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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第二章 Sランクへの道のり 前編

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058 エルフの少女

翌朝、ミナトは一人、ギルドの依頼掲示板を眺めていた。どうやらまだ他のメンバーは来ていないようだ。


「みんなが来る前に、めぼしい依頼の候補でもつけておこうか……」


零閃の狼煙は昨日付けでBランクへと上がった。Bランクともなれば、報酬もギルドポイントも高くつくが、長期の遠征依頼や護衛ばかりで、なかなか近場でこなせる依頼は少ない。


リビアから「ランク上げなら近場の依頼を複数受けるのが効率がいい」と言われたことを思い出し、どうしたものかと悩んでいた。


その時、ミナトの背後から、控えめな声が聞こえてきた。


「あのー……すいません、もしかして、Bランクの依頼受けようとしてますか?」


ミナトは知らない顔に戸惑いながらも頷いた。


そこに立っていたのは、翠色の髪と瞳を持つ一人の女性だ。その髪の隙間から見える耳は、エルフのように尖っている。肌は透き通るように白く、背丈はミナトより少し低いくらいだ。華奢な背中には、弓を携えている。


「い、いきなり声をかけてしまって、すいません。実は私、最近ランクアップしたばかりで……Cランクまでは一人でこつこつこなせる依頼を受けてたんですが、Bランクになった途端、難易度が急に上がったというか……一人での限界を感じてしまって……」


彼女は顔を上げ、真剣な顔をした。


「た、単刀直入にいいますと、私とパーティをくんれくりゃっ」


なんとなく聞き取れはしたが、盛大に噛んでいた。彼女は顔を真っ赤にして下を向いてしまう。みかねたミナトは、聞き取れた言葉をもとに確認する。


「えっとー……つまり、俺とパーティを組んで、一緒にBランクの依頼を受けたいってことでいいのかな?」


「は、はい! すいません。実は今までパーティ組んだことがなくて……あまり人と話すのも得意ではないんです。でも、その、あなたからは、他の人と違うマナを感じたというか……なぜだか話しかけやすいといいますか……なんか説明が下手ですいません」


再び彼女はうつむいてしまう。


「気にしないでいいよ。ところで、そのマナってのは、魔力とは違うのか?」


ミナトは疑問に思ったマナについて聞く。


「ま、マナっていうのは、魔力とは違くて、魔力がもたらす周囲への影響? みたいなものです。エルフにしかわからない感覚みたいなものなんですけど、たとえば、マナの悪い人が動物を育てると、凶暴になりやすく、逆にマナの良い人が育てると、おとなしく懐きやすくなる……みたいな?」


所々、自らの説明に疑問符を打つ彼女の説明は正確な理解が難しいが、ミナトはなんとなくわかったような気がした。


「つまり、俺からは、話しかけやすいマナが流れてるってことかな?」


「ち、違います違います! 話しかけやすいのは雰囲気の話で、マナは他の人と違って、感じたことがないのに安心できるような……。とにかく、いい人なんだなってのが、話しかける前から滲み出ていました!」


「なるほど...。じゃあこのいい人と一緒にパーティを組んでほしいってことかな?」


「もー!!」


少しミナトがからかうと、彼女は顔を真っ赤にして、自分の言ったことが恥ずかしくなってしまったようだ。


「ごめんごめん、つい」


ミナトは少し謝ると、続けて話す。


「パーティの申し出はすごく嬉しいんだけど、実はもうパーティを結成しているんだ。だから、仲間との相談も必要だし、君自身も、俺以外のパーティメンバー次第では、辞退したいとかあるだろ? だから、良かったら一度、メンバーと話してみないか?」


ミナトの提案に、彼女は頷いた。


「そ、そうだったんですね。そうとは知らずに、いきなりパーティを組んでほしいなんて言ってしまい、すいませんでした。もしよかったら、何かの縁ですし、一度話だけでも聞いてみたいです!」


「わかった。多分もうじきみんな集まると思うから、しばらくそっちで話して待ってようか」


ミナトはテーブルを指差し、そちらに移動する。


席に着くと、話の続きをする。


「そういえば、自己紹介がまだだったね。俺は零閃の狼煙のリーダー、ミナト=イチノセ、Cランク冒険者だ。君は?」


「私は、メリア=アルストアと申します。Bランクの冒険者です!」


互いの自己紹介を済ませ、ミナトは気になっていたことを質問する。


「メリアさんはエルフってことでいいのかな?」


「はい。王都ではあまり見ませんよね……。それもあって、なかなか他の方と馴染みづらいといいますか……」


「確かに、見るのははじめてかも。さっきのマナってのはエルフならみんな見えるものなのか?」


「はい!マナの感じかたは、エルフによって違いますけどね」


「なるほど……そのマナっての、興味深いね」


エルフしか感じとれない、印象のようなものなのだろうか。それとも直感のようなものなのだろうか。


(メリアの言っていることが正しいなら、俺の魔力は異質ではあるけれど、この子にはいい影響を与えられているのかな……)


そう思いながら腰の卵に手を当てる。自分の魔力が卵にどうゆう影響を及ぼしているか、不安ではあったが、メリアの言葉に少しばかり安堵することになる。

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