061 ワイバーン討伐依頼2
ワイバーン討伐の依頼を受けた一行は、出発の前に道具の買い足しに来ていた。
「ワイバーンの爪には毒がありますので、万が一のために解毒剤を買っておきましょう」
クレイグがそう言い、いくつか購入する。
「あ、そういえば、この間マナポーション使っちゃったから、買い足しておこうかしら」
シスカがそう言うと、ミナトが口を開いた。
「この間のグリフォン討伐のときか?」
「ええ。私はもともと魔力量はそこまで多いわけじゃないから、魔法使いすぎるとすぐ枯渇しちゃうのよね。まあ、それもあってのこの相棒があるのよ」
シスカはそう言いながら、愛用の剣を擦る。
「前から気になってたけど、その剣、グリムロックでも店主に良い剣だって褒められてたけど、どこで手に入れたんだ?」
「これはグレンさんからもらったものよ。ダンジョンで入手したものだとしか言われてないから、詳しいことはわからないんだけど、もらったその日から手に馴染む感覚があって、今では手放せないわ」
「グレンさんもダンジョンに潜るのか?」
「あの人、ギルドにいないときはだいたいどっかで武者修行してるわよ。生涯現役とか言ってたわ」
シスカは笑いながらグレンの話をする。
「グレンさんらしいと言えば、それもそうか」
「それで、ダンジョンで剣を見つけたはいいけど、あの人武器使わないじゃない?それでその時、伸び悩んでいた私に『これ使ってみろ』って言ってこの剣を渡してくれたのよ」
「そんなエピソードがあったんだな。確かにグレンはシスカに一目置いてる感じがあるもんな」
「それを言うならあなたもでしょ。魔法が使えないのにグレンに稽古つけてもらってたじゃない」
シスカとミナトのやり取りを聞いていたメリアが話に入ってくる。
「ミナトさん、魔法が使えないんですか!?」
「うん、俺は魔法は使えないよ。外部からのエンチャントや、強化魔法の類いも寄せ付けないんだ」
ミナトの言葉に目を丸くして驚いたメリアだった。
「魔法が使えない人、初めて見ました! 異能体……っていうんでしたっけ?」
「俺の場合、魔力はあるから、異能体ではないと思うよ。この世界の魔力と俺の体内に流れる魔力が違うせいで、魔法として発現できないらしいんだ。あと、メリアが感じた俺のマナってのも、それが原因なのかな?」
「確かに、他の方とも違う感じのマナをミナトさんからは感じるので、そうかもしれませんね……。でも、魔法なしでどうやって戦うんですか?」
メリアの疑問も当然だろう。刻付は魔導師としての高みを目指すなら必須の技能だが、身体能力を上げるのを目的として使うというより、魔法の威力を上げるためにつかうのが常識である。
それに、ミナトにとって当然である剣閃や飛速といった技能は、魔法によって補うことができるので、魔導師として優先的に覚える必要のない技能なのだ。ミナトが説明しようとすると、セイラが割って入る。
「ミナトさんは魔法なんてなくても、すっごく強いんですよ!魔力纏いを極めているので!」
なぜかセイラが自慢げに話している。
「それじゃ説明になってないし、まだ極めてはないぞ」
ミナトも笑って返し、続けて説明をする。
「まあ、魔法は使えないけど、魔力は常人より多いから、それで魔力纏い・刻付で身体能力を上げているんだ。他にも、剣に魔力を流したり、少しくらいなら空を蹴ることもできるぞ」
ミナトの説明にメリアは納得したようだ。
「なるほどですね!たしかに魔力纏いを極めているのなら、魔法なしでも戦えますね!」
「だからまだ極めてはないって」
ミナトは苦笑いを浮かべながら否定する。そんな話をしていると、買い物を終えたクレイグがやってくる。
「皆さん、お待たせしました。一通り買い揃えることができました」
「ありがとう、クレイグ!よし、じゃあ出発するか!」
ミナトの掛け声とともに、一行はワイバーンの生息地へと向かうのであった。
途中までは、セイラが試験で通った道と同じルートをたどることになる。
「もう少し進むと滝があって、そこが試験の場所だったんですよ!」
セイラは意気揚々と試験の出来事を語る。皆もセイラの言葉に耳を傾け、セイラの成長ぶりに感銘する。
「コロンでの魔道書は役に立ったみたいね。わたしも魔道書のおかげで、氷の魔法の扱いにもだいぶ慣れてきたわ」
シスカがそう言うと、セイラは頷いた。
「はい!あの魔道書を読んでいなかったら、討伐は難しかったかもしれないです!」
シスカとセイラは、コロンに立ち寄ったことで、自身の可能性を広げることができたようだ。
その後も会話をしながら進み、時折休憩を挟んだりなどして初日を終える。
「そろそろ日も暮れますし、ここら辺でテントを張りましょうか」
クレイグはそう言いながら、リュックからテントなどのキャンプグッズが続々と出てくる。ミナトはその光景を見て感心する。
「空間魔法だっけ?本当にそのリュックはすごいな」
「ええ、少々値は張りましたが、これはほんとに買って良かったです」
クレイグのおかげで、あっという間に寝床と食事スペースが出来上がった。
「こんな贅沢な野宿は初めてです!」
メリアはこの光景にびっくりする。
「クレイグは料理も上手なのよ」
シスカの言葉に、クレイグは謙遜しながらも「うちの母さん仕込みの腕なので」と少し誇らしげにする。
野宿とはいえ、美味しいご飯とちゃんとした寝床があることによって、一行はしっかりと休息をとることができた。そして明日に備え、見張りを順番に行い、眠りにつくのであった。




