053 魔法のイメージ
セイラはランクアップの手続きを終えると、リビアにミナトとクレイグの居場所を確認した。
「クレイグさんは姿をみていませんが、ミナトさんなら朝から訓練場にいますよ」
リビアがそう伝えると、セイラは「ありがとうございます」と一礼し、訓練場へと向かった。
一方、ミナトは朝から剣閃や、衝波、そして刻付の出力上げなどの鍛錬に励んでいた。
クレイグは「今日もダンジョンに入ってくる」とだけミナトに告げ、出掛けていった。
ミナトは一人、たまに休憩を挟みながら、ひたすら魔力の操作をイメージしていた。
放出する魔力の総量を増やし、それを正確にコントロールし、体の外と中の境界に留める。
ミナトの魔力量は底が知れないが、結局コントロールできなければ、ただの垂れ流しになってしまう。
だからこそ、コントロールできる魔力の総量を増やす必要がある。
普段と違う魔力量のコントロールには集中力が必要だ。
だが、それを繰り返すことにより、徐々に魔力纏いの出力を上げることができ、出力が上がればスピードやパワー、技の切れを増すことができる。
そんな鍛錬をしていると、後ろから声をかけられた。
「ミナトさん!」
聞き慣れた声に、ミナトは振り返る。そこに立っていたのは、笑顔のセイラだった。
「セイラか! 帰ってきたってことは……試験はどうだったんだ?」
ミナトの問いに、セイラは首から下げているプレートを見せながら、胸を張った。
「Bランク昇格です!」
「おめでとう! さすがセイラだな! 俺もCランクに上がったよ」
セイラのランクアップを祝福し、ミナトも自身のランクアップを報告する。
「ありがとうございます!ミナトさんもおめでとうございます!」
お互いにランクアップできたことを称えあった。
「ところで、今は何をされてたんですか?」
セイラの問いに、ミナトは魔力纏いの鍛錬をしていたと答える。
体内の魔力を普段より多めに放出し、それをコントロールする鍛錬をしていたのだ。
「魔力纏いの鍛錬ですか! 私もミナトさんみたいに刻付を維持できるように、たまに鍛錬しているんですよ」
セイラはそう言いながら、刻付を発動した。
魔力コントロールに長けている彼女は、いつの間にか刻付を纏えるようになっていた。だが、すぐに魔力が乱れる。
「まだ少ししか維持はできませんけど」
セイラは笑いながら言う。
「いや、刻付を纏えるだけでも十分すごいと思うよ!それに、纏うことができるのなら、あとはひたすら体に叩き込むだけだからね」
ミナトのアドバイスに、セイラは「はい!」力強く返事をした。
「あ、そういえば、クレイグさんはどこにいるんですか?」
「クレイグなら、ソロの鍛錬でダンジョンに潜ってるよ。夕方になれば帰ってくるとは思うけど、どうかしたのか?」
「実は光魔法を最近まともに使えるようになってきたので、水魔法との複合魔法を考えてるんですけど、良いイメージが思い浮かばなくて、アドバイスを貰おうかなと思って...」
セイラは自身より見聞の深いクレイグに相談してみようと思ったのだと話す。
するとミナトは興味を示した。
「光と水か……。魔法ってのは、イメージが大事だとグレンさんが言っていたけど、イメージってのは、自分がどういう現象を起こしたいかとか、どういう形のものを作りたいか、ってことで間違いないか?」
セイラは頷く。
「はい! 例えば、私のアクア・サイクロンは、風魔法で竜巻をイメージして、そこに水という質量を加えることで、地面をえぐるような威力になるんです。人によってイメージの仕方が違うので、魔法の種類は無数にあるんですよ」
「なるほど。俺は魔法はからっきしだけど、こういうのはできないか? 水を高密度なレンズのような形に生成して、そこに光魔法の光と熱を反射させて、レーザーのように打ち出すとか!」
「レーザーですか……! すごいイメージですね! 少しやってみますね!」
セイラはミナトの言葉に目を輝かせ、すぐに杖を構えた。
水を圧縮し、高密度な水のレンズを作り出す。そこへ光魔法を加え、レンズの反射で一点集中の高熱源レーザーを打ち出すイメージ……。
杖の先に水晶のような水の球体が出現し、まばゆく輝き始める。
だが、光は拡散したまま、一点集中の光線にはならなかった。
「さすがにすぐにはイメージが固まりませんね」
セイラは少し落ち込むが、すぐに顔を上げた。
「けど、なんとなく感覚は分かりました!あとは、光の屈折の仕方などを研究し、全ての光を一点に放出することが可能な水晶体を作り出せれば、レーザーのような使い方もできるかもしれません!ミナトさん、ありがとうございます!」
「まあ、俺は魔法は全く使えないけどイメージだけなら元居た世界での知識もあるし、役にはたてると思うよ。もしまた行き詰まったらいつでも相談のるから」
ミナトはそう言いながら、自身の鍛錬に戻った。
セイラもまたミナトの近くで、邪魔にならないように魔法の鍛練を始める。
シスカの帰還まで、各々が明確な目標を見据え、鍛練に励む毎日がしばらく続いた――。
そのころシスカは馬車を乗り継ぎ、大渓谷のちかくの村で下車し、徒歩で数時間ほど歩く。
三日ほどの旅路を終え、ついにグリフォンが生息すると言われる、東の大渓谷へと到着した。
「やっと到着したわ」
シスカはそう言いながら辺りを探索し始める。
見通しの良い野原に、大地が割れたかのような巨大な渓谷。下を覗くも底が見えない。
「みるだけでもおっかないわね。グリフォンはどこにいるのかしら?」
そういい、渓谷に背を向けると、背後から風切り音が鳴り響く。
シスカは警戒し谷から距離を取る。すると、谷の底から巨大な飛行物体が姿を表す。
体長は5メートル程だろうか。ライオンと鷲を合成したかのような生物、『グリフォン』だ。
ぐおぉぉぉ!
けたたましい雄叫びを上げ、シスカを睨む。
「やっとお出ましね。覚悟しなさい!」
シスカは剣を抜き放ち、グリフォンとの戦闘が始まった。
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