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異端魔力の召喚勇者 ~魔法の使えない勇者は冒険者の道を歩む~  作者: 水辺 京
第二章 Sランクへの道のり 前編

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037 クレイグの申し出

 バルドの屋敷につく頃には、すっかり日もくれて、夜空に星が輝いていた。

 玄関に着くと、奥さんが出迎えてくれた。

 その顔には、安堵の色が浮かんでいる。

 バルドもすぐに工房から駆けつけ、作業服姿のまま、ミナトたちの無事を確かめた。


「おお、帰ってきたか! 無事で何よりだ! 疲れただろう? 食事の準備がしてあるから、よければあがっていってくれ」


 バルドはそう言うと、奥さんの手料理を振る舞ってくれるよう促した。

 奥さんもにこやかに頷き、温かい料理が次々と食卓に並べられていく。


 夕食を食べながら、ミナトたちはバルドにダンジョンで起こったことの顛末を詳細に報告した。

 採掘場の奥に隠されたダンジョンの存在、鉄、銅、銀の謎を解き進んだこと、そして地下8層で遭遇したシャドウ・ガーディアンとの激闘。


 そして、その奥に広がる、まばゆい光に満ちた大空間、尽きることなき鉱脈、そしてそれを守護するかのように鎮座していた、複数のクリスタルゴーレムの存在を伝えた。


「今の私たちでは、あのクリスタルゴーレムには手が出せません。魔法完全無効で、物理攻撃もほとんど通じないAランクの魔物が何体も……」


 シスカが正直にそう告げると、バルドの顔には深い悩みの色が浮かんだ。その屈強なドワーフの顔には、疲労と、目の前の希望に手が出せないもどかしさがにじみ出ていた。


「魔法完全無効か……それは、王都のギルドに依頼書を貼っても、受けてくれる冒険者が現れるかどうが……。それに一匹ならともかく、複数体となると、あまりにも危険が大きすぎる……」


 バルドは頭を抱える。グリムロックの未来を左右する大鉱脈が目の前にあるのに、手が出せない。

 そのもどかしさが、彼の表情にありありと表れていた。

 食卓に並んだご馳走も、彼の目には映っていないかのようだった。


 その時、クレイグが意を決したかのように、ミナトたちに向き直った。

 その瞳には、強い光が宿っている。


「皆さん……! 私を、一緒に連れていってください!」


 クレイグの突然の言葉に、ミナトたちだけでなく、バルドと奥さんも驚きに目を見開いた。

 食卓の賑やかな会話が、一瞬にして静寂に包まれる。


「グリムロックの……故郷の未来は、私自身で掴みたい! あなた達の強さ、知識、そして窮地での機転。どれも私の心に熱く響きました。あなたたちといれば、もっと強くなれる。そう確信しました。そして、強くなり、いつの日かクリスタルゴーレムに挑みたいと思います!」


 クレイグは深々と頭を下げた。

 その声は震えていたが、彼の決意は揺るぎない。


「会ってまだ数日も経っていない、不躾な頼みだと承知しています。ですが、どうか……どうか、私をパーティーに加えてください!」


 バルドは、息子クレイグの真剣な眼差しをじっと見つめた。

 その表情は、驚きから、やがて誇らしげなものへと変わっていく。

 奥さんもまた、目に涙を浮かべながら、息子の成長と、その決意を静かに見守っていた。


「クレイグ……お前が、この町のことを本当に思った上で、そう考えたんだな。それは、この町を治める者として、そして父として、とても喜ばしいことだ。お前が決めたのなら、止めはしない。ただ、やると決めたからには、決して投げ出さないと誓え!」


 バルドの言葉に、クレイグは力強く頷いた。

 その瞳には、新たな道への覚悟が宿っている。


「クレイグさんがそれで良いのならば、こちらとしては大歓迎よ!」


 シスカが笑顔で言った。

 その言葉には、クレイグの実力を認めるだけでなく、新たな仲間が増えることへの喜びが込められている。

 ミナトも頷く。しかし、ミナトはそこで一つ、重要なことを思い出した。


「ただ、実はまだ、俺たち、パーティーを正式に結成していないんだ」


 ミナトの言葉に、クレイグは首を傾げた。

 バルドと奥さんも、何事かとミナトを見つめる。


「実は、セイラは、今回の旅が初めてで、試しに一緒に依頼を受けないかって誘っただけで、正式なパーティメンバーじゃないんだ。だから……クレイグさんの前に、セイラに聞きたいことがある」


 ミナトは、少し照れながらも、セイラへと向き直った。

 彼の心臓が、ドクドクと音を立てる。

 まるで、初めて告白する少年のような緊張感だ。


「セイラ。俺たちのパーティーに入ってくれないか? 君の魔法の強さは、目を見張るものがある。パーティーとして是非迎え入れたい。そして何より、君自身と一緒に旅をしたいんだ」


 ミナトの、まるで告白のような言葉に、セイラは顔を真っ赤にした。

 彼女は驚きと喜びで、言葉を失っているようだった。

 その小さな肩が、微かに震えている。


「ひゃ、はいっ! ぜひ、お願いします!」


 セイラは顔を覆いながらも、力強く頷いた。

 その声は、喜びと感動に震えていた。

 ミナトも自分の言葉に恥ずかしくなってしまい、あたふたするが、シスカが「はいはい、よかったわね」と笑いながらミナトの背中を軽く叩き、場を和ませた。


 バルドと奥さんも、二人のやり取りを見て、温かい眼差しで見守っている。


 こうして、ミナト、シスカ、セイラの三人は、正式にパーティーとなることを決意した。

 食卓には、新たな絆が生まれた喜びが満ち溢れる。


「そして、クレイグさん、俺たちには、あなたの知恵やサポートが必要です。これからもよろしくお願いします!」


 その新たなパーティーに、クレイグを迎え入れることにも皆が賛成した。


「よし! これで四人パーティーね! これからが楽しみだわ!」


 シスカが拳を握り、目を輝かせた。

 ミナトもまた、胸に熱いものが込み上げてくるのを感じた。

 信頼できる仲間たち。彼らとなら、どんな困難も乗り越えられる。


 シスカとミナトだけのパーティは、今、四人のパーティーとなった。

 彼らの異世界での冒険は、ここからさらに加速していくことになるだろう。

 食卓を囲む6人の笑顔は、グリムロックの夜空に輝く星のように、明るく、希望に満ちていた。

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