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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第二章 Sランクへの道のり 前編

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064 ワイバーン討伐依頼5

クレイグたちが後方で次のワイバーンを打ち落とそうと尽力している最中、ミナトとシスカは最初の一匹目と接敵していた。


「近くで見ると中々に大きいな」


ミナトの言う通り、空中という遠距離では正確なサイズ感は把握しにくく、実物はミナトの想像をはるかに越えていた。シスカもそのサイズ感には驚いていたが、冷静に指示を飛ばす。


「左右から挟み込むわよ!」


二対一という戦況は、敵を中心に対角を意識すれば、おのずと敵の死角をつくることができる。ミナトたちの動きを警戒し、ワイバーンは翼をたたみ、四足歩行へと切り替える。睨みつけるかのような鋭い視線は、この状況でなお自分は狩る側だと主張しているかのようだ。


「隙がないな……だが、こっちは二人だ」


ミナトを睨みつけるワイバーンは、後方のシスカを警戒しきれていない。


(よし、いまだ!)


シスカはワイバーンに気取られぬよう後方から斬りかかる。だが、ワイバーンは見えていないはずの攻撃をステップ一つで軽々と避けるどころか、反撃も加えてきた。シスカの剣は空を切り、側面にワイバーンの尻尾が鞭のように伸びてくる。


「っと、危ないわね!」


シスカはそう言いながらも、持ち前のスピードで後ろに飛び、簡単に避けてみせる。


「ミナト、作戦変更よ。おそらく風の流れで気配を察知してるわ。死角なんてあってないようなもの。なら二人でスピード重視の攻撃を畳み掛けるわよ!」


シスカの提案にミナトは頷く。


「ああ、正直そっちの方が性に合ってる!」


ミナトたちは、最初は安全重視で闇討ちまがいな戦法をとろうとしたが、初手を軽く避けられてしまったことですぐさま意識を変えた。


「まあ、あんな攻撃で終わるようならBランクになんてならないよな!いくぞ、シスカ!」


ミナトの掛け声とともに二人はワイバーンへと迫る。不意打ちの一撃を諦め、手数重視に切り替えた彼らは思うがままにその本領を発揮する。


シスカの雷と氷を帯びた斬撃は、ワイバーンの固い鱗のせいで深い傷を負わせることは叶わないが、属性の効果により徐々にその自由を奪う。そして、ミナトの剣閃を帯びた斬撃は、ワイバーンの固い鱗さえも簡単に切り裂いてしまう。


シスカは手数で相手を翻弄し、ミナトは力を込めた一振りで確実に弱らせる。二人の戦法は似ているようで異なり、それぞれが役割を果たしている。ワイバーンも必死に抵抗する。爪を立て、尻尾を振り回し、噛みつこうともしてくる。だが、いずれの攻撃も完璧に見極め、圧倒した。


動きも鈍くなり、弱り果ててきた頃、ミナトはワイバーンの懐に飛び込む。なおも抵抗しようと爪を立ててくるが、跳躍によりその攻撃をかわす。だが、この跳躍は回避ではなく、攻撃であった。ミナトは爪をぎりぎりでかわし、頭にめがけて渾身の突きを放つ。その攻撃は頭蓋骨をも貫通し、脳をひと刺しにした。


無論、凶暴なワイバーンもその指令を出す元を断たれたことにより、ピクリとも動かなくなった。


「よし、まずは一匹!」


ミナトは飛速の出力と制御がかなり上達していた。より細かく、より速く発動することが可能となったため、先ほどの急接近、急上昇を可能としたのだ。その一部始終を間近で見ていたシスカも感心する。


「さすがね、ミナト。次は私が仕留めてみせるわ」


そう言いながら、少し離れたクレイグたちに目を向ける。クレイグたちは次のワイバーンを落とすのに少し手こずっているようだ。メリアの先ほどの一撃は、準備をする時間がとれたため安定した射撃ができたが、残り二匹のワイバーンはそれを警戒して接近し、爪を立てたり、中距離から風魔法を放つなどして妨害してくる。


「集中して詠唱ができない……!」


メリアへの攻撃はクレイグがうまく防いでくれているが、目の前を縦横無尽に飛び回られ、うまく詠唱ができていない。それだけに、単属性の重ねがけというのはイメージが難しいのだろう。


「クレイグさん、メリアさん、目を閉じてください」


セイラはそう言うと、光の魔法をイメージする。


「ブラインド・フレア!」


セイラが魔法を放つと、杖の先から高密度の光が爆発するかのようにあたりを照らす。実際にダメージを与えるわけではないが、離れたミナトたちにも眩しさを感じさせるほどの光だ。至近距離で直視しようものなら、その視力を一定の間奪うであろう。


「今です、メリアさん!」


セイラの魔法によって混乱状態に陥ったワイバーンは、攻撃の手を止め、ふらふらと飛んでいる。


「ありがとう、セイラさん!二匹とも落とします!エンチャント!」


メリアは先ほどと同じ魔法を発動し、矢を二度放つ。ワイバーンは避ける術もなく片翼をもがれ、二匹とも墜落していく。


遠くからその光景を見ていたミナトとシスカは、すぐさま落下地点へと向かう。


「一人一匹、いけるな?」


「もちろん。どっちが速く倒すか勝負よ!」


二人は別々の落下地点に向かい、ワイバーンと接敵する。クレイグたちもそれを援護するべく、落下地点へと向かう。


最初にワイバーンと遭遇したのはミナトだった。先ほどと同等の大きさのワイバーンを前にして、ミナトは剣閃を発動させる。


「勝負……といわれたら負けるわけにはいかないな。悪いが、一撃でいかせてもらう」


ミナトはそう言うと、剣を下に構え、剣先を自身の後ろに向け、呼吸を整える。不気味な静寂がほんの一瞬流れる。その一瞬が無限の時間になることを、ワイバーンは知る由もなかった。


「残月の構え・一閃!」


技の発動と同時にミナトはそこから消える。消えるというよりは、速すぎて目で追えないといった方が正しい表現だろう。


一瞬のうちにミナトはワイバーンの後方に移動し、剣をすでに鞘に納めていた。ワイバーンはピクリとも動かない。なぜならすでにミナトによって首を切り落とされていたからである。ゆっくりとその首がずり落ち、ワイバーンは倒れこんだ。


これはコウキとの稽古のときに編み出したミナトのオリジナルの技だ。相手の武器もろともへし折る一撃が、この世界の魔力と合わさることにより、究極の一撃へと進化したのだ。


「さすがに俺の勝ちだよな」


ミナトは離れたシスカに視線を向ける。彼女はまだワイバーンと戦闘中だったが、すでにワイバーンは弱り果てていた。決着も時間の問題だろう。


動きが鈍くなったところで、シスカはとどめの一撃を放つべく上空に飛び上がる。


「氷剣・グレイシャル!」


シスカの剣から放たれた極寒の斬撃は、かつてグリフォンをも葬った一撃だ。ワイバーンは避ける間もなく直撃を受け、その巨体が瞬く間に白い氷の彫像と化す。


「少し時間かかっちゃったけど、私の勝ちよね」


シスカはそう言いながらミナトの方を見る。しかし、ミナトはすでにシスカの近くで座って見学していた。


「お疲れ、シスカ」


「なっ……もう倒してたの!?」


驚くシスカの前で、ミナトがにやけ顔で勝利を確認する。


「私の負けよ……」


ちょうどそこへ、クレイグたちも合流する。クレイグは息を切らしながら言った。


「二人とも、倒すのが速すぎますよ……」


援護しようと急いで走ってきてくれたのだろう。


「地上戦は俺たちの仕事だからな。でも、急いで来てくれてありがとう」


ミナトはクレイグたちに礼を言う。


「さあ、暗くなる前に魔石を回収して、村長さんのところへ戻りましょうか!」


シスカはそう言い、魔石を回収する。ワイバーンとの熾烈な戦いはパーティーの連携によって、無事勝利することができた。

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