057 Bランクパーティ
クレイグは、ダンジョンを出ると、守衛小屋のおじいさんに挨拶をした。ミナトと違い、半日ほどかかってしまったが、「お疲れ様。無事で何よりじゃ」と言われ、少し嬉しくなる。時刻は夕方くらい。空はオレンジ色に染まり、地面に伸びる影が長くなっていた。
(みんなは、まだギルドにいるだろうか……)
そんなことを思いながら、クレイグは一人、ギルドへ向かった。
しばらく歩き、ギルドへ到着する。中に入ると、テーブルにミナト、シスカ、セイラの三人が座っていた。ミナトが先にこちらに気づき、笑顔で手を振る。
「お帰り、クレイグ。試験はどうだった?」
ミナトの言葉に、シスカとセイラも「お疲れさま」と声をかけてくれる。その言葉に、クレイグはパーティーの暖かさを感じる。
「ただいま、皆さん! デュラハン討伐、完了です。今からリビアさんのところにいき、報告してこようかと思います」
クレイグがそう言うと、シスカが立ち上がった。
「なら、みんなで行きましょうか! 」
四人全員でリビアのところへ向かう。クレイグの報告を受け、リビアはクレイグのランクアップを認めた。
「デュラハンの魔石で間違いありません! 試験合格、おめでとうございます、クレイグさん!」
リビアの祝福の言葉に、クレイグの顔に安堵と喜びの表情が浮かんだ。
「では、ランクを更新しますので、プレートとギルドカードをお願いします」
言われた通り、クレイグはプレートとギルドカードをリビアに手渡した。
「はい!では更新してきますので、少々お待ち下さい」
リビアが奥へと向かっていったのを見届けると、ミナト、シスカ、セイラの三人は、クレイグを囲むように集まった。
「クレイグ、おめでとう!」
「やったわね、クレイグさん!」
「Cランク昇格ですね! すごいです!」
三人の祝福に、クレイグは照れくさそうに笑う。
「ありがとうございます。でも、まさか冒険者登録をして間もないのに、もうCランクに到達できたなんて、夢みたいです」
「夢じゃないわ。全部、あなたの実力よ」
シスカはそう言って、クレイグの肩を軽く叩いた。その言葉に、クレイグの顔に確かな自信が満ちる。
喜びに浸る間もなく、リビアが戻ってきた。
「お待たせしました!」
新しいCランクの文字が刻まれたプレートとギルドカードをクレイグに手渡す。
「これにて皆さんのランクアップが終了しました。よって、零閃の狼煙のパーティランクも上がります。Bランクに昇格です!」
リビアの言葉に、皆は歓喜する。Bランクパーティー。冒険者としては、ようやく中堅といった位置だろうか。目指すSランクはまだ遠いが、順調に進んでいる。
「皆さん、おめでとうございます! Bランクパーティーへの昇格です!」
リビアの祝福に、四人は互いに顔を見合わせ、喜びを分かち合った。
「せっかくなので、みんなでご飯でも食べに行きませんか?」
クレイグが提案すると、ミナトは笑顔で応じた。
「じゃあ、祝勝会といきますか!」
ミナトの声に、シスカとセイラも賛同し、四人は食事をすることにした。場所を決める時間もなさそうなので、以前訪れた、中央通りの酒場にすることにした。
各自好きなものを注文し、他愛もない会話をしながら食事を楽しんだ。
「そういえばシスカはAランクに上がったけど、Sランクに上がる条件は聞いたのか?」
ミナトが尋ねると、シスカは答える。
「国家に貢献して、グレンを倒せだってさ」
「簡潔にしすぎだろ」
ミナトは苦笑いする。
「まあ、国からの依頼とかこなして、国王から認められた上で、グレンにも認めてもらわないと、Sランクには上がれないってことよ」
シスカは少し説明を付け足した。
「なるほど。AからSに上がる道のりは遠そうだな……」
「そうね……。でも、すぐにでもなってやるわ!みんなもついてきてね!」
シスカの言葉に、クレイグとセイラも気持ちに答える。
「はい、もちろんです!」
「がんばります!」
「ランクといえば、ミナトさんはすごく強いと思うのですが、なんでまだCランクなんですか?」
クレイグがふと疑問に思ったことを口にする。
「デュラハン戦、わたしはかなり苦戦しました。でもミナトさんは呆気なかったと……。同じCランクとは思えないといいますか……」
ミナトは苦笑いする。
「俺の場合、スタートが最底辺のFランクだったからな」
「Fランクスタートだったんですか!?でも、魔力纏いとかすごいじゃないですか!」
「実は俺の魔力が、ギルドの装置に反応しなくて、魔力0っていう扱いになってるんだ。それで、Fランクからスタートになったんだ」
隠していたわけではないが、この事はシスカにしか話していなかった。ミナトの言葉に、クレイグとセイラは驚きを隠せない。
「まあ、そのおかげでみんなに出会えたって思えば、全然よかったと思うよ」
ミナトが笑いながら言うと、セイラが答える。
「私もあのとき声をかけてもらえなかったら、冒険者として自立なんてできてなかったと思います」
シスカも続けて言う。
「わたしの場合、尊敬する師が同じであったからって感じかしら? グレンさんがいなかったら、あのとき訓練場で顔を会わせることなんてなかったもんね」
シスカの言葉に、ミナトは王都に来たばかりの記憶が蘇る。右も左も分からないときに、グレンという男がミナトを気にかけてくれたおかげで、ミナトはこの世界での戦いかたを身に付けることができた。
「ほんと、グレンさんには感謝だよな……」
ミナトが感傷に浸ろうとするが、グレンの名前を出して思い出す。
「そういえばさっき、グレンを倒すとか言ってなかったか?」
シスカは答える。
「グレンなりの試験らしいわよ。公式ではないみたいだけど、結局認められるには倒すしか無いわよね……」
「あの人に勝てるビジョンが見えないな」
ミナトが言うと、みんなの顔に緊張が走る。皆グレンの強さを知っているからこそ、立ちはだかる壁がいかに大きいかを知ることになる。
「講習のときの最終日、まだ駆け出しとは言え、私のアクア・サイクロンを軽々避けてましたし、ミナトさんとの手合わせでも、かなり手加減してる感じでしたよね……」
「ああ、あの時はグレンさんは魔法を使うこともなかったしな……。身体能力だけでも計り知れないのに、さらに魔法まで使われたら……」
ミナトは頭を抱えたくなるが、同時にそれだけ尊敬に値する師であるとうことだ。
「いつかは、みんなで越えて見せましょう!」
クレイグの言葉に、皆頷く。
「さあ、そろそろお開きにしましょうか。また明日から頑張りましょう!」
シスカの掛け声とともに祝勝会は終了した。明日からのBランクパーティとしての活動を胸にそれぞれの帰路についた。




