070 ノクト家の長女
二人は門衛に近づき挨拶し、ミナトは用件を伝えた。
「おはようございます。国王補佐のアルフレッドさんに用があり伺ったのですが……」
ミナトの言葉に門衛は頷く。
「来客の方ですね。あちらで受付と入場審査を行いますのでお待ち下さい」
その言葉を受けて、二人は門の脇にある簡易的な応接室へと促された。
椅子に腰を掛けしばらく待つと、城内に繋がる扉が開く。
そこに現れたのは、書類を持った女性と一人の衛兵だった。
衛兵は扉の前に立ち、女性はこちらに近づき会釈をしたのち椅子に腰を下ろす。
「おはようございます。審査官のマキナと申します。本日はどのようなご用件でしょうか?」
二人は一礼し、ミナトが答える。
「おはようございます。ミナト=イチノセと申します」
ミナトはギルドカードを差し出しながら続けた。
「勇者コウキについての進展を、アルフレッドさんに伺いたく思いまして」
マキナは差し出されたギルドカードを確認し、書類を開いて名簿のようなものを照らし合わせる。
「ミナト=イチノセ様ですね。……はい、確認とれました」
ミナトはスムーズに事が進み安堵する。
(名簿に俺の名前でも書いてあるのか?)
「それとお連れ様、お名前を控えさせて頂きますので、身分証の提示をお願いします」
そう言われ、シスカはギルドカードを差し出す。
(そういえばシスカの姓はまだ教えてもらってないな……)
マキナはカードに目を通す。
「シスカ=ノクト様ですね。それではお二人の通行証を発行しますので少々お待ち下さい」
ミナトの頭の中に、ある名前が浮かび上がった
『王都最強』と謳われるSSランク冒険者、ルナ=ノクトだ。
シスカは考え込むミナトの顔を覗き込み、ため息をついた。
「はあ……迂闊だったわ。でもこの際だからミナトには話しておくわ」
ミナトは頷き、シスカの言葉に耳を傾ける。
「私はノクト家の長女として生まれた。ルナは長男で私の五つ上の兄よ。ノクト家は代々国でもトップクラスの魔法家系で、その血筋というだけで、周りからは嫌というほどに期待される」
シスカは少し肩を落としながら話を続ける。
「兄弟は他にもいるのだけれど、その中でも私だけは魔法の才に恵まれなかった。正確に言うと、人並みにしか魔法が使えないという程度ね。だから魔法以外の剣を使った戦法などを考えて鍛錬していたけれど、親はそれを認めてくれず、結果的にノクト家の恥として蔑まれていたわ」
ミナトは苦笑いを浮かべるシスカに、かける言葉を見失った。
「まあ、兄弟はそこまで強く当たってくることは無かったけれどね。……まあそれもあって、ノクト家でも過去最強と言われているルナを追い抜いて、私を蔑んだ奴らを見下すのが私の野望よ」
最後の一言はいつものシスカの笑顔に戻り、ミナトは安堵する。
「そんな過去があったんだな。でも魔法の才がないっていうけど、シスカは人並み以上に魔法を使いこなしていないか?」
ミナトの疑問はもっともだった。
実際、シスカは戦場において、高ランク冒険者にも引けを取らない俊敏な動きで活躍している。
「言ったでしょ、魔法は人並みだって。だから剣を人並み以上に鍛錬して、体の動かし方はグレンさんから叩き込んでもらったわ。だからこそ、魔力の少ない私でも最小限の魔法で最大限の効果を発揮する戦い方を編み出したのよ」
その言葉にはシスカの苦悩と今までの努力が垣間見えた。
「なるほどな。魔法以外の分野で補って……って、なんか俺に似てるな」
ミナトは少し笑いかける。
「ミナトとの出会いのきっかけはグレンさんだったけれど、パーティを組んでみようと思ったのは、私と同じ匂いがしたってのもあるわよ」
「似た者同士ってか。でもシスカにそんな過去があったなんてな……。今の実力でも十分見返せると思うけど」
ミナトの言葉にため息をつきながら答える。
「見返すんじゃなくて、見下すのよ」
シスカの言葉は、復讐というよりも、己を証明しようとする清々しい意志に満ちており、嫌味は一切感じられなかった。
「まあ、どんな理由であれ、強くなるための目標があるのはいいことだと思うよ」
ミナトの言葉にシスカは頷き、笑顔を見せる。
思わぬ形でシスカの家名と過去を知ることになったミナトは、彼女の抱える強い意志を理解した。
彼は、この秘密を胸に秘め、まずは城での用件を済ませるべく、マキナが戻るのを待つのであった。
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