008 魔法と魔力の基本
グレンは教卓に立つと、参加者全員を見渡した。
その視線がミナトを一瞬捉えるが、すぐに他の者へと移る。
「さて、講習を始める。俺はギルドマスターのグレンだ。これから四日間、お前らに冒険者としての知識、生き抜く術を教えてやる。まず、冒険者として活動する上で、お前らが理解すべきは、この世界の根幹を成す『魔法』と、その元となる『魔力』の基礎だ」
グレンはそう切り出すと、空中に手をかざした。
彼の掌から淡い光が生まれ、やがて小さな炎の玉となる。
「まず魔法だが、これは体内に流れる魔力を特定の形に変換し、放出するものだ。基本となるのは火、水、地、風の四大属性。ここから派生して、雷、氷、光、闇、回復など、多岐にわたる魔法が存在する」
炎の玉が水へと変わり、瞬く間に土塊となり、最後は風のように消え去った。
他の講習生たちからは感嘆の声が漏れる。
「魔法を発動させるには、まず体内の魔力を感じ取ることが肝心だ。次に、発動したい魔法を頭の中で明確にイメージする。そして、発動と同時に呪文を唱えることで、そのイメージがより具現化しやすくなる。体内の魔力量が多ければ多いほど、また魔力のコントロールの錬度が高ければ高いほど、魔法の威力や発動までのスピードは増す」
グレンは説明を続ける。
「ただし、魔法使いにはそれぞれ属性の相性がある。大抵の者は複数の属性を扱えるが、これも修練次第だ。中には、一つの属性しか使えぬ者も珍しくない」
ミナトはグレンの説明に耳を傾けながら、自身の体内の『異端な魔力』を意識した。
どうやっても、この世界の属性魔法として具現化できない。
やはり、彼の魔力は、この世界の『魔法』の範疇には収まらないらしい。
「次に、魔法ではなく、その元となる『魔力』そのものについてだ」
グレンの声が一段と重みを帯びる。その視線が、再びミナトに向けられた気がした。
「魔力は、言わばお前たちの体内に流れる力の源だ。魔法の発動にばかり気を取られがちだが、この魔力を自在にコントロールできるようになることが、冒険者として生き抜く上で非常に重要になる」
グレンは自分の腕を軽く握りしめた。
「魔力のコントロールに長ければ、魔法の発動だけでなく、『魔力纏い』と呼ばれる技術も可能になる」
彼の腕が、一瞬、微かに淡い光を帯びたように見えた。
「魔力纏いとは、体の全て、あるいは一部を魔力で覆う技術だ。これにより魔力をより体で感じることが可能となり、魔法威力、発動スピードの上昇に加え、通常よりも肉体が頑丈になったり、力やスピードが増す。極めれば、下級魔法で上級魔法をこえることや、拳で殴ることで、岩をも砕くほどの力を出すことも可能だ」
そう言うと、グレンは教卓の横に置かれていた、太い丸太で作られた訓練用の木人に向き直った。
予備動作もなしに、軽く拳を振るう。
ドォンッ!!
凄まじい破砕音と共に、木人の胴体がいとも簡単に弾け飛んだ。
教室が静まり返る中、グレンは残った残骸に向けて、今度は指先を向けた。
一瞬で身体に魔力を循環させると、先ほどよりも濃密な炎の弾『ファイアボール』を放つ。
ゴウッ! と熱波が広がり、残骸は一瞬にして炭と化した。
「このように魔力を纏えば振るう拳は鋼となり、放つ魔法は強力になる。魔法を極めるにはまず魔力を知れ!」
グレンの熱弁に、生徒たちがざわめく。
だが、その反応は微妙なものだった。
「すげぇけど……殴る必要あるか?」
「俺たちは魔法を撃ちたいんであって、前衛職になりたいわけじゃないしな……」
多くの者にとって、魔法とは遠くから安全に攻撃するものであり、わざわざ敵に近づいて殴る技術など、リスクが高いだけで魅力的に映らないのだろう。
だが、ミナトだけは違った。
その目には、未来の自身の姿が浮かんでいるのであろう。
グレンは言葉に力を込める。
「魔力纏いは、特定の属性を持つ魔法とは違い、純粋な魔力そのものを使うため、属性という概念はない。だが強いて言うなら、無属性とでも言っておこうか」
グレンの説明を聞きながら、ミナトの胸に強い期待が膨らんだ。魔法は使えない。
だが、魔力そのものを体で操る『魔力纏い』
それは、まさに彼が元いた世界で極めた武術と、今この体にある異端な魔力を融合させる、唯一無二の戦い方ではないか。
魔力によって肉体を強化し、技の威力を高める。
その未来が、微かに見えた気がした。
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