044 盗賊との激闘
盗賊団は粗末な武器を手に、襲いかかってくる。
「ミナト、取り巻きは任せるわ! リーダーは私が!」
シスカが叫ぶと同時に、雷光を纏った身体で盗賊団のリーダー、ガゼルへと一直線に飛び出した。
彼女の剣には青白い稲妻が走り、そのスピードはミナトの飛速をも凌駕する。
バチバチッ!
ガゼルはシスカの動きに驚いたかのように、杖を構え、闇魔法を放つ。
「シャドウ・バインド!」
黒い鎖のような闇魔法がシスカの足元を狙うが、シスカはそれを軽々と回避し、ガゼルの懐へと肉薄する。
「ライトニングスラッシュ!」
雷光を帯びた剣がガゼルへと迫るが、ガゼルはそれを闇の魔力で形成した盾で受け止める。
ガキンッ!
剣と闇の盾が激しくぶつかり合い、火花が散る。ガゼルの顔には焦りの色が浮かんでいた。
「お前、Bランクじゃないのか!?」
「だったら何だってのよ!」
シスカの猛攻をガゼルは防ぐので手一杯だ。だが上級魔導師クラスと言われているだけある。
シスカのあのスピードに瞬時に闇の防御魔法を発動させ、攻撃をしのいでいる。
一方、ミナトはシスカの指示に従い、とりまきどもへと向かった。刻付で全身を集中させ、素手で構える。
(魔法発動の隙を与えさせない!)
ミナトは飛速で群れの中へと飛び込んだ。その速度は、彼らが反応する間もないほどだ。
ドォンッ! ズガンッ!
刻付を纏った拳と蹴りが、次々と盗賊どもを戦闘不能にしていく。
彼らは低級の冒険者や自警団を相手にするのとはわけが違う、ミナトの圧倒的なスピードと打撃力に、為す術もなく倒れていく。
ミナトは体術による打撃を組み合わせ、相手を撹乱しながら確実に仕留めていく。
彼の動きは、一見不規則に見えるが、技を最大限に引き出すための距離、力、スピードなどが感覚に刻まれている。
「な、なんだこいつは!?」
「速すぎる!」
盗賊たちの悲鳴が響き渡る。
後方では、セイラが杖を構え、クレイグが防御に徹していた。
セイラは深呼吸し、水と風の魔力を集中させる。
「アクア・サイクロン!」
巨大な竜巻が、ミナトを取り囲もうとしていた盗賊たちを巻き込み、その動きを鈍らせる。
竜巻の魔力は、凄まじく、巻き込まれた盗賊の服はビリビリに破け、体には無数のえぐれたような傷跡を残した。
また直撃を回避したやつらにも、動きを鈍らせる程度にダメージを与えることに成功する。
ミナトはアクア・サイクロンで動きが鈍った盗賊どもを、拳と蹴りで次々と戦闘不能にしていく。
クレイグは馬車の前に立ち、土属性の防御魔法で馬車への攻撃を防いでいた。
時折、盗賊どもが馬車に近づこうとするが、クレイグの放つ「ロックバースト」が彼らを吹き飛ばす。
盗賊どものほとんどが、彼らの前ではなすすべなく戦闘不能に陥った。
ガゼルとシスカの戦いは、激しさを増していた。
ガゼルは闇魔法でシスカの動きを封じようとするが、シスカは雷魔法による加速と剣技でそれを回避し、反撃の機会を伺う。
「くそっ! 今日は楽な仕事のはずだったのに!」
ガゼルは焦りの表情を浮かべる。
彼の闇魔法は、シスカの雷魔法を纏った剣には弾かれ、直接的なダメージを与えられない。
「シスカ!こっちは片付いた!」
ミナトは、残りのごろつきどもを全て戦闘不能にし、ガゼルとシスカの戦いへと合流した。
「ガゼル、観念しろ!」
ミナトが飛速でガゼルの背後へと回り込み、刻付を纏った拳を叩き込もうとする。
しかし、ガゼルはミナトの動きを察知し、素早く闇の障壁を展開する。
ドォンッ!
ミナトの拳が闇の障壁に激突し、障壁は大きく揺らぐが、完全に破壊することはできない。
「くそっ、硬いな!」
ミナトが舌打ちする。
その隙をガゼルは見逃さなかった。
闇の障壁を解除し、ミナトとシスカの間に闇魔法を放つ。
「シャドウブラスト!」
黒い衝撃波がミナトとシスカを襲う。
二人は回避するが、その間にガゼルは距離を取り、再び闇魔法を構える。
「セイラ、クレイグ、援護を!」
シスカが叫ぶ。
セイラは杖を構え、風魔法を集中させる。
「ウィンド・フォール」
上空からの強烈な風がガゼルの頭上へと吹き荒れる。強烈な風圧によりガゼルの動きが鈍くなる。
クレイグもまた土魔法でガゼルの足をロックする。
「今です!」
セイラの声に反応し、シスカは雷光を纏った身体で、ガゼルへと飛び込んだ。
ミナトもまた、刻付を纏った拳でガゼルへと肉薄する。
ガゼルは闇魔法で抵抗しようとするが、魔法による動きの制限とシスカの猛攻、そしてミナトの拳が彼を追い詰める。
ドォンッ! バチバチッ!
シスカの剣がガゼルの闇の盾を打ち破り、ミナトの拳がガゼルの鎧を叩き砕く。
ガゼルは苦しげな呻き声を上げ、ついに地面に倒れ伏した。
「くそっ……こんな、駆け出しのパーティに……!」
ガゼルは悔しそうに呻いた。その顔には、絶望の色が浮かんでいる。
(このままでは……負ける……!)
追い詰められたガゼルは、最後の手段に出た。
彼の体から、これまでとは比べ物にならないほどの禍々しい闇の魔力が噴き出す。
「お前らごときに……俺が負けるものかぁぁぁっ!」
ガゼルが叫ぶと同時に、その体は黒い闇に包み込まれていく。
闇はガゼルの肉体を侵食し、彼の体が異形へと変貌していくのが見える。
筋肉は肥大し、皮膚は黒く変色。瞳は赤く光り、口からは鋭い牙が覗く。
「闇纏い(やみまとい)!」
それは、自身を闇の魔力で覆い、肉体を一時的に強化する禁忌の魔法だった。
ガゼルの身体能力は凄まじいまでに跳ね上がり、その動きはシスカの雷魔法による加速をも凌駕する。
「まさか、闇纏いを……! ミナト、気をつけて! 並大抵の攻撃じゃ効果がないわ!」
シスカが叫ぶ。
彼女は闇纏いを発動させたガゼルへと飛び込むが、その強化された肉体から放たれる一撃は、シスカの剣を弾き飛ばし、彼女の身体を大きく吹き飛ばした。
「くっ……!」
「シスカっ!」
シスカは地面を転がり、痛みに顔を歪める。
闇纏いのガゼルは、もはや人間ではない。
その圧倒的な身体能力は、シスカの経験と魔法剣をもってしても、容易には対応できない領域に達していた。
「グオォォォォ!」
ガゼルは咆哮を上げ、ミナトへと突進してきた。その速度は、飛速を発動したミナトを凌駕する。だがミナトには関係なかった。
(単なる近接戦闘……なら、俺の得意分野だ!)
ミナトは、闇纏いで強化されたガゼルの動きを冷静に見極めた。
確かに速い、だが、それは純粋な身体能力の向上によるもの。
武術で培った「相手の力を利用する」という基本が、この状況でこそ活きる。
ミナトは剣を鞘に収め、素手で構えた。
全身に魔力纏い・刻付を最大限に集中させ、ガゼルの突進を紙一重で躱す。
ガゼルの拳が空を切る。
「遅い!」
ミナトはガゼルの背後へと回り込み、その巨大な腕を掴んだ。
闇纏いによる圧倒的な力で抵抗しようとするガゼルだが、ミナトは武術の体捌きでその力をいなし、重心を崩す。
ズンッ!
グレンを投げ飛ばした時と同じように、ガゼルの巨体が宙を舞った。
「なっ!?」
ガゼルは驚愕に目を見開く。しかし、闇纏いによる身体強化で、彼は空中で体勢を立て直そうとする。
だが、ミナトはその隙を逃さない。飛速でガゼルの落下地点へと先回りし、その腹部に渾身の回し蹴りを叩き込んだ。
ドォンッ!
闇纏いによる強化された肉体が、ミナトの打撃によって大きく凹む。
ガゼルは苦しげな呻き声を上げ、地面に叩きつけられた。
「まだだ!」
ミナトは追撃をかける。
刻付を纏った拳と蹴りを、ガゼルの急所へと連続で叩き込んだ。
ズガンッ! ドスッ! バキッ!
闇纏いによって強化された肉体が、ミナトの打撃によって徐々に破壊されていく。
ガゼルは苦痛に呻き、抵抗しようと暴れるが、ミナトの連撃は止まらない。
その動きは、もはや武術の域を超え、闇纏いの力を完全に掌握しているかのようだった。
やがてガゼルは動きが鈍くなり、その巨体が痙攣し始める。
闇纏いの効果が切れかかっているのか、彼の体から黒い魔力が霧のように吹き出し、肉体が元の姿へと戻っていく。
その顔には、もはや余裕の表情はなく、絶望と恐怖が刻まれていた。
「はぁ...はぁ...」
ガゼルは、いきもたえだえになりながら、ミナトを見上げた。
その瞳には、すでに戦意はなかった。
「寝てろ」
ミナトはそう告げると、ガゼルの顎に、軽く、しかし正確な一撃を叩き込んだ。
ガゼルの意識は、そこで完全に途切れた。
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