048 予期せぬ追加報酬
魔獣店を出ると、外ではシスカとセイラが待っていてくれた。
「ずいぶん時間がかかったわね。それで、契約はできたのかしら?」
シスカが尋ねると、ミナトは腰の専用ケースに入った卵を指差した。
「やっぱ俺の魔力じゃ契約はできなかったんだ。でも代わりに、この卵を引き取ってきた」
シスカとセイラは、ミナトの言葉に首を傾げた。
ミナトは、自身の魔力がこの世界の契約魔法には不適合であること、そして卵から育てることで、魔力を『親』として認識させ、魔法による契約なしに主従関係を築けるという店主の提案を説明した。
「これが卵なんですか?なんだか光ってて不思議な形をしていますね」
セイラがケースの中の卵を覗き込み、目を輝かせた。
たしかに、これが卵だと聞いて納得する人はそうはいないだろう。
「ちなみに、どんな魔獣の卵なの?」
シスカが尋ねてきたので、ミナトは『カーバンクル』ということと、その特性を答えた。
「産まれてくるまで属性が分からないってのはなんだかドキドキしますね」
セイラが楽しそうに言うと、ミナト自身も、この世界で魔獣を使役することになるとは想像もしていなかったので、いずれ産まれてくるこの子には、なんだか興味が湧く。
いつ産まれてくるのかなと思っていると、クレイグが口を開く。
「そういえば、産まれてきたときに困らないように、名前の候補をいくつか考えておかないといけませんね」
「たしかに!名付けか……」
クレイグの言葉にミナトは考え込む。たしかに、名前は必要だ。だがそんな簡単には浮かばない。
「まあ、でもしばらく先の話だから、ゆっくり考えましょうよ」
シスカの言葉に、ミナトは頷く。
そう、今はこの小さな卵を無事に孵化させることが何よりの目標だ。
これでみんなの買い物が一通り終わったので、四人はエドガーが手配してくれた宿へと向かった。
宿へ着き、荷物を部屋に預け、皆で夕食をたいらげた。
ミナトは、食事中も、休憩中も、常に卵に魔力を流し続けている。
刻付の常時維持も出来るようになったミナトには、その程度は苦ではなかった。
その後、部屋に戻り、明日の帰路に向けて準備をしたのち、しっかりと休むことにした。
翌朝、四人は宿で朝食を済ませ、町の入り口に向かった。
そこにはすでにエドガーの姿があり、合流した。
「おはようございますエドガーさん。帰路の護衛も零閃の狼煙におまかせ下さい」
「頼もしいですね。よろしく頼みましたよ。では出発しましょうか」
そう言われ、四人は荷台に乗り込んだ。
こうして、零閃の狼煙のコロンでの滞在は終わりを告げた。
各々がコロンという町で、新たな発見や出会いを得ることができた。
護衛依頼のついでではあるが、得られたものは大きかった。
コロンからの帰路は、往路とは違い、緊張感は薄れていた。
盗賊を一掃したため、もう襲われる心配はない。馬車は揺られながら、順調に王都を目指す。
道中、時折魔物が現れるだけだったが、彼らの圧倒的な実力と連携の前には、もはや脅威ではなかった。
「それにしても、皆さん本当にお強いですね」
馬車の中で、エドガーがミナトたちを称賛した。
「とても駆け出しのCランクパーティーとは思えませんよ。あのガゼルという男も、冒険者ランクで例えるならAランク相当はあったと思います。それを無力化してしまうなんて、本当にすごいです」
エドガーの言葉に、ミナトたちは謙遜する。
しかし、実際零閃の狼煙は、すでにCランクの範疇に収まらないレベルに達していたのだ。
王都のギルドに戻るまで、彼らは自分たちの成長と実力を、客観的に知ることはなかった。
五日の時を経て、ようやく王都の巨大な門が見えてきた。
門をくぐり、エドガーと共に冒険者ギルドへと向かった。
ギルドに入ると、カウンターにいつものようにリビアが座っていた。
ミナトたちの姿を認めると、彼女は笑顔を輝かせた。
「お帰りなさいませ、零閃の狼煙の皆さん! 無事で何よりです!」
「ただいま、リビアさん」
ミナトがそう言うと、リビアは安堵の息を漏らした。
「今、グレンさんを呼んできますね。この間の待合室でお待ち下さい」
リビアはそう言うと、ギルドマスターの執務室へと向かっていった。
ミナトたちは、エドガーと共に二階の待合室へと向かう。
しばらく待つと、扉が開き、グレンが姿を現した。
「ご苦労だったな。護衛依頼の件は、こちらも既に盗賊のリーダーを引き取っているので、状況は把握している。今回の件は本当に助かった。ギルド長とし礼を言わせてもらう」
グレンはそう言うと、エドガーも続いた。
「商会としても、礼を言わせてもらいます。零閃の狼煙の皆さん、本当にありがとうございました。これで安心して商売ができます」
グレンとエドガーから感謝をのべられるが、ミナトたちも指名依頼をもらったことに感謝をしている。
「いえ、俺たちは依頼をこなしたまでです。それこそまだ駆け出しの零閃の狼煙を指名していただき、こちらこそありがとうございます」
その後、実際の盗賊の規模やリーダーの使っていた魔法など、詳細な内容を話す。
「闇纏いか……やはり上級魔導師というのは嘘では無かったようだな。だがそうだとして、よく倒せたな」
グレンの言葉にシスカは苦い顔をする。
「私は闇纏いの状態のガゼルにはかないませんでした。スピードこそ勝るものの、パワー不足で競り合いの最中後方へ飛ばされてしまいました」
シスカは少し落ち込む素振りをするが、ミナトが励ます。
「俺の場合はスピードもパワー劣っていましたが、体術戦闘は得意なので、単に物理攻撃をしてくるだけならいくらでも対応できます。どちらかというと、闇纏いを発動する前の冷静なガゼルの状態だと、俺じゃ歯がたたなかったかもしれません。それにクレイグとセイラが、戦闘のサポートをしながら馬車を守ってくれていたので、ガゼルに集中して挑めたことが大きな勝因となったかもしれません」
その言葉に皆頷く。エドガーもこちらをみながら称賛してくれる。
「チームワークで見事勝利をつかみとったということですね。たしかに各々の分担が的確でとても出来立てのパーティーには見えませんでしたよ。グレンさん彼らは本当にCランクパーティーなんですか?」
エドガーの言葉にグレンはにやつく。
「ああ、今はCランクパーティであることは間違いない。だがこの依頼の報酬といっちゃなんだが、お前ら全員のランクアップ試験の資格を与えようと思う。俺の見立てじゃすでに上位のランクにいてもおかしくない力量だ。本当はすぐにでもランクアップさせてやりたいところだが、回りの目もあるからな、一応依頼を受けた結果、ギルドポイントがたまり、試験を受けれるってことにする」
グレンの言葉に目を見開く。
試験うけ、無事クリア出来れば皆のランクが上がる、つまりパーティランクも上がるということだ。
それにシスカはAランクという境地に到達することができる。
ミナトもまたSランクにすこし近づくことができるという、願ってもない話しだ。
「まあそれとは別に報酬はしっかり用意してある。リビアに諸々の話しはつけておくから、あとで顔を出してやってくれ」
グレンはそう言い、満足げに笑った。
予期せぬ追加報酬をもらい、これで、零閃の狼煙にとって、初の指名依頼は無事に完了したのだった。
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