実力を知らない彼らは、ミナトのランクが仲間の助けによって達成した偽物のランクだと思ってるようだ。
だがミナトは至って冷静に言い放つ。
「いや、一人で十分だ」
その言葉に取り巻きの双剣を腰に携えた、細身ながらに醜悪な顔つきの男が怒鳴り付けてくる。
「おいお前!このお方は我らヴァンダルブローのリーダー、Aランクのガルム=ブロー様だぞ!あまり調子に乗るなよ!」
その男の言葉はミナトの耳には雑音として処理され、一切の内容を聞いていなかった。
「無駄口はいい。もうはじめていいのか?」
「ああいいぜ、始めるもなにもお前はリンチになって終わるだけだがな。がはははは!」
「じゃあ遠慮なく」
ミナトはその言葉と同時に先ほどの双剣持ちに向かい飛速による超過速で一瞬にして間合いを詰める。
「なんだ!?」
ドンッ!ズドオォォーン!
ミナトはそのままの速度で腹部めがけて、正拳突きを打ち放つ。
すると反応の余地もなく無防備な状態でミナトの一撃を食らってしまった双剣使いは後方へ吹き飛ばされ、壁に深くめりこむ。
「ぐはぁっ!」
双剣使い、おそらく七人の中で一番身軽な格好をしていたであろう彼が剣を抜く暇もなく、たったの一撃でのされてしまう。
「て、てめえなにしやがった!」
リーダーのガルムも仲間の一人が瞬殺されたことに流石に驚きを隠せないようだ。
「なにって、ただ殴っただけだ」
「殴るだけで人がそんな簡単に飛ぶわけねえだろう!」
焦りを隠せないガルムに対し、ミナトはにやっと笑いながら続けて口を開く。
「お前も飛びたくなったか?」
「て、てめえぇ!やろうどもやっちまえ!」
ガルムの掛け声で取り巻きたちは武器を構え、一目散にミナト目掛けて魔法や飛び道具を放ち始める。
それを遠巻きに見ていたシスカは、ため息をつきながら話す。
「あいつら全然駄目ね。心配はしてなかったけど、ここまで戦力差があるとは思わなかったわ」
「相手は七人がかりだというのに、流石はミナトさんですね」
シスカに続きクレイグもミナトを称賛する。
「さっきリーダーはAランクだって言ってましたけど、ミナトさんの動きに全然ついていけてないように見えますけど……?」
セイラの疑問にメリアは答える。
「ランクはあくまでも対魔物を基準にしてますからね。見るからにパワータイプの彼ではミナトさんの動きが読めないのも頷けます。それに対人戦闘においてはミナトさんはどこか慣れてるように見えます」
その言葉にシスカは反応し、ミナトの対人戦闘においての優位性を話す。
「ミナトは召喚される前、武術という対人戦闘の技術を極めていたの。他人と技を掛け合い、勝敗を決める術よ。だから、接近戦においてはまさにプロ。彼らが勝てるはずがないわ」
「そうだったんですね!武術……。少し気になります!でもあのスピードだとすぐ間合いを詰めれてしまうので、遠距離も近距離もあってないようなものですね」
シスカの言葉にメリアはくすっと笑いながらもミナトのことを称賛する。
「さあ、残すはリーダーだけみたいね。呆気なかったわ」
シスカの言葉通りミナトは圧倒していた。
力、スピード、技術、あらゆる点においてガルムを大きく上回っていた。
「あとはお前だけだな。そのでかい斧はただの飾りか?」
「くそがぁ!なめやがって!炎斧フレイムアックス!」
ガルムはミナトの挑発に乗り、斧に炎を纏わせ大きく振りかぶる。
炎を纏った斧が頭上に迫るが、ミナトは動じず冷静だった。
「炎か……」
腰の剣に手を掛け、抜き放つ。
ガキィンッ!
甲高い音と共に、炎を纏った斧の刃先だけが切り離され、空を飛んだ。
ガルムは柄の部分しか残らない斧を見て開いた口が塞がらないようだ。
「い、今なにをした?」
ガルムにはミナトは剣に手を掛けているだけで、抜いた動作が見えなかったようだ。
「『居合一閃』、お前には見えなかったようだな」
そう言い放つとミナトは拳に魔力を込め始める。
瞬く間に『極壊』を思わせる黒い稲妻が拳に小さく纏わりつく。
ゴブリンとの戦闘で感覚を掴んだミナトは以前よりも纏う魔力が増え、大気の唸りも激しくなっている。
「ちょ、ちょ、ちょ、ま、待ってくれ!お、俺が悪かった!な、なあ?も、もうおわりにしようぜ?」
「ああ、終わらせてやるよ」
ミナトは容赦なくその拳を腹部めがけて打ち放つ。
ドゴオォォーン!
ガルムの巨体は訓練場の端まで吹き飛んでいき、壁を大きく凹ませ、完全に気を失う。
「少しやりすぎたか?」
訓練場に転がるガルムたちを見ながら呟く。
ガツン!
いきなり頭上に強い衝撃が加わる。
気配も殺意もないうえ、戦闘の終了という気が抜けたタイミングでの出来事で、ミナトは全く反応が出来なかった。
「やりすぎだ、馬鹿野郎! リビアに言われて来てみれば……」
その正体はグレンの拳だった。グレンは辺りを見回し、呆れながら喋る。
「こんな奴ら相手にすること無いだろう?また訓練場壊しやがって」
「す、すいませんグレンさん。つい……」
ミナトは顔をひきつらせながら謝るしかなかった。
「まあいい、依頼を受けてるんだろう?こっちは俺が何とかしておくからとっとと行ってこい」
「あ、そうでした!すみませんがお願いします!」
ミナトは依頼のことを思いだし、シスカたちと合流しグレンに頭を下げ、訓練場を後にした。
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