052 セイラの激闘
ミナトが一人、訓練場で剣の鍛錬に励んでいる頃、セイラは王都から川に沿って半日ほど進んだ場所にある、大きな滝に到着していた。
轟音を立てて流れ落ちる滝の裏には、ぽっかりと口を開けた洞窟がある。
そこが、ヘルシザーの縄張りの入り口だ。
「こんなところに、ヘルシザーがいるのかな……」
セイラは緊張した面持ちで、洞窟へと足を踏み入れた。
内部はひんやりとしており、水の音が反響している。
足元には水が流れ、滑りやすい岩場が続いている。
しばらく進むと、開けた空間に出た。
そこは、水が流れ、太陽の光が差し込む、神秘的な場所だった。
しかし、その水面には、複数の黒い影が蠢いている。ぶくぶくと泡を立てながら、三匹のヘルシザーが水面から飛び出してきた。
体長は2メートルほど。固い甲殻と、巨大な爪が特徴的な、カニのような魔物だ。
彼らはセイラを囲むように、威嚇するようにハサミを振りかざした。
セイラは突然の接敵に驚くが、すぐに戦闘態勢に入った。ヘルシザーは水棲の魔獣。シスカやクレイグが使うような雷魔法や火魔法は効果が高いが、水魔法は効果が薄い。
(風魔法で、あの固い甲殻を切り裂く!)
セイラは杖を構え、魔力を風の属性へと集中させる。鋭い切れ味をイメージし、呪文を唱えた。
「ウインド・カッター!」
セイラが放った魔法は、地面を切り裂きながら、正面のヘルシザーへと向かう。単属性魔法とはいえ、セイラの洗練された魔力はその威力を飛躍的に高めていた。だが、ヘルシザーは、その大きな爪で身を守る。
ガキン、ガキン!
まるで鉄と鉄がぶつかり合うかのような衝撃音だ。セイラが放った魔法は爪に防がれ、致命傷には至らなかったが、その爪を大きく損傷させることに成功する。
「切り裂けない……!」
セイラは驚きを隠せない。ヘルシザーの甲殻は、想像以上に頑丈だ。このままでは、ジリ貧になる。
(あの固い甲羅を砕くような一撃……いや、違う! 弱点があるはず! そこを精密に撃ち抜く攻撃だ!)
セイラはヘルシザーの水魔法を避けながら、思考を巡らせる。
コロンで手に入れた光魔法の応用に関する魔道書が脳裏に蘇る。
彼女は光魔法で高密度の光の矢を作り出し、それを風属性の力で高速で打ち出すことを思いついた。
「風魔法による加速で、光の矢を放つ!」
セイラは杖の先に光の魔力を集中させる。
そして、その矢に風の魔力を纏わせ、呪文を唱えた。
「ライトアロー!」
杖の先から放たれた、一点攻撃の正確な光の矢が、圧縮された風に打ち出され、一直線にヘルシザーへと向かう。
光の矢は、ヘルシザーの甲羅の隙間を正確に撃ち抜いた。
ザシュッ!
その音は、甲羅に当たったときとは明らかに違った。
そして、この攻撃はこれで終わりではなかった。光の矢は、着弾と同時に、高密度な光を解放する。
「ライト・ノヴァ!」
『光の爆弾』という表現が正しいだろうか。
圧縮された光は瞬く間に膨れ上がり、ヘルシザーを内部から破壊し、戦闘不能に追いやる。
「よし! いける!」
セイラは、光魔法の新たな可能性を手に入れた。
残りの二体にも同様に、甲羅の隙間を正確に射抜き、内部から爆発させる。
ヘルシザーは逃げる間もなく、次々と消滅した。
「ふぅ……」
一息着き、魔石を回収する。これで3体のヘルシザーを倒したが、討伐数はまだ足りない。
セイラは、自分の魔法に新たな可能性を見出したことに、喜びと達成感を噛み締めていた。
(光魔法……いける!この魔法なら、ヘルシザーの弱点を突くことができる!)
彼女は、以前の自分からは考えられないほどに自信に満ちていた。
残りのヘルシザーを探すため、さらに洞窟の奥へと進んでいく。
しばらく進むと、再び広い空間に出た。そこには、岩陰に隠れるようにして、二体のヘルシザーが潜んでいた。
まだこちらには気づいていないようだ。
(ちょうど二体……! 近づかずに、遠くから魔法で仕留める!)
セイラは、ヘルシザーに気づかれないよう、岩陰に身を潜めたまま、杖を構えた。
彼女は、先ほど会得したばかりの光魔法を、遠距離から放つ。
「ライトアロー!」
セイラが魔法を放つと、圧縮された風に打ち出された光の矢が、一直線にヘルシザーへと向かう。
矢は弧を描くことなく、正確に一体の甲羅の隙間を射抜いた。
ザシュッ!
「ライトノヴァ!」
ヘルシザーは、悲鳴を上げる間もなく、内部から爆発し、消滅した。残るは、あと一体。
もう一体は、仲間の爆発に驚き、水の中へと逃げ込もうとする。
しかし、セイラはそれを逃さない。
「逃がさない!」
彼女は再び杖を構え、次の一射を放つ。
光の矢は、逃げるヘルシザーを正確に追尾し、その甲羅の隙間を撃ち抜いた。
ヘルシザーは、水中で爆発し、そのまま消滅した。
「ふぅ……」
セイラは、大きく息を吐き、魔石を回収した。
これで、Bランク昇格試験の討伐対象、ヘルシザー5体は全て完了だ。
セイラは、自分の魔法に新たな可能性を見出したことに、喜びと達成感を噛み締めていた。
(新たな光魔法との可能性...私はまだ強くなれる!)
セイラは今回の戦闘で自信を高め、さらに強くなることを決意した。
洞窟を出ると、あたりはすっかり真っ暗になっていた。夜道の移動は危険だと判断し、近くで野宿のできる場所を探す。
「あんなところに水車小屋...?」
それは昔使われていたであろう、寂れた水車小屋があった。声をかけるが人の気配はない。
(誰もいないみたいだけど、使わせてもらおうかしら)
炉に火をいれ、ここで一晩明かすことにする。
(一人だと寂しいな...)
セイラは一人での野宿は初めてだ。
特に最近はパーティメンバーとして、常に誰かと共に行動をしていたので、尚更孤独感を感じる。
そんなことを思いながら眠りについた。
翌朝、日の光と共に目を覚ます。
床で寝ていたので、からだの疲れはしっかりとはとれていないが、十分に休まることができた。
「よし、帰ろう!」
セイラは来た道をたどり、王都へと歩いていく。
道中あらたな複合魔法を考えながら歩くが、そう簡単には思い浮かばない。
(光……水との複合……うーん……。風は作り出したものを押し出すイメージができるけど……。帰ったらみんなにも相談してみよう)
魔法のことを考えながら半日ほど歩き、王都に到着する。
試験の報告のためにギルドに入り、リビアの元へ向かう。
「リビアさん!」
セイラはリビアの姿が見えたので手を振って挨拶した。
「セイラさん!お帰りなさい!試験の報告ですか?」
リビアの言葉に頷き、ヘルシザーの魔石を渡す。
「ただいま確認しますね。……はい!ヘルシザーの魔石五個、確かに受けとりました。これにてBランク試験合格です!おめでとうございます!」
リビアはそういいながら祝福してくれる。セイラは見事Bランクへと昇格したのであった。
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