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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第二章 Sランクへの道のり 前編

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047 魔獣の卵

 クレイグに案内され、しばらく歩くと、魔獣を取り扱うという店に着いた。

 クレイグが、大勢で入っても魔獣のストレスになるとのことで、セイラとシスカは外で待機してもらうことにした。


 店に入ると、気の良さそうな店主が「いらっしゃいませ」と声をかけてくれる。

 店の中には、犬や猫に似た魔獣から、空を飛ぶ鳥のような魔獣まで、たくさんの種類の魔獣がそこら中にいる。


 クレイグが用件を伝えると、店主は「そうゆうことでしたら」といい魔法を扱える魔獣を紹介してくれる。


 いろいろと紹介してくれたが、中でもカーバンクルという種類の魔獣は、生まれつき使える属性が一つだけと決まっているが、とても魔力が高く、魔獣の中ではかなり優秀な部類に入るらしい。


 だが魔法を使える魔獣というのは、希少性が高い上、なおかつカーバンクルという種類は知能も高く人気があるので、結構値が張り、ミナトの手持ちでは到底払えそうにもなかった。


 仕方ないのでカーバンクルは諦めて、他に価格を下げておすすめはないか尋ねる。


「でしたら、フェザーファングなんてどうでしょうか?戦闘力は皆無ですが、偵察や光魔法による視界の確保など、サポートに優れていますよ」


 と店主はいい、フェザーファングを連れてきた。

 肩に乗る程度の大きさの鳥のような魔獣は、店主の回りを器用に飛んでいる。

 たしかに空からの偵察は便利かもしれない。値段も手持ちで払える額だ。


「確かにいいな。この子で契約を頼めるか?」


 ミナトはフェザーファングを契約することに決めた。


「ありがとうございます。では契約魔法をしますので奥の部屋へ案内しますね」


 店主に部屋へ案内される。フェザーファングとミナトは向かい合い、そのとなりに店主がたち、慣れた手付きで魔方陣のようなものをかきはじめる。


「お待たせしました。準備ができましたので、こちらに魔力を流してください」


 ミナトはいわれた通りに魔力を流す。

 すると、魔方陣のようなものはミナトの魔力が流れた途端、砕け散ってしまった。


「申し訳ありません、もう一度準備しますね」


 店主は驚きながらもそう言い、また魔方陣を書き始める。

 準備が出来たのち、先程と同様に魔力を流したが、やはり砕け散ってしまう。


 あたふたする店主に、ミナトは自信の魔力が原因だと察する。


「もしかしたら俺の魔力が原因かもしれません。魔道具とかもうまく作動しなかったりすることがあるので...」


 ミナトは店主にそう告げ、自身の魔力が少しこの世界の理とは違うことを話す。


「なるほど...。となると、契約は難しいかもしれないですね……」


 店主は少し考え込むと、閃いたかのような顔でこう言った。


「でしたら、卵から育てるというのはどうでしょう?孵化させる手間や、育成の手間などがあるので、あまり卵から育てる方は居ませんが、卵から育てれば契約魔法をなしに主従関係を気づくことが可能です。」


 店主は説明をつづける。


「卵に継続的に魔力を流し込み、それを孵化するまで続けます。そうすると、魔力そのものを親として認知してくれます。それに、卵であれば価格も下がりますので、先ほどのカーバンクルもご紹介できます」


 ミナトは頷きながら説明を聞き続ける。


「デメリットとしては、卵の孵化には時間がかかるのと、常に魔力を流し続けないといけないということですかね。あと、カーバンクルにいたっては、使える属性が産まれるまで分からないと言う点もありますが、いかがなさいましょうか?」


 店主の説明を聞き、たしかに魔力を魔法に変換することが難しくても、魔力そのものを認知してもらうだけなら、自身の魔力でも可能かもしれないと思った。

 さらに詳しいことを店主に聞いてみる。


「孵化にかかる時間ってのはどのくらいなんだ?」


「流し込む魔力の量や、質によって変動するので、正確な時間は分かりかねますが、おおよそ一月~二月程で孵化すると思います」


(孵化にかかる時間は問題ないか...)


「近接戦闘タイプなので、戦闘中は動きが激しいんだが、卵を保護する入れ物みたいなのはあるのか?」


「ええ、もちろんございます。専用のケースがありまして、その耐久力は鋼鉄よりも丈夫なので、よほどの事じゃない限り衝撃で割れるということはないですよ」


(旅をするにも支障はなさそうだな...)


 ミナトは少し考え込む。契約魔法が出来ないので、魔獣を諦めるしかないと思っていた。

 そんな中での店主からの提案だったので、一先ず卵をみてみることにした。


「そのカーバンクルの卵、一度見せてもらってもいいですか?」


 ミナトが尋ねると、店主はにこやかに頷き、店の奥へと消えていった。


 しばらくして、店主が大切そうに抱えた、手のひらに乗るほどの大きさの、卵を持ってきた。

 それは、まるで透明な水晶でできているかのように透き通り、内部に微かな光が脈打っているのが見て取れた。


 ミナトはそれをそっと両手で受け取った。卵はひんやりとしていたが、確かにその内部からは、微かな魔力の気配を感じる。


「これが...たまご...?」


 イメージしていた物とは全く異なり、実際に持ってみると、鼓動のようなものが微かに感じられる。

 その鼓動が少し愛おしくも感じてきた。


「わたしも卵をみるのは初めてですが、なんか愛着が湧いてきますね」


 クレイグの言うとおり、ミナト自身も実物をみてしまうと、どこか儚げで何故か守りたいと心で思ってしまった。

 これが母性というやつなのだろうか。するとミナトは意を決した。


「この卵、引き取らせてもらってもいいですか?」


 ミナトそう告げると、店主は頷く。


「ええ、その卵でよろしければ!では購入の手続きへと移りますね」


 店主はそう言うと、この卵の血統証明書と請求書を取り出した。


「まずこちらが、この卵が紛れもなくカーバンクルの卵である、という証明書になります。そしてこちらが請求書になっております。」


 支払いは金貨50枚。すでに孵化しているカーバンクルは金貨100枚なので破格の値段だ。

 ミナトはほぼ全ての有り金を支払い、卵を引き取る。


「ご購入ありがとうございます。では、早速魔力を流し込んでみましょう。やり方は簡単です。ただ、この卵に意識を集中し、魔力を送り込むことをイメージするだけです」


 店主の言葉に従い、ミナトは目を閉じて、卵に魔力を流し込む。

 彼の異質な魔力が卵に触れると、卵全体が淡い光を放ち始めた。

 その光は、ミナトの魔力と共鳴するように、規則的なリズムで脈打っている。


「そうです!その感じを忘れずに、起きている間は、出来る限り魔力を流し込んであげてください」


 ミナトは普段、刻付による魔力のトレーニングを行っているので、卵に魔力を送るのは呼吸するように簡単に行えた。

 活動している間は問題なく、無意識の領域で卵に魔力を流し続けることが出来るだろう。


 ミナトは店主に礼を言い、クレイグと共に店を後にした。

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