033 坑道のダンジョン2
シスカが先導し、開いた扉の奥へと足を踏み入れた。
ミナト、セイラ、クレイグもそれに続く。
地下3層へと続く階段が、彼らを新たな試練へと誘っていた。
『地下3層』
地下3層に足を踏み入れると、空気はさらに冷たく、湿気を帯びていた。
しばらく進むと、通路は再び巨大な石造りの扉で塞がれていた。1層、2層の扉と酷似しており、その横にはまたしても古びた石板が設置されている。
「どうやらまた謎解きのようです……」
クレイグが石板に近づき、刻まれた文字を読み解こうとする。
「このダンジョン、なにか意図があって、このような造りにしているのかしら?」
シスカは不思議そうに考える。おそらく彼女が侵入したことのあるダンジョンには、このような造りのものは無かったのだろう。
「もしかしたら知識を試されているのかもしれない、この程度の鉱物の知識もない物に、財産を渡すわけにはいかないという感じだろうか?」
ミナトの憶測をに対し、クレイグが反応する。
「はい、その可能性はありますね。いずれも鍛冶の仕事に携わっていないと、解くのは難しいでしょう。ただそれだけに、このダンジョンは鉱石を宝として、保管している可能性が高いですね」
そう言いながら、クレイグは石板に触れ、集中する。
「...読み上げます」
クレイグはそう言うと、石板に刻まれた文字をゆっくりと読み上げた。
「『月に愛されし輝き、
闇を映し、真実を語る鏡。
聖なる力を宿し、邪悪を退けるが、
熱き炎には形を変え、
剣には柔く、盾には弱し。
我は何ぞ?』」
謎解きを読み終えたクレイグは、腕を組み、深く考え込んだ。
ミナト、シスカ、セイラもまた、それぞれの知識と経験を総動員し、その謎に挑む。
「『月に愛されし輝き』……月の光のように輝くもの...?」
セイラが呟いた。彼女は魔法使いとして、星や月の魔力にも通じているのかもしれない。
「『闇を映し、真実を語る鏡』……鏡になるもの、ってこと?」
シスカが首を傾げる。ミナトもまた、その言葉に頷いた。
確かに、磨けば鏡のように光る金属はいくつかある。
「『聖なる力を宿し、邪悪を退けるが』……これは、魔物除けの道具とか、聖具に使われるもの、だろうか?」
ミナトが推測する。
その言葉に、クレイグの目が大きく見開かれた。
「魔除け……そうか! これは銀だ!」
クレイグが声を上げた。その顔には、確信の色が浮かんでいる。
「月のように輝き、磨けば鏡にもなる。古くから聖なる力を持つとされ、邪悪なものを退ける魔除けにも使われる。だが、熱い炎で溶けて形を変え、鉄や銅に比べて柔らかいから、剣や盾には向かない……間違いない、銀だ!」
クレイグの言葉に、ミナト、シスカ、セイラの三人も納得した。
全ての条件に完璧に当てはまる。
「さすが! 本当に物知りね!」
シスカがクレイグを称賛する。クレイグもまた、その言葉に嬉しそうな表情をする。
クレイグが石板の、銀が埋め込まれたスイッチを押す。
その瞬間、石板が淡い光を放ち、巨大な扉からゴゴゴゴ、と重々しい音が響き渡った。
固く閉ざされていた扉が、ゆっくりと内側へと開いていく。
扉の奥には、さらに下へと続く階段が伸びていた。4層への階段だ。セイラは階段を覗き込みながら呟いた。
「...おそらく次の層は魔物がいます。魔力探知が今までの層とは異なる反応を示しています」
「やはりここまでは、侵入者の知識を試すための層だったようね」
シスカが推測する。ミナトも頷いた。
確かに、これまでの3層は魔物と遭遇することなく、ひたすら謎解きだった。
「さぁ、気を引き締めていきましょう。ここからが、本当のダンジョン探索になるはずよ」
シスカが先導し、開いた扉の奥へと足を踏み入れた。
ミナト、セイラ、クレイグもそれに続く。地下4層へと続く階段が、彼らを新たな試練へと誘っていた。
『地下4層』
地下4層に足を踏み入れると、これまでの層のような規則的な光はなく、壁の所々に生える発光性の苔が、かろうじて足元を照らすのみだ。
視界は悪く、通路の奥から、何かが這いずるような不気味な音が微かに聞こえてくる。
「やはり魔物の気配があります」
セイラが警戒しながら呟いた。彼女の索敵魔法は、周囲の魔力を感知するものだ。
対象に近づくほど感知の正確さはあがるため、はっきりと魔物の魔力を感じ取れたということは、そう遠くないところに魔物が潜んでいるのだろう。
「この層は、これまでとは雰囲気が違うな。油断するな」
ミナトはダンジョンに入ってから、常に刻付を纏って感覚を研ぎ澄ましている。
シスカもまた警戒を怠らずに、周囲に目を配る。
しばらく進むと、ついに彼らは、この層で最初の魔物と遭遇した。
通路の奥から、複数の影が蠢きながら現れる。
それは、半透明で不定形な、ゼリー状の魔物『ダークスライム』だった。
スライムなので物理攻撃が効きづらい上に、魔力を吸収し、成長する性質があり、生半可な魔法では彼らには通用しないどころか、成長させてしまい手がつけられなくなってしまう。
「ダークスライムね! 正確に核を攻撃する必要があるわ。生半可な魔法は逆効果よ」
シスカが叫ぶ。
シスカの言葉に、セイラは一瞬、戸惑いの表情を浮かべた。
生半可な魔法は逆効果。それは、彼女の得意とする魔法攻撃が、この魔物には通用しないかもしれない、という不安を持たせる。
「セイラ、落ち着いて。核を狙うのよ。魔力を一点に集中させて、ピンポイントで」
シスカが指示を飛ばすと同時に、彼女は雷光を纏った身体で、一番手前のダークスライムへと飛び出した。
バチチチッ!
シスカは、その俊敏な動きで、ダークスライムの鈍重な動きを嘲笑うかのように、その周囲を駆け巡る。
そして、その剣を、ダークスライムの体内に淡く光る核へと正確に突き立てた。
ズブリッ!
シスカの剣が核を貫くと、ダークスライムの体が大きく揺らぎ、その半透明な体が徐々に崩壊していく。
「よし、一つ!」
シスカが叫ぶ。
ミナトもシスカの動きに倣い、別のダークスライムへと駆け寄った。
(核を狙う……!)
ダークスライムがヌルリと体を動かし、ミナトを包み込もうとする。
ミナトはそれを回避し、その隙に背面に回り込んだ。
そして、魔力を込めた拳で、核へと渾身の二段突きを叩き込む。
ドォンッ!
一撃目でダークスライムの核を覆うゼリー状の体を大きく凹ませ、核がわずかに露出する。
「今だ!」
ミナトは間髪入れずに、一撃目の反動を利用し、露出した核へと、二撃目を放つ。
バキィンッ!
硬質な音が響き渡る。
ミナトの拳が核を砕くと、ダークスライムは音もなく霧散した。
シスカとミナトが次々とダークスライムの核を破壊していく中、クレイグとセイラは、魔法による攻撃が逆効果になりかねないと判断し、二人の戦闘の補助に徹した。
セイラは索敵魔法で周囲の状況を把握し、クレイグは万が一の事態に備えて、土属性の防御魔法をいつでも発動できるよう構えている。
数分後、通路に蠢いていたダークスライムは全て消滅した。
ミナトとシスカは息を整え、互いに頷き合う。
「さすがね、ミナト。あなたの打撃は、スライム系にも有効なのね」
シスカが感心したように言った。ミナトも頷く。
「シスカもあの速さで、核を正確に捉えるなんてすごいな」
セイラは、二人の圧倒的な戦闘力に、ただただ驚いていた。
「私……何もできませんでした……」
セイラが申し訳なさそうに呟くと、シスカは優しく彼女の肩を叩いた。
「そんなことないわ、セイラ。攻撃をしない判断と、即座に周囲の警戒に切り替える判断、これはパーティーとして、しっかり役割を果たそうとしたからこその結果よ。実際そのおかげで、私たちは戦闘に集中できたわ」
シスカの言葉に、セイラの顔に安堵の表情が浮かんだ。
「さあ、先に進みましょう」
シスカが言うと、四人は再び通路の奥へと歩き出した。
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