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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第二章 Sランクへの道のり 前編

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039 パーティ『零閃の狼煙』結成

 グリムロック出発し、時折休憩を挟みながら早馬で二日、ようやく王都の巨大な門が見えてきた。

 門をくぐり、早馬を行商人に返すと、四人はそのまま冒険者ギルドへと向かった。


 今回は想定より長旅になったため、ギルドへ顔をだすのは久しぶりになる。


 ギルドに入ると、カウンターにいつものようにリビアが座っていた。ミナトたちの顔を見るなり、彼女は笑顔を輝かせた。


「お帰りなさいませ皆さん!無事で何よりです!」


 リビアの温かい言葉に、長旅の疲れが少しだけ癒される。

 ミナトが依頼達成の報告をしようとすると、リビアは先に口を開いた。


「グリムロックの町長さんから、追加依頼の件と、新ダンジョンの発見について書状が届いています。お疲れさまでした。詳しい話は、ギルドマスターを呼んできますので、少々お待ちください」


 リビアの言葉に、ミナトたちは頷いた。

 グレンが既にダンジョンの情報を把握していることに、少し安堵する。


 その時、リビアの声に気づいたのだろう、奥の執務室からグレンが姿を現した。

 彼の視線が、ミナトたち、そして見慣れないクレイグへと向けられる。


「おお、帰ってきたか。長旅お疲れだったな」


 グレンはそう言うと、ミナトの顔をじっと見つめた。


「新ダンジョンはどうだった? 町長からの書状は読んだが、詳細を聞かせてもらおうか」


 ミナトは、グレンの言葉に頷き、ダンジョンで起こったことの全てを話した。

 鉱物に関する謎解き、シャドウ・ガーディアンとの激闘、そして最深部で発見した大鉱脈と、それを守護する複数のクリスタルゴーレムの存在。


 グレンはミナトたちの話を聞き終えると、難しい表情で腕を組んだ。


「クリスタルゴーレムか……。それも複数体とはな。王都の手練れの冒険者でも、かなり厳しいぞ。難易度はSランク相当になるだろうな。危険が大きすぎる」


 グレンの言葉に、ミナトたちの顔にも緊張が走る。Sランク。それは、このギルドで「最強」と謳われるルナ=ノクトが属する領域だ。


「この内容だと、新ダンジョンの登録はするが、公表は控えた方がよさそうだな」


 グレンはそう結論付けた。

 もし公表すれば、無謀な冒険者が殺到し、多くの犠牲者が出る可能性がある。

 町の安全を考えれば、それが賢明な判断だろう。


 話し込んでいると、グレンの視線がクレイグへと向けられた。


「ところで、後ろのやつはみない顔だが、どうしたんだ?」


 ミナトはグレンに、クレイグがグリムロックの町長の息子であること、そして、自分たちの新しい仲間になったことを説明した。


「その上で、リビアさん。俺たち、正式なパーティーの申請をしたいんです」


 ミナトは、リビアにそう申し出た。


「かしこまりました。ではまず先にクレイグさんの冒険者登録から行いましょう。」


 リビアはそういい、クレイグに書類を書くように促し、魔力測定器を持ち出してきた。

 クレイグは指示された通りに手をかざす。


「なかなかの魔力量ですね!色も濃いので、練度もかなりのものと見受けられます。これならばDランクからのスタートでも問題無いでしょう」


 Dランク、それは登録した初日から、ミナトと同格のランクということだ。


「冒険者登録はこれで完了です。お疲れさまでした。続いてパーティ申請に移ります」


 リビアはそう言うと、クレイグにギルドカードと冒険者プレートを手渡した。

 Dランクの文字が刻まれたプレートを手に、クレイグはどこか誇らしげな表情を浮かべている。


 その後、リビアはカウンターの奥から、パーティ申請の用紙を持ち出した。そこには、以下の記入欄があった。


  ・パーティ名

  ・リーダーネーム(フルネーム)

  ・パーティメンバー(名のみ)

  ・メンバー募集の可否


 ミナトは用紙を受け取り、迷うことなく記入していく。


 パーティ名:零閃(れいせん)狼煙のろし

 リーダーネーム:ミナト=イチノセ

 パーティメンバー:シスカ、セイラ、クレイグ

 メンバー募集の可否:随時募集


 記入を終え、ミナトがリビアに用紙を提出すると、リビアは内容を確認し、笑顔を輝かせた。


「『零閃の狼煙』、ミナトさんたちによく合うパーティ名ですね! とても素敵です」


 リビアの言葉に、ミナトは少し照れた。

 その時、ふとミナトは用紙の「リーダーネーム(フルネーム)」の欄を見て、あることに気づいた。

 自分は「ミナト=イチノセ」とフルネームで記入したが、他のメンバーの姓を知らない。


「そういえば、みんなの姓って、何なんだ?」


 ミナトが尋ねると、クレイグがすぐに答えた。


「俺は父さんと同じで、クレイグ=ロックスです。ドワーフの姓は、その家系が代々受け継ぐ鉱山の名や、得意な鍛冶の技術から取られることが多いんですよ」


 クレイグの言葉に、ミナトは納得した。次にセイラが口を開く。


「私は、セイラ=アウローラです。アウローラ家は、代々魔法使いの家系で、少しばかり名門なので、なるべくは名乗らないようにしています」


 セイラは少し申し訳なさそうに、しかし誇らしげに答えた。

 名門の出である彼女が、冒険者として活動していることに、ミナトは少し驚いたが、セイラの魔法の技術や魔力量の多さに納得した。


 そして、シスカの番が来た。しかし、シスカはなぜか答えたがらない。

 視線を逸らし、少し気まずそうな表情を浮かべている。


「シスカ……?」


 ミナトが問いかけると、シスカは小さくため息をついた。


「……私は、今は言いたくないわ。ごめんなさい」


 その言葉に、ミナトはそれ以上追及しなかった。

 彼女がリーダーになりたがらなかった理由の一つは、もしかしたら、その姓に関係しているのかもしれない。

 ミナトは、シスカの抱える何かを察し、静かに頷いた。


 リビアは四人のやり取りを笑顔で見守りながら、手続きを完了させた。


「これで、パーティ『零閃の狼煙』の登録が完了しました! 皆さん、おめでとうございます!」


 リビアの祝福の言葉に、四人は互いに顔を見合わせ、新たな旅立ちへの決意を新たにした。

 彼らの冒険は、ここから「零閃の狼煙」として、本格的に始まっていく。


「では、改めてパーティ『零閃の狼煙』の皆さんにご説明させていただきますね」


 リビアはそう言うと、パーティ登録に関する詳細を話し始めた。


「まず、皆さんのパーティランクですが、メンバーのランクを参照し、Cランクとなります。ミナトさんがDランク、シスカさんがBランク、セイラさんがCランク、クレイグさんがDランクですので、平均するとDとCの間になりますが、ランクは切り上げになりますので、Cランクとなります」


 ミナトたちは頷いた。Cランクパーティ、Sランクまではまだ遠いが、日々確実に進歩している。


「パーティを結成することには、いくつかのメリットがございます」


 リビアは続けて説明した。


「まず、パーティ活動を続けていくと、名前が認知され、実績に応じて指名依頼が入ってくるようになります。これは即席の名前のないパーティにはなかった制度ですね。それに、通常の依頼とは別に、ギルドや国が直接依頼するクエストもありますが、正式なパーティーでないと受けられないものがほとんどです」


 ミナトが頷く。


(たしかに名前がないと、指名なんてされるわけもないもんな...)


「なので、自然と高ランクになればなるほど、パーティを結成しないと受けられる依頼も、制限がかかるため、BランクやAランクくらいからは、ほとんどの冒険者がパーティーを組んでいますね」


 シスカが頷く。


「そうね。私もミナトに出会ったときはBランクに上がったばかりだったから、ちょうどこれからパーティーのメンバーを探し始めようとしていたところだったのよ。タイミングがよかったわ」


 シスカの言葉に、ミナトは少し嬉しくなった。


「そして、もう一つの大きなメリットとして、パーティメンバーで使う拠点をギルドから借りることができるようになります。賃貸料こそ発生しますが、普通に借りるよりかなりお得に借りれますよ。お金が貯まれば、拠点を構えるのも良いかもしれませんね」


 リビアの言葉に、ミナトは目を輝かせた。確かに、宿暮らしでは落ち着かない。自分たちの拠点があれば、もっと落ち着いて生活できるだろう。


「また他パーティと連合を組むことで、さらなる難易度のクエストに参加することも可能になります」


 リビアの発言は、ひとつのパーティでは依頼達成困難な依頼が存在すること。

 そしてその連合を組むほどの高難易度の依頼も、いずれは受けることになるということだ。


「説明としては以上となります」


 リビアは笑顔で締めくくった。


 ミナトたちは、パーティ『零閃の狼煙』として、新たなスタートを切るのであった。

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