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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第二章 Sランクへの道のり 前編

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042 予期せぬ依頼

 カウンターへつくと、リビアが笑顔で声をかけてきた。


「おはようございます! ちょうどよかったです。零閃の狼煙の皆様にお話がございますので、あちらの待合室にてお待ちください」


 リビアはそう言うと、ギルドの二階にある一室を案内してくれた。

 ミナトは不思議に思いながらも、言われた通り待合室へと向かった。


 しばらく待っていると、扉が開き、グレンと見慣れない男が現れた。

 男は上質な服を身につけ、その立ち姿からは商人の風格が漂っている。


「すまないな、待たせたな」


 グレンがそう言うと、隣の男を紹介した。


「こちらはフォレスト商会のエドガー=フォレスト殿だ。そして、エドガー殿、こちらが零閃の狼煙のメンバーだ」


 エドガー=フォレストは、ミナトたちに深々と頭を下げた。


「皆様、初めまして。フォレスト商会のエドガー=フォレストと申します。本日は、皆様にぜひお願いしたいことがあり、参りました」


 ミナトたちもそれに倣い、自己紹介を済ませる。


 ひととおり挨拶が終わると、グレンが口を開いた。その表情は、いつになく真剣だ。


「じつは最近、行商人をおそう盗賊がよく現れるらしい。街道を馬車で移動しているところを、大人数で囲んで積み荷を奪っていくんだ。護衛をつけたり対策はしているんだが、厄介なことにあいつら、冒険者の名簿か何か持ってるのか分からんが、低ランクの護衛がついてるときだけを狙っておそってくるんだ」


 グレンの言葉に、ミナトたちの顔に緊張が走る。


「だから、高ランクの冒険者をつけて、積み荷を囮に誘い出そうにも、なかなかそうはいかなくてな……。かといって、毎回高ランクの冒険者を護衛に回すのも現実的じゃなくて、商会もギルドも少し困っていてな」


 エドガー=フォレストが、苦虫を噛み潰したような顔で頷いた。


「ええ、被害が甚大でして……このままでは、商会の経営にも支障が出かねません。しかし、彼らは非常に狡猾で、我々の手の内を読んでいるかのようです」


 グレンはミナトたちをじっと見つめた。


「そこでだ、ミナトたち。お前らに依頼を頼みたいと思っているんだ」


 グレンの言葉に、ミナトは思わず身を乗り出した。


「お前たちは、まだパーティを結成して間もないうえに、メンバーのうちの三人は冒険者登録してからそんなにたっていない。だから、王都の冒険者界隈では、名前もあまり知られていない。その上、俺が知る限り、実力は申し分ない。これ以上ないほどの適任だ」


 グレンの言葉に、ミナトたちは互いに顔を見合わせた。自分たちの「無名」が、まさか依頼の決め手になるとは。


「お前たちに、フォレスト商会の積み荷の護衛を頼みたい。積み荷を囮に、盗賊どもを誘い出し、一網打尽にしてほしい。これは、ギルドからの指名依頼だ」


 グレンの言葉は、零閃の狼煙にとって、初めての、そして重要な任務の始まりを告げていた。


 商会とギルドからの指名依頼。内容の通りなら、まだ駆け出しのパーティである彼らは、盗賊にとって格好の獲物になるだろう。


「危険は確かにある。だが、俺はお前らの力量ならきっと問題ないはずだと踏んでいる。なんせ、お前らがこの間倒したシャドウ・ガーディアンはBランクの中でもかなり上位に位置する魔物だ。それを倒しちまうくらいだしな」


 グレンはミナトをまっすぐに見つめ、その言葉には確かな信頼が込められていた。

 ミナトは考える。確かに盗賊との戦闘は危険を伴うが、フォレスト商会に恩を売ることもできる。


 そして何より、ギルドからの指名依頼を受けるというだけでも、冒険者としての大きな実績になるだろう。

 それに、グレンが自分たちの実力をこれほどまでに買ってくれていると思うと、少し嬉しくなった。


「承知しました。その依頼、お受けします」


 ミナトが力強く答えると、シスカ、セイラ、クレイグもそれに頷いた。

 エドガーは安堵の表情を浮かべ、グレンは満足げに笑った。


「よし! では、詳しい話を聞かせてもらおうか」


 グレンはそう言うと、エドガーに促し、盗賊に関する詳細な情報の説明を始めた。


「盗賊の人数は、おおよそ10人ほどと見ています。ほとんどは複合魔法も使えないようなごろつきどもですが、厄介なことに、リーダー格のようなやつが飛び抜けていて、上級魔導師クラスの力量らしいのです。そのため、Bランクパーティの護衛でも手に負えていないのが現状でして……」


 エドガーの言葉に、ミナトたちの顔に緊張が走る。

 Cランクパーティである自分たちに、Bランクでも手に負えない依頼が来る。

 それは、グレンが自分たちの実力をいかに高く評価しているかの証だった。


「今回の護衛は、積み荷を囮にするとはいえ、実際に商品を輸送します。王都から馬車で五日ほど南へ離れたところにある、コロンの町へと移動する予定です。盗賊が必ず襲ってくるとは限りませんが、やつらがリスクをおかしてでも襲ってきやすいように、高価な魔道具や、宝具を輸送する予定です」


 グレンが地図を広げ、襲撃が予想される地点を指し示す。

 ミナトたちは、その情報をもとに、盗賊との戦闘をシミュレーションした。上級魔導師クラスのリーダー。

 その存在が、この依頼の難易度を格段に引き上げている。


「コロンの町までの道中、盗賊がいつ、どこで襲ってくるか分からない。常に警戒を怠るな。特に、リーダーの魔法攻撃には注意が必要だ。あとは取り巻きがごろつきとはいえ、囲まれたら厄介だから気を付けろ」


 グレンの言葉に、ミナトたちは頷いた。


「この依頼は、ギルドと商会にとって非常に重要だ。成功すれば、お前たちの名も一気に知れ渡るだろう」


 エドガーが期待を込めた眼差しでミナトたちを見つめる。


 零閃の狼煙。結成したばかりの彼らにとって、初めての依頼がまさかギルドからの指名依頼になるとは思いもしなかった。

 しかし、それは彼らの実力が認められた証でもある。


「よし! みんな、準備を整えましょう!」


 シスカが声を上げると、ミナト、セイラ、クレイグも力強く頷いた。

 四人はそれぞれの役割を確認し、依頼への準備を進める。


「こちらは積荷の準備はすでに済んでいます。出発はいつ頃にしましょうか?」


 エドガーの言葉にみなとはこたえる。


「俺たちは依頼を受けるつもりでここに集まっていたので、いつでも準備はできていますよ」


「なら、善は急げです。すぐにでも出発の準備をしましょう」


 エドガーはそう言うと、積荷の最終確認をし、馬車に乗り込んだ。

 そしてミナト達はエドガーと共にコロンの町を目指すのであった。

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