082 ゴブリン殲滅依頼4
ゴブリンたちとのにらみ合いの中、最初に動き出したのはミナトだった。
ゴブリンジェネラルに向かって最短距離でゴブリン共の隙間を縫うように走り出す。
(頭が死ねばあとは低級のゴブリンだけだ。遠慮なくいかせてもらう!)
下級のゴブリンではミナトのスピードに反応できずに、ただ呆然とみているしかない。
ジェネラルは自分が標的になっていると気付いたようだ。
三メートル程の体躯と異常なまでに発達した不気味な程の筋肉により、重量級の斧も軽々と持ち上げ、構える。
もう一匹のジェネラルはゴブリン共に指示を出し、後方にいるセイラたちに目掛けて一斉に襲いかかってくる。
「そっちは任せたぞ」
ミナトはそう言うと、自身の戦闘に集中する。
(試してみるか……!)
ジェネラルの攻撃範囲に踏み込むと半身の構えをとる。
左手は前に、右手は手前に引き、右手に魔力を込め続ける。
対するジェネラルは斧を振り上げ、ミナトに目掛け思い切り振り下ろす。
風切り音とともに刃先がミナトの眼前に迫る。
だがミナトは魔力の込めていない左手で刃の横を軽く撫でるように振り払い、重心をずらす。
ドオォーン!
重心をずらされたことにより、ミナトには当たらず、その一撃は地面に叩き込まれた。
大地が揺れるほどの衝撃だったが、ミナトは動じずに既に攻撃モーションに入っていた。
斧を振り払った反動を利用し、魔力の込めた右拳を腹部に目掛けて全力で叩き込む。
ドゴォーン!
轟音と共にゴブリンジェネラルは後方のゴブリンを巻き込みながら吹き飛び、壁に深いクレーターを作った。
まだ魔力を完全に乗せきることは難しいが、『極壊』の片鱗を示すその拳は、微かに空間を歪ませる黒い稲妻のようなものを纏っていた。
いくらBランクの魔物と言えど、ミナトの渾身の一撃をもろに受け、まともに立ち上がることが出来ない。
リーダー格のジェネラルがたったの一撃で吹き飛ばされたことに、下級のゴブリンたちは恐れをなし、動きが鈍重になる。
その隙をクレイグ、セイラ、メリアは見逃さない。
「アーススパイク!」
クレイグは地面から棘のようなものを広範囲に突きだし、ゴブリンの大多数に大きなダメージを与える。
「アクアサイクロン!」
セイラは狭い通路では使えなかった範囲魔法を、この開けた空間ならば問題なく使えると判断し、ゴブリンの群れに目掛けて容赦なく放つ。
「風剣・ヴォルテックス!」
メリアの魔法は自身を中心に竜巻をも思わせる風の刃を双剣で作り出し、回転しながら接触するすべてを切り刻む魔法と剣技の合体技だ。
三人の広範囲に及ぶ魔法でゴブリンの半数以上は戦闘不能に陥り、残りのゴブリンもあまりの戦力差に戦意を喪失しつつある。
その間シスカもまたジェネラルと対峙していた。
シスカはミナトと違い、一撃の決定打に欠けるものの、スピードを生かし、相手の攻撃を避けながら細かい斬撃を加えていく。
同時に雷と氷のエンチャントを刀身に施し、徐々に行動力を奪っていく。
対するジェネラルはシスカのスピードを前になす術がなく、自慢のパワーも標的には当たらず空振りばかりだ。
徐々に体力を奪われ、二体のジェネラルはどちらも満身創痍になる。
一行はゴブリン達を圧倒していた。
それぞれの役割が型にはまり、尚且つ想定以上に彼らの戦力はゴブリンを大幅に上回っていた。
皆が勝利を確信し、ミナトとシスカがジェネラルに止めをさそうとしたその時……!
ドスッドスッドスッ!
広間の奥から足音が鳴り響き、こちらに向かってくるにつれ、異様に空気が重くなる。
ゴブリンの群れに気を取られ見えていなかったが、この広間の奥に続く通路がまだあったようだ。
足音はそこから聞こえてくる。
混乱しわめき散らしていたゴブリン共は途端に口を閉じ、どこか恐怖のようなものを抑えながら壁際へと離れていく。中央に残されたのは一匹の身動きの取れなくなったジェネラルと、それと対峙していたシスカだけになる。
また少し離れたところでミナトが立っていて、広間の入り口付近には残りの三人が身構えている。
すると広間の奥から一匹のゴブリンが現れる。
体長は二メートル程、均衡の取れた引き締まった筋肉と、あふれでる淀んだ魔力。
体には威厳を示す上等な装飾が施され、腰には禍々しい刀を携えている。
その風貌は、これまでのゴブリンとは一線を画していた。
「やっぱり居たのね……。ゴブリンキング!」
シスカはそのゴブリンを見据えながら警戒し距離を取る。
「ゴブリンキング!?あれがそうなのか!?」
ジェネラルと比べると背も低く、筋肉量も少なく見えるため、どちらかというとジェネラルのほうが強そうに見えてしまう。
だがミナトの武術の勘がすぐにその思考を停止させる。
(密度が違う……。あのゴブリンキング、一体何キロあるんだ!?)
ミナトの推測通り、ゴブリンキングの体重は優に300キロを超えている。
その原因は、人間には到達し得ない異常な筋肉の密度にあった。
踏み出す一歩一歩が地面を削り、大地を揺らす。
一行の緊張感は一気に高まり、戦場の空気が重くのし掛かる。
キングは、中央で動けずにいるジェネラルを一瞥すると、腰の刀に手を掛け、無情にも首を切り落とした。
(瀕死の仲間を……!?)
一行はゴブリンキングの行動に一層警戒を高める。
仲間であろうと容赦なく切り捨てる、ゴブリン種最強の王者。
推定Aランクの化け物だ。
その禍々しい刀の柄に手をかけたキングの視線は、既に広間の入り口で身構える『零閃の狼煙』のメンバーを捉えていた。
(この威圧感……。Aランク、そのなかでもかなり上位に入るだろう)
ミナトはそう直感し、全身の刻付の密度を最大限に高めた。
ゴブリンキングとの、命を懸けた真の総力戦が、今まさに始まろうとしていた。
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