035 守護者シャドウ・ガーディアン
扉の奥には、これまでの層とは異なり、広大な空間が広がっていた。
空気は重く、闇が支配している。
視界の端で、朽ちた金属の残骸が不気味な影を落としている。
そして、その空間の中央に、それはいた。
影と金属の残骸が融合したような、巨大な人型の存在『シャドウ・ガーディアン』。
その体は半透明で、闇に溶け込むように揺らめいている。
全身から不気味な魔力が漏れ出し、空間全体を圧迫していた。
「……侵入者……」
シャドウ・ガーディアンが、重々しい声でミナトたちへと語りかけた。
その声は、空間全体に響き渡り、彼らの精神を直接揺さぶるかのようだ。
「排除スル……」
シャドウ・ガーディアンの腕がゆっくりと動き出す。
その掌から、闇の魔力が凝縮され、複数の黒い球体となって放たれた。
黒い球体が、ミナトたちへと殺到する。
「これは……闇魔法!?散開! クレイグ、防御を!」
シスカが叫ぶ。ミナトは飛速で回避し、セイラは後方へ下がる。
クレイグは素早く土属性の防御魔法を発動させ、パーティーの前に巨大な岩壁を出現させた。
ドォンッ! ズズズッ!
シャドウ・ガーディアンの放った闇魔法が岩壁に激突し、岩壁は黒い染みのように侵食されていく。
岩壁は大きく損傷したが、パーティーは無事だ。
しかし、シャドウ・ガーディアンの攻撃は、これまでの魔物とは比べ物にならないほど強力だ。
「闇魔法は厄介よ!触れると侵食が始まり、機能が低下するから気をつけて!」
シスカが闇魔法について知っていたので、対策をとることができた。
シャドウ・ガーディアンは、物理的な実体が薄いため、通常の攻撃が効きにくい。
セイラは杖を構え、魔力を集中させる。
「アクア・サイクロン!」
巨大な竜巻がシャドウ・ガーディアンへと襲いかかるが、ガーディアンはそれを影のような腕で受け止め、その巨体を微動だにさせない。
竜巻の魔力が、ガーディアンの体へと吸い込まれていくのが見える。
「まさか……魔力を吸収するの!?」
セイラが叫ぶ。彼女の魔法が、逆に敵の力になっている。
「ならば、私が接近する!」
シスカが雷光を纏った身体で、シャドウ・ガーディアンへと飛び込んだ。剣に雷魔法を集中させ、その半透明な体を斬りつける。
ザンッ!
剣は確かにガーディアンの体を捉えたが、その手応えは薄い。
まるで空気を斬ったかのようだ。おそらくダメージも効いていなそうだ。
(物理攻撃も魔法攻撃も、並大抵では通じない……!)
ミナトは飛速でシャドウ・ガーディアンの懐に潜り込んだ。圧倒的な体捌きで、その巨体の攻撃を回避しながら、弱点を探る。
(核はどこだ……!? 実体がない……?)
シャドウ・ガーディアンは、ミナトの素早い動きに対応しようと、その巨体を旋回させる。
その隙をミナトは見逃さなかった。
背後へと回り込み、その背中、影が最も濃く集まっている部分に、刻付を纏った拳を叩き込んだ。
ドォンッ!
拳は影をすり抜けたかのように手応えがなく、ミナトの体が逆に弾き飛ばされる。
「くっ……!」
ミナトは歯を食いしばる。
その瞬間、シャドウ・ガーディアンの体から、無数の黒い触手のような影が伸び、ミナトの腕に絡みついた。
「しまった!」
影の触手がミナトの魔力を吸い取り始める。
が、次の瞬間、突然シャドウ・ガーディアンが苦しみ始め、ミナトの手をほどく。
「ミナト!」
シスカは心配そうに駆け寄るが、ミナトと自身は何が起きたのかさっぱりわからなかった。
(俺の魔力を吸いとろうとしたからなのか……?)
シャドウ・ガーディアンの動きは一瞬止まったが、体制を立て直しつつある。
だがその隙にセイラは杖を構え、魔力を集中させ、呪文を唱えていた。
「ホープ・ライト!」
セイラが放った光魔法は、杖の先をまばゆい光の玉が、ぐるぐる回るだけで、攻撃魔法ではない。
だが、空間全体を照らし出すことによって、視界を確保した。
その瞬間、闇に溶け込んでいたシャドウ・ガーディアンの半透明な体が、はっきりと見えた。
「実体が……ない……!?」
セイラは核となる場所が必ずあると思っていたが、シャドウ・ガーディアンの体には核のようなものが見当たらない。
だが、体が光によってはっきりと見えるようになったため、攻撃を予測しやすくなった。
しばらく拮抗した状況が続く。
「必ずどこかに弱点があるはずよ!」
シスカはそう言いながら、敵の攻撃をうまくかわしつつ、あらゆる攻撃手段を試していた。ミナトもまた魔力を込めた拳や、魔力のこもってない剣など、攻撃パターンを変えたりしたが、ダメージが入ってる感じがしない。
「くそっ!どこを攻撃すればいいんだ!」
そのときクレイグは防御魔法で敵の攻撃を無効化しつつ、遠距離から二人の動きとシャドウ・ガーディアンの動きを細かく観察していた。
そして違和感に気付く。
「影……影だ!影が動いてから体が動いている!おそらく本体はその下の影だ!」
クレイグの言葉にシスカがいち早く反応する。
その瞬間彼女は自己強化魔法と魔力纏いを同時に発動していた。
その状態の彼女はミナトのスピードを遥かに凌駕する。
まさに雷そのものだった。
バチバチバチ!
一瞬の間にシャドウ・ガーディアンの足元に到達し、地面の影にたいし、剣を突き立てる。
「グオオォォ!」
どうやらクレイグの推測は正しかったようだ。痛みにもがき、叫んでいる。
シスカにたいし振り払うかのような攻撃をするが、シスカは剣を突き刺したまま、雷のごときスピードで後ろにとんだ。
飛びながら魔法を放つ。
「サンダー・ボルト!」
呪文を唱えると雷が剣に向かって落ちる。
ズドーン!
魔力纏いの状態で放つサンダー・ボルトは普段よりも格段に威力があがっているのがみてとれる。
その衝撃を受けシャドウ・ガーディアンは完全に動きをとめる。
「今よ!」
シスカの声がする前にすでにミナトは上空へと舞い上がっていた。右手に今扱える、魔力を極限まで纏わせ、それを圧縮する。
すると右手には普段とは違う荒々しい魔力が具現する。
極壊にはまだ程遠いいが、その片鱗を見せる。
飛速で空を蹴る。グレンにしてやられた技を、ミナトはもう習得していた。空中からの落下エネルギーに加え、飛速による加速、右手の魔力。
これらを掛け合わせ、極大な威力の拳を影へと放つ。
ズドーン!
激しい衝撃音と共に、衝撃波が空間を揺らす。
ミナトの拳は正確に影を捉え、シャドウ・ガーディアンは消滅する。
残されたのは、大きなクレーターと、中央に輝く一つの魔石だけだった。
「はぁ……はぁ……」
四人は息を切らしながらも、ついに地下8層の守護者を討伐した。
パーティーの連携と、それぞれの能力を最大限に引き出した、まさに死闘だった。
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