050 Cランク試験
ギルドをでたのち、四人は王都の王立銀行へと向かった。
しばらく歩くと、石造りの立派な建物が見えてきた。
「あれが王立銀行よ」
シスカが指を指しながら言う。
銀行というだけあって、大きく立派なだけでなく、ところどころに装飾がちりばめられていて、外には守衛も立っている。
どこか冒険者には入りにくい、厳かな雰囲気だ。
「俺たちが入って大丈夫なのか?」
ミナトが戸惑うと、シスカは笑った。
「気にしなくても大丈夫よ。さあ、行きましょう」
中に入ると、すぐに係の人がやってきた。
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件でしょうか?」
スーツを着た初老の男性は尋ねる。
「パーティ資金を運用する金庫を作りにきました」
シスカがそう告げると、奥のカウンターへと案内された。
「かしこまりました。では、こちらへどうぞ」
案内してくれた人は、カウンターの担当者に引き継ぎをし、一礼して去っていった。
カウンターの担当者は、ミナトたちに一礼し、「ようこそお越しくださいました。パーティ金庫の設立ですね」と、手際よく書類を取り出した。
「まず、パーティ名と代表者のお名前をお願いします」
ミナトは言われた通りに『零閃の狼煙』と『ミナト=イチノセ』と記入した。
「ありがとうございます。次に、ギルドからの報酬の受け取りに関しまして、銀行への直接振り込みも可能になっていますが、いかがなさいますか?」
リビアさんが報酬を数えながら渡してくれたものが、銀行に直接振り込まれるということだろうか。
それはとても便利かもしれない。
「はい、お願いします」
ミナトがそう答えると、職員は書類をとりだした。
「かしこまりました。では、こちらの用紙を後ほどギルドの方へご提出をお願いします」
職員から書類を受け取り、その後はパーティ金庫の設立や、その利用方法について説明を受けるうちに、ミナトは、同じ『王立』の名を冠するだけあり、ギルドと銀行が密接に提携していることを知った。
しかし、冒険者の中にはお金の管理がずさんな者も多く、預けるほどの大金を得られるのは高ランクの依頼をこなしている者がほとんどであるため、銀行を利用する冒険者は、ある程度のランクに達している者に限られるようだ。
「では、これで説明は以上になります。分からないことがあれば、いつでも聞いてください」
職員からのひと通りの説明が終わり、無事金庫の設立が完了した。
職員に礼をいい銀行を後にすると、クレイグが皆に声をかけた。
「皆さんはこれから試験へ行かれますよね。先ほどの書類は、私がギルドへ提出しておきますよ」
クレイグの心遣いに、ミナトは感謝した。
「ありがとう。よろしく頼む」
ミナトは書類をクレイグに渡し、笑顔で頷いた。
「試験、緊張しますね」
セイラが少し不安そうに呟くと、ミナトは優しく励ました。
「セイラの魔法なら問題ないさ。もっと自身をもって!」
ミナトの言葉にセイラは頬を赤く染める。
「私は少し離れたところに行かないと行けないから、戻るのに時間がかかるわ。私がいない間もさぼっちゃだめよ」
シスカはそう言って、笑った。その言葉には、三人への信頼と、少しばかりの寂しさが込められているようだった。
「じゃあ、行こうか!」
四人は、それぞれの試験内容が記された書類を手に、互いの健闘を祈りながら、別々の道を進んだ。
王立銀行を後にしたミナトは、一人、王都のはずれにある墓地へと向かった。
多くの兵士や国民が安らかに眠っているであろう、穏やかな雰囲気の丘には、無数の墓石が規則正しく並んでいた。
その墓地の入り口近くに、守衛小屋のようなものがあった。
ミナトが声をかけると、一人の老人が出てきた。
「すいません。ギルドの試験でダンジョンに潜りたいのですが……」
ミナトが用件を伝えると、老人はにこやかに頷いた。
「おお、冒険者さんかい。試験とはご苦労じゃな。あそこの一番高いところに、ひときわ大きな墓石があるじゃろ? そこの裏側が入り口になっておる。中にはアンデッド系の魔物がたくさんいるから、気を付けるんじゃぞ」
老人の言葉に、ミナトは一礼し、言われた場所へ向かう。
それにしても、こんなところにダンジョンがあるとは……。
以前グレンが「ダンジョンとは人工的につくられた建造物だ」と言っていたが、何のためにここに作られたのだろうか。
ミナトはそう思ったが、答えが出るわけはない。
今度グレンに聞いてみよう。そう思いながら、彼はダンジョンの入り口である大きな墓石の裏側へと到達した。
ミナトは中に入り、長い階段を下りていく。
ひんやりとした空気が肌を刺し、奥からはカビ臭いような匂いが漂ってきた。
第一層に足を踏み入れると、長い通路がまっすぐに伸びていた。
壁の松明が、通路を不気味に照らしている。
しばらく進むと、グールやスケルトンといったアンデッド系の魔物が姿を現した。
だが今のミナトには敵ではない。しかし、いい機会だと思い、彼はバルドから譲り受けたアダマンタイトの剣を抜いた。
「剣閃!」
ミナトが剣に魔力を纏わせると、剣が眩しいほどの白い光を放ち始めた。
まだこの状態を長く維持することは難しいが、彼は既に『剣閃』を習得していたのだ。
だが実戦で使うのは初めてだ。
その剣で、グールやスケルトンを斬り倒していく。
とてつもない切れ味で、グールの腐敗した肉も、スケルトンの固い骨も、軽々と真っ二つにしてしまう。
「凄まじい切れ味だ……それに、とても扱いやすい。バルドさんの腕は本物だな」
ミナトは感嘆しながら、次々とアンデッドを斬り倒していく。
辺りの魔物を殲滅すると、彼は剣閃を解いた。
(まだ、剣に意識を集中させてないと維持し続けるのは難しいな。反省点を踏まえ、さらに鍛錬しよう)
彼は心の中でそう決意し、しばらく進むと、第二層への階段を見つけた。
そのまま階段を下り、第二層へと到達する。
この階層は、グールやスケルトンの他に、コウモリの翼を持つ人型の魔物、レッサーヴァンパイアが姿を現した。
彼らは吸血することで自己回復や身体強化を行い、下級魔法などを放ってくる。
それに、首を跳ねなければ死なないという厄介な性質を持っていた。
ミナトは同じく剣閃を纏わせ、レッサーヴァンパイアが放つファイアボールを剣で切り裂く。
そして、その勢いのまま、懐に飛び込み、首元へと斬撃を放った。
ザンッ!
レッサーヴァンパイアの首は宙を舞い、その体は塵となって消滅する。
その勢いで、彼は次々とアンデッドを倒し、深層へと進んでいく。
そして、ついに目的の第三層へと続く階段を見つけた。
ここを降りれば、Cランク昇格試験の討伐対象である、デュラハンとの戦闘だ。
(ここからが、本番か……!)
ミナトは大きく息を吸い込み、気合いを入れ直し、階段を下りていった。
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