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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第三章 Sランクへの道のり 中編

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084 新しい命

 ミナトの言葉に全員が戦闘の終了を実感し、緊張が一気に解ける。


「な、なんとかなりましたね……。ゴブリンキングがこっちに向かってきたときはさすがに焦りましたよ」


 クレイグが座り込みながら話すと、セイラ、メリアも同様の意見のようだ。


「近距離に持ち込まれたら終わると思って、必死に魔法放ちましたが全然当たらなかったです……」


「私はいざというときのために弓に持ちかえるわけにもいかず、ほとんど見ているだけでした……」


 三人とも初めてのAランク魔物との対峙に、恐怖や焦りを感じながらの戦闘になり、どっと疲れが溜まったようだ。


「だけど、あのAランクを相手に三人で瀕死まで追い込めてたじゃないか。素直にすごいと思うぞ!」


「そうね、私が駆けつけたときには既に、両腕はもげてたし、虫の息って感じだったわよね」


 ミナトとシスカは三人の実力を素直に褒め称える。

 Aランクとの対峙、これはパーティにとって大きな経験となったであろう。


「さあ魔石を回収して、さっさとこの臭い空間からでましょう」


 シスカの掛け声に一行は頷き、大量のゴブリンから一つずつ魔石を回収していく。


「なあ、魔石って魔物の種類によってサイズや形は変わって、その濃さによって生きてきた年数がおおよそにわかるんだろ?このゴブリンキングの魔石、まだ白いぞ」


 ミナトがゴブリンキングから魔石を回収しながらふと呟く。


「おかしいわね。あれだけの存在ともなれば、少なく見積もっても数十年は生きているはず。この白さは、まるで突然変異で生まれたか、極めて短期間で力を得たことを示しているわ」


 ゴブリンジェネラルですらかなり濃い黒に染まっているのにたいして、やはりこの白さは異状のようだ。

 だが、ここで考えたところで何も解決されない。


「気にはなるけれど、とりあえずギルドでそのことは報告しましょう」


 シスカは少し疑問を抱きながらも、ギルドの判断に委ねることにする。


 こうしてすべての魔石を回収し終え、クレイグのマッピングを元に坑道を後にする。

 彼の家業で培った複雑な地形の記憶というのは、今後もダンジョンに潜る際などの貴重なスキルとなるだろう。


「あーやっとでれたあ!」


 ミナトは外に出るなり、深呼吸をする。


「私、聖属性の魔法も必ず覚えます!」


「セイラ、頼んだわよ」


 やはり、坑道内のあの臭いはかなりきつかったようだ。

 これから死体の処理に来るであろう自警団には、さらに死体の腐敗した臭いも入り交じり、大変気の毒であろうと思うしかなかった。


「よし、王都にもどろうか!」


 ミナトはそう言うと、一行は近くに隠しておいた馬車に乗り込み帰路へとつくのだった。


 帰路も大きなアクシデントはなく順調に進み、坑道を発ってから四日ほどがたつ。

 クレイグが手綱を握り、他のメンバーは馬車に乗りながらしっかりと体を休め、ミナトも深い眠りについていた。


 すると眠っているミナトの腰の辺りが薄い光を放ちながら点滅を始める。

 ミナトは深い眠りについていてその光に気付かないようだ。


「……あれ?ミナトさん!なんか光ってますよ!」


 向かい合っていたメリアがそれに気付き、ミナトに声をかける。

 クレイグもその言葉に何かの異状を危惧し、馬車を止める。


「ん……。光ってる……?な、なんだこれ!?」


 ミナトは慌てて起き上がり、被っている毛布をめくりその光の正体を確かめる。

 するとその正体はコロンで購入したカーバンクルの卵だった。


「卵が発光している!?」


 ミナトは慌てて容器の蓋を開け、中から卵を取り出す。

 そして手のひらに乗せると発光は強くなり、点滅していた光はやがてまばゆい光を放ちながら宙に浮き出す。

 するとまるでガラスが割れるかのような音と共に卵の発光が最高潮になる。


 パリンッ!


 光に目を瞑ったミナトは、ゆっくりと目を開ける。


「うおわっ!」


 目を開くと同時に、顔面にもふもふとした物体が突進して張り付いてきた。

 ミナトは慌てて引き離す。


「キュー!クルルッ!キュッキュー!」


 そこには、真っ白な毛並みと長い尻尾、大きさは小型犬ほどの愛らしい姿があった。

 瞳は濃い赤色に輝き、何より額には、ダイヤモンドのように光る虹色の宝石が埋め込まれている。

 その姿は、まさしくカーバンクルだった。


 ミナトはコロンで卵を入手してから、普段の生活は勿論、戦闘中や寝ている間にも魔力を卵に流し続けていた。

 その甲斐もあったのか、孵化するなりミナトをすぐに親だと判断したのだろう。


「これが、カーバンクル……?か、可愛い……」


 突然の卵の孵化により、心の準備もできないままの対面になり、あまりの可愛さについ抱き締めてしまった。


「キューイ!キューイ!」


「ごめん、苦しかったか?」


「キュウ!」


 なんとなく言葉が通じているのか、カーバンクルはミナトの言葉に反応をする。


「カーバンクルですか!可愛いですね!」


「白い毛並みとその額の宝石……。私の見聞では見たことがないわね」


「わたしもカーバンクルは見たことありますが、額の宝石は使える属性と同じ色になるはずなので、この虹色のような色見たこと無いですね」


「ミナトさんの魔力により孵ってるので、それがなにか影響を与えた結果なのでしょうか?」


 セイラは単にカーバンクルの可愛さに目がやられているが、他の三人は額の宝石の色が気になるようだ。

 新たな生命の誕生に、みんなも興味津々になる。

 するとカーバンクルはすこし怯えながら、ミナトの影に隠れてしまう。


「ちょっと皆!怖がってるぞ!」


 ミナトは慌ててカーバンクルを庇う。


「ごめんなさい、珍しさについ……」


 シスカ達は素直に謝り、カーバンクルから少し距離をとる。

 シスカたちが距離をとると、カーバンクルは小さな鼻をひくつかせ、警戒を解いた。

 どうやら、彼らが親であるミナトの仲間だと判断し、恐怖が消えたようだ。


「そろそろ産まれる頃とは思っていたけど、前触れもなく突然だったな」


「急に後ろで、光っていると言われてびっくりしましたよ。ミナトさん、名前は決めてあるんですか?」


 クレイグの問いにミナトは静かに頷く。


「ああ、いくつか候補は頭のなかにあったんだけど、今一目見てこれしかないと思ったよ」


 ミナトはカーバンクルをしっかりと見据え、その白い毛並みと輝く宝石に込めるにふさわしい名を、静かに口にした。

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