063 ワイバーン討伐依頼4
翌朝、ミナトたちは村長の家を訪れ、出発の挨拶を告げた。
「おはようございます!それではワイバーン討伐に行ってきます!」
ミナトが力強く言うと、村長は「おはようございます。『零閃の狼煙』の皆さん、今日はよろしくお願いします」と温かい言葉で送り出してくれた。
村を出てしばらく森の方へ進むと、上空を旋回する三匹のワイバーンの姿が見えた。まだ遠いが、確かに村からそう離れていない。いずれ村が襲われる可能性も十分考えられるだろう。
「依頼のワイバーンはきっとあれね」
シスカがそう言うと、クレイグが続けてワイバーンの特徴について説明し始めた。
「昔はグリムロックでも鉱山採掘の際に何度か遭遇することはありました。厄介なのは、やはり爪の毒ですね。かすっただけでも体が痺れて動かなくなるので注意してください。それに、滞空しているのが厄介です。遠距離魔法を当てるのはかなり難しいかもしれません」
クレイグの言葉に、メリアが控えめに声を出す。
「あ、あの……私の弓なら翼を撃ち抜けると思います。弓を放つときに風の魔法を重ねがけして、威力、速度、追尾を付与できるので、翼くらいの大きな的なら問題ないかと!」
メリアの言葉に、セイラとシスカが驚きの表情を見せる。
セイラが口を開いた。
「同じ属性を重ねがけなんてできるんですか!?」
「はい、風に限らず他の属性でもできると思いますよ!ただ、少し難しいので練習は必要ですけどね!まあ、私に至っては属性魔法は風しか使えないので、覚えるしかなかったってのがありますけど……」
次にシスカが話す。
「今までその属性の最大限の効果を一つだけイメージして、強化魔法を使うことしか考えたことがなかったわ……。確かにそういう使い方もあるのね」
するとクレイグがハッとしたように喋り出す。
「父さんが鍛冶をしているときに使ってるのを見たことがある気がします。打っている剣に切れ味強化や強度強化を付与しながら叩き続けていました。まさにそれが単属性の重ねがけってやつだったんですね!」
「その属性のイメージが固まってしまうと、なかなか他の効力をイメージしにくくなってしまうので、複数の属性を扱える人ほど、習得は難しいかもしれません」
メリアの言葉を聞き、ミナトは考え込んだ。
(同一属性の魔法の重ねがけか……。魔力でも同じことができるだろうか……今度試してみよう)
そんな会話をしながらも、一行はワイバーンのもとへと近づいていく。
「すいません、私のせいで話がそれてしまいましたね」
メリアは、ワイバーンを打ち落とせるかという話からずれてしまったことを謝罪する。セイラたちも「私たちも同じようなものですよ」と笑い、シスカが作戦の内容を話し始めた。
「じゃあ、ワイバーンはメリアに打ち落としてもらうとして、セイラとクレイグはその援護をお願い。私とミナトは予定どおり地上戦でワイバーンと戦うわ。これでいいかしら?」
その言葉に全員が頷き、作戦が始まった。
「まずは一匹、こちらに気づかれてないうちに落としてしまいますね」
メリアはそう言いながら弓を構える。魔力を集中させ、風の強化魔法を発動させた。
「エンチャント・フォース、ヴェロシティ、ホーミング」
発動と同時に、メリアの弓からは嵐のような風が吹き荒れる。今にも暴れだしそうな風を、彼女は正確にコントロールする。ソロでBランクまで上がったという事実は伊達ではないようだ。
「では放ちます!」
メリアの一言と同時に、戦闘が開始された。彼女が放った矢は、小さな竜巻のように螺旋を描きながら、遥か上空を滑空しているワイバーンへと吸い寄せられていく。
ワイバーンは危険を察知してその場から離れようとするが、矢には追尾性能に加え、速度補正もエンチャントされているため、見事に翼へ着弾した。
着弾と同時に、矢に纏わりついていた風が着弾場所周辺を切り刻む。一匹目のワイバーンはゆっくりとだが、地面へと墜落していく。
その光景を見て、ミナトは地上戦を開始する。
「これがメリアの弓か!すごいな!よし、俺たちもいくぞ!」
「ええ、負けてられないわ!」
ミナトは刻付と剣閃を、シスカは雷と氷の魔力を纏い、ワイバーンの墜落地点へと超加速で向かう。そのスピードを目の当たりにして、メリアは驚きを隠せない。
「あの二人、あんなに速いの!?」
その言葉に、セイラが苦笑いを浮かべる。
「あれでも、成長途中らしいですよ」
「まだ速くなるんですか……」
二人の話を遮るように、クレイグが声を張り上げた。
「他の二匹がこちらに気づき、近づいています!警戒してください!」
三人はそれぞれ防御、サポート、攻撃と役割を分担し、熾烈なワイバーンとの攻防が始まるのであった。




