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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第一章 冒険者講習

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008 魔法と魔力の基本

 グレンは教卓に立つと、参加者全員を見渡した。

 その視線がミナトを一瞬捉えるが、すぐに他の者へと移る。


「さて、講習を始める。俺はギルドマスターのグレンだ。これから四日間、お前らに冒険者としての知識、生き抜く術を教えてやる。まず、冒険者として活動する上で、お前らが理解すべきは、この世界の根幹を成す『魔法』と、その元となる『魔力』の基礎だ」


 グレンはそう切り出すと、空中に手をかざした。

 彼の掌から淡い光が生まれ、やがて小さな炎の玉となる。


「まず魔法だが、これは体内に流れる魔力を特定の形に変換し、放出するものだ。基本となるのは火、水、地、風の四大属性。ここから派生して、雷、氷、光、闇、回復など、多岐にわたる魔法が存在する」


 炎の玉が水へと変わり、瞬く間に土塊となり、最後は風のように消え去った。

 他の講習生たちからは感嘆の声が漏れる。


「魔法を発動させるには、まず体内の魔力を感じ取ることが肝心だ。次に、発動したい魔法を頭の中で明確にイメージする。そして、発動と同時に呪文を唱えることで、そのイメージがより具現化しやすくなる。体内の魔力量が多ければ多いほど、また魔力のコントロールの錬度が高ければ高いほど、魔法の威力や発動までのスピードは増す」


 グレンは説明を続ける。


「ただし、魔法使いにはそれぞれ属性の相性がある。大抵の者は複数の属性を扱えるが、これも修練次第だ。中には、一つの属性しか使えぬ者も珍しくない」


 ミナトはグレンの説明に耳を傾けながら、自身の体内の『異端な魔力』を意識した。

 どうやっても、この世界の属性魔法として具現化できない。

 やはり、彼の魔力は、この世界の『魔法』の範疇には収まらないらしい。


「次に、魔法ではなく、その元となる『魔力』そのものについてだ」


 グレンの声が一段と重みを帯びる。その視線が、再びミナトに向けられた気がした。


「魔力は、言わばお前たちの体内に流れる力の源だ。魔法の発動にばかり気を取られがちだが、この魔力を自在にコントロールできるようになることが、冒険者として生き抜く上で非常に重要になる」


 グレンは自分の腕を軽く握りしめた。


「魔力のコントロールに長ければ、魔法の発動だけでなく、『魔力纏い』と呼ばれる技術も可能になる」


 彼の腕が、一瞬、微かに淡い光を帯びたように見えた。


「魔力纏いとは、体の全て、あるいは一部を魔力で覆う技術だ。これにより魔力をより体で感じることが可能となり、魔法威力、発動スピードの上昇に加え、通常よりも肉体が頑丈になったり、力やスピードが増す。極めれば、下級魔法で上級魔法をこえることや、拳で殴ることで、岩をも砕くほどの力を出すことも可能だ」


 そう言うと、グレンは教卓の横に置かれていた、太い丸太で作られた訓練用の木人に向き直った。

 予備動作もなしに、軽く拳を振るう。


 ドォンッ!!


 凄まじい破砕音と共に、木人の胴体がいとも簡単に弾け飛んだ。

 教室が静まり返る中、グレンは残った残骸に向けて、今度は指先を向けた。


 一瞬で身体に魔力を循環させると、先ほどよりも濃密な炎の弾『ファイアボール』を放つ。

 ゴウッ! と熱波が広がり、残骸は一瞬にして炭と化した。


「このように魔力を纏えば振るう拳は鋼となり、放つ魔法は強力になる。魔法を極めるにはまず魔力を知れ!」


 グレンの熱弁に、生徒たちがざわめく。

 だが、その反応は微妙なものだった。


「すげぇけど……殴る必要あるか?」


「俺たちは魔法を撃ちたいんであって、前衛職タンクになりたいわけじゃないしな……」


 多くの者にとって、魔法とは遠くから安全に攻撃するものであり、わざわざ敵に近づいて殴る技術など、リスクが高いだけで魅力的に映らないのだろう。

 だが、ミナトだけは違った。

 その目には、未来の自身の姿が浮かんでいるのであろう。


 グレンは言葉に力を込める。


「魔力纏いは、特定の属性を持つ魔法とは違い、純粋な魔力そのものを使うため、属性という概念はない。だが強いて言うなら、無属性とでも言っておこうか」


 グレンの説明を聞きながら、ミナトの胸に強い期待が膨らんだ。魔法は使えない。

 だが、魔力そのものを体で操る『魔力纏い』


 それは、まさに彼が元いた世界で極めた武術と、今この体にある異端な魔力を融合させる、唯一無二の戦い方ではないか。

 魔力によって肉体を強化し、技の威力を高める。

 その未来が、微かに見えた気がした。

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