051 Cランク試験 デュラハン討伐
地下三層に到達すると、そこには、ミナトの存在を待ち構えるかのように、一人の騎士が立っていた。
それは、頭部がなく、生前の騎士の魂が宿っていると言われる魔物、デュラハンだ。
剣を地面に刺し、仁王立ちするその姿は、不気味でありながらも、どこか高貴な騎士の雰囲気を漂わせている。
ミナトが一歩、足を踏み込むと、デュラハンはそれに気づいたのか、ゆっくりと地面に刺さった剣を抜き放った。
その瞬間、デュラハンの体から、禍々しい殺気が溢れ出し、全身に魔力のようなものを纏わせる。
(まさか、魔物が魔力纏いを……!?)
ミナトは驚愕に目を見開いた。
しかし、その纏いは、刻付には至っておらず、不完全なものだった。
だが、もともと人間より遥かに身体能力の高い魔物が魔力纏いを発動すれば、たとえ不完全であっても、十分な効果を得られる。
ミナトも剣に魔力を流し、『剣閃』を発動させ、構える。
その白い輝きは、薄暗いダンジョンの空間を照らし出した。
(デュラハンは騎士の亡霊とは聞いていたが、やはり剣を使ってくるのか……)
ミナトは相手の出方をうかがっていると、デュラハンが先に動いた。
強化された脚で地面を蹴り、凄まじいスピードでミナトの喉元めがけ、突きを放つ。
常人なら避けるのがやっとのスピードだろう。
しかし、その突きのスピードは、ミナトには遅すぎた。
「遅い!」
ミナトは剣を避け、デュラハンの体勢が崩れた一瞬の隙を突く。
螺旋を描くように、デュラハンの懐へと潜り込み、剣を振るった。
回転しながら足元から上へと、無数の斬撃がデュラハンを襲う。
ミナトの放つ斬撃は、デュラハンの鎧をいとも簡単に切り裂いていく。
デュラハンは、たった一度の技でミナトの前に崩れ落ちた。
ミナトは、呆気にとられる。
それはミナトが、もはやCランクを優に越える実力者である証だった。
「確かに道中の魔物と比べれば強かったが、手応えがないな。Cランクはこんなものなのか?」
ミナトはそう言いながら、デュラハンの体から魔石を回収した。
これで、Cランク昇格試験の討伐達成だ。
その後ミナトは、ダンジョンを後にした。
ダンジョンを出たミナトは、守衛小屋の老人へと向かった。
「試験終わったので帰りますね」
ミナトがそう言うと、老人は目を丸くした。
「おお、もう終わったのかい。早かったね」
確かにダンジョンに潜ってから、一時間も経っていないだろう。
三層まで潜っただけなので、と苦笑いしながら老人に一礼し、ミナトはギルドへと急いだ。
正直、デュラハンとの戦闘が呆気なさすぎて、体が動かし足りない。
ギルドに報告に行ったら、訓練場で剣閃の練習でもするか。
ミナトはそう考えていた。
ギルドに着き、リビアのもとに向かうと、彼女はミナトの姿を見つけ、笑顔で声をかけてきた。
「ミナトさん、お帰りなさい! ずいぶん早かったですね!」
「ただいま戻りました! デュラハンの討伐完了です!」
ミナトはそう言って、デュラハンの魔石を差し出した。
「ただいま確認しますね……。はい! デュラハンの魔石で間違いありません! 試験合格おめでとうございます!」
リビアはニコッと笑い、ミナトの試験合格を祝福してくれた。
「では、ギルドカードを更新しますので、プレートとギルドカードをお願いします」
言われた通り、ミナトは首からかけているプレートと、腰袋に入っているカードを取り出す。
「では、更新してきますので、少々お待ち下さい」
リビアが席を外すと、掲示板を眺めていたのだろう、ミナトたちの会話を聞きつけたクレイグがやってきた。
「ミナトさん、ずいぶん早かったですね。もう試験は終わったのですか?」
クレイグの言葉に、ミナトは頷く。
「ああ。デュラハンとの戦闘が呆気なさすぎて、すぐ終わっちゃったよ。試験というより、肩慣らしって感じだったな」
「そうだったんですね。ともあれ、ランクアップおめでとうございます!」
クレイグもミナトのランクアップを祝福してくれた。
「わたしはソロでの鍛錬を兼ねて、ダンジョン探索にでも行こうかと思ってます。ミナトさんはどうされますか?」
ミナトは少し考え込む。
「うーん……俺は訓練場で剣の鍛錬でもしてようかな。剣閃の感覚を体に覚えさせたいんだ。デュラハンとの戦闘で、剣の威力は十分分かったからな」
「分かりました。がんばってください!」
「ああ。クレイグも気を付けてな!」
そう言い、二人は別れた。ミナトは、ギルドの訓練場へと向かった。
訓練場に到着すると、魔法を使ったり武器を使ったりと、鍛練に励む訓練生が何人かいた。
ミナトもそこに溶け込むように場所を見つけ、鍛練を始める。
バルドから譲り受けたアダマンタイトの剣を抜き、剣閃を発動させる。
魔力を流すだけなら無意識のうちにできるが、剣全体に安定して纏わせるには、剣の形をイメージし、その形に沿って魔力を流し続けなければならないため、集中力が必要だ。
だが、この作業を無意識にできるようになれば、剣を抜き放つと同時に、意識せずとも剣閃を発動させることができるはずだ。
ミナトはその高みを目指し、ひたすらに剣をイメージする。
時折、素振りをし、魔力の纏い感を確かめる。
「さすがにすぐに無意識の領域に入るのは無理だな。だが、以前より感覚は捉えてきた」
ミナトはただイメージするだけの鍛練を何時間も続けた。
そして日は暮れ、訓練生は皆帰宅し、あたりは静まり返る。
ミナトは最後に一閃、剣をふるった。
空気が切れるような鋭い音が訓練場に響き渡る。
「よし、今日はこんなもんか」
そう言い、帰宅しようとすると、背後にグレンが立っていた。
「凄まじい集中力と斬撃だな」
グレンはそう言うと、ミナトの腰にぶら下がっているアダマンタイトの剣に目をやった。
「グレンさん、いたんですか!?」
ミナトは驚きに声を上げた。
「なに、今来たところだ。訓練場閉めようとしたら、まだ残ってるやつがいたからな」
グレンは笑いながらミナトの肩を叩いた。
「それより、Cランクに無事上がれたみたいだな」
「はい! ただ、Cランクの討伐対象がデュラハンだったんですけど、肩慣らしにしかなりませんでした」
ミナトがそう言うと、グレンは豪快に笑った。
「ガハハハ! それもお前が強すぎるからだろうよ。確かにお前のその剣と剣さばき、デュラハンも剣使いだろう?気の毒なもんだ。相性みたいなものもあるだろう」
その言葉に、ミナトはふと、ダンジョンで抱いた疑問を思い出した。
「そういえば、なぜあんなところにダンジョンがあるんですか?」
ミナトが尋ねると、グレンは顎の髭を撫でながら考え込んだ。
「詳しくは俺も知らないが、あそこは墓地だからな。昔の王様の骨でも埋葬されてんじゃねぇか? 必ずしも宝を隠すためだけにダンジョンが存在する訳じゃないからな」
グレンの言葉に、ミナトは納得した。
確かに、王家の墓としてダンジョンが作られた可能性は大いにあるだろう。
「そうゆうことなんですね。ありがとうございます」
ミナトが礼を言うと、グレンはミナトの腰にぶら下げている、小さな卵の入った専用ケースに目をやった。
「お前、それ魔獣の卵か?」
「はい、この間コロンで購入しました」
「さては、契約魔法に失敗したな?」
グレンはニヤつきながら核心をついてくる。ミナトは苦笑いするしかなかった。
「じつは……」
ミナトが正直に話すと、グレンは腕を組みながら、感心したように頷いた。
「ほんと、お前の魔力は不思議だな……」
グレンはそう呟くと、「まあいい、大事に育ててやれよ」とミナトに告げた。
「はい! では、失礼します」
ミナトはグレンに一礼し、訓練場を後にした。
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